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140周年ありがとうブログ

寄贈者の方にありがとう

新年明けましておめでとうございます。
東洋工芸、おもに陶磁器を担当している今井と申します。
トーハクに着任してからまもなく26年になります。

収蔵庫の中には、展示場に出ている数の何十倍もの作品が保管されています。
もちろん保存上の観点から作品を休ませる必要もあるのですが、展示場にある作品はいわば「氷山の一角」に過ぎません。
収蔵庫では、数多くの作品が、制作時期や作者、適切な評価など、正しい位置づけを待っているのです。

学問の世界は日進月歩です。
写真1は、12月3日の三笠景子さんのブログにも触れられている横河民輔博士の寄贈品。
耀州窯は宋時代の代表的な青磁窯であり、オリーブグリーンの釉色ときびきびとした彫り文様で知られますが、典型的な作風が確立する前の10世紀には、このような淡い緑色で文様のない青磁が焼かれていたことが明らかになりました。


(写真1) 青磁碗 耀州窯 中国 五代時代・10世紀 横河民輔氏寄贈
(展示の予定はありません)


写真2は、薬学および陶磁器の研究家である内藤堯宝氏(1883~1970)の寄贈品です。
寄贈者自身のメモには「高麗末期乃至李朝初期作にて井戸の原始的作風をなすものか」とありますが、実は高麗青磁最初期の作であることが明らかになりました。


写真2) 青磁輪花鉢 朝鮮 高麗時代・10世紀 内藤堯宝氏寄贈
(2013年1月2日(水)~3月31日(日)東洋館 第10室 朝鮮の陶磁にて展示)


作品を購入する際には当然のことながら歴史上の位置づけの明らかなものが選ばれますので、このような研究の発展に資する作品は篤志家の寄贈品によるところが大きいのです。
確かな眼と高い志、そして学問に対する深い理解をもっていた寄贈者の方々に感謝です。


リニューアルオープンした東洋館で展示されている陶磁器といっしょに。

カテゴリ:2013年1月

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posted by 今井敦(博物館教育課長) at 2013年01月05日 (土)