このページの本文へ移動

140周年ありがとうブログ

子どもたちにありがとう

教育普及室の藤田千織です。

小学生、中学生、高校生の皆さんが団体で来館するときには
スクールプログラム」を実施して皆さんをお迎えしたり、
家族連れの皆さんには「ファミリーワークショップ」などで
お会いしたりすることが多い、教育普及という仕事をしています。

「教育」という言葉から、来館する方に何かを
お教えするような印象を持たれることが多いですが、
実際には博物館にあるモノの魅力を、
相手(子どもたちや家族連れの皆さん)に合わせて
さらに分かりやすく伝えるにはどんな方法や演出をしたらいいか、
日々考えることが仕事です。
それどころか、逆にワークショップや教育プログラムの参加者である
子どもたちに教えられることも多くあります。
一緒に作品を鑑賞していると、私が気づいていなかったような
細かい部分を観察して教えてくれ、
それがまた新たなその作品の魅力の発見につながったりします。

たとえば「屏風体験!」というファミリープログラムでは、
当館所蔵の「松林図屏風」の高精細複製品(原寸大)を使い、
それぞれの家族ごとに自由な屏風の立て方を提案してもらいました。
あるご家族は、本来ならば隣り合うことのない右隻のある面と左隻のある面がつながって見えるような立て方を発見してくださいました。


右隻と左隻を不思議な折り方で隣り合わせることで、意外な組み合わせを発見!

こうしてみると、この並びも魅力的かつ自然に見えたりして、
「もしかして長谷川等伯はこういう構図も考えていたけど
のちに順番を入れ替えたのではないか…」などと、
私たち研究員も荒唐無稽ながら楽しい想像がふくらんでいきました。

このように、参加者の皆さまと一緒に作品を鑑賞することで
想像力を刺激する、わくわくする発見を得ることがたくさんあります。
「教える側」「教えられる側」などという固定した区分は、
本当はないのだな、と思わされる瞬間です。

「共に見る」「共に発見する」その楽しさを分かち合うという意味では、
研究員とお客様、双方が豊かな資源を持っている、対等の立場だということになります。
そのことに気づかせてくれるのが、
先入観のない柔軟な目をもった子どもたちとの対話なのです。


子どもツアー「トーハク劇場へようこそ!」での子ども達との対話

ありがとう。
そして、これからも一緒に楽しい発見をたくさんしていきましょう、と
トーハクに来てくれる全ての子どもたちに伝えたい気持ちです。

カテゴリ:2012年10月

| 記事URL |

posted by 藤田千織(教育普及室) at 2012年10月03日 (水)