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140周年ありがとうブログ

千年の重さと千年の夢

日本では千年の昔につくられたたくさんの品々が多くの人々の手によって大切に伝えられてきました。
その千年の重さが重なるなかで、創立140年となりました。
先輩職員の方々の積み重ねをひしひしと感じます。ほんとうに身の引き締まる思いです。

よく知られているように、日本で作られた品々は、そのまま放っておけば、何年か経つと、痛んでぼろぼろになってしまいます。
数百年前に描かれた絵が今も美しい色を発しているのは、これまで何世代もの人々が大切に扱ってきたからに他なりません。
そして、時代時代に品々を手に取った人々が、愛おしく扱ってきたからなのです。
千年の昔に作られたたくさんの品々が、今ここに存在することは正に奇跡的なことで、世界でも稀なことなのです。
しかし、今まで大切に伝えられてきた品々を私たちは、この日本という国が続く限り、さらに千年後も伝えていかなくてはなりません。


国宝 普賢菩薩像 平安時代・12世紀
800年前に描かれた仏画。人々が絵の前で深く祈り、大切に伝えてきたもの。


私が尊敬する竜崎麗香という人物に次のような言葉があります。

あたくしはここで得た全てをあなたに伝えたわ。
それをより高めて後輩に伝えなさい。それが伝統を受け継ぐ者のつとめよ。

この言葉を噛み締めながら、日本の悠久の歴史のなかでこの場所で働くことのできる僥倖に感謝し、
この職場に関わることのできるあと十数年の限られた時間のなかで、
私が消えてしまった後にも、この愛おしい品々を伝えていってくれるだろう人々に、
ほんの少しでも伝えられるものを遺すために、愛おしい品々のことをいつも考えていきたいと思います。


国宝 納涼図屏風(部分) 久隅守景筆 江戸時代・17世紀
今も400年前も変わらない家族像。
汚れや傷みがみえる画面は弱弱しいかも知れませんが、日本の人々はこの絵に変わらぬ憧憬を抱き続けるでしょう。

カテゴリ:2013年3月

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posted by 松嶋雅人(特別展室長) at 2013年03月01日 (金)