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140周年ありがとうブログ

その情熱に、ありがとう

考古室の井出と申します。今年6月から考古室に勤務するトーハク一年生です。
通常は諸先輩方の下で、主に日本考古の陳列品に関する特別観覧、貸与、陳列替、調査研究などを担当しています。
毎日が発見と勉強の連続です。

私の思い出に残る展示は、2001年の特別展「土器の造形―縄文の動・弥生の静―」です。
当時、私は大学で考古学を専攻する学部生でした。
会場には考古学の概説書や図鑑などでよく見かける、日本各地の代表的な作品が溢れんばかりに展示されていて、
その存在感に圧倒されたことを覚えています。

そんな私のお気に入りは火焔土器という縄文時代の器(うつわ)です。
燃え盛る焔(ほのお)のような、立体的で躍動的な装飾からその名前が付けられました。
今から5000年から4000年前の縄文時代中期につくられた名品のひとつです。
現在、この火焔土器は本館2階1室「日本の美術のあけぼの」に展示されています。
1室は本館2階の最初の展示室、いわば日本美術の表玄関にあたります。
火焔土器はその1室のトップバッターとして皆様を日本美術の流れへと誘います。


火焔土器 伝新潟県長岡市馬高出土 縄文時代(中期)・前3000年~前2000年
(2013年5月6日(月・休)まで本館 1室で展示)
真っ赤に燃え盛る焔(ほのお)のような立体的な装飾が特徴です。
名は体を表す、私のお勧めです。


すでにたくさんのスタッフから紹介されているように、トーハクの陳列品はいくつもの世代を越えて現在に伝えられ、
1点1点のエピソードがあります。
先人達の、文化財を守り、伝えようとする熱い思いが幾重にも重ねられて今日に残されているはずです。
陳列品に触れていると、先人たちの情熱に後押しされていると感じることがあります。
もしかしたら陳列品の温もりは、 先人たちのそんな思いから湧き上がってくるものなのかもしれません。

先人たちの熱い情熱に「ありがとう(ございました)」と感謝しつつ、私もその思いを受け継いでゆきたいと思います。
ちょうど1室の火焔土器のように、熱い焔(ほのお)を心に灯して、東博の魅力を皆様にご案内できるよう日々精進して参ります。

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火焔土器が展示されている本館1室前にて。

カテゴリ:2012年11月

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posted by 井出浩正(考古室) at 2012年11月02日 (金)