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140周年ありがとうブログ

先人・先輩たちに、ありがとう

学芸企画部長を務めている松本です。
いまでこそ後輩をたくさん持つ身になっていますが、学芸員になりたてのころ、はじめて勤めた大阪の小さな美術館では、先輩から、事あるごとに「アホか!」と怒鳴られていました。
遅刻や原稿の遅れ、作品の危い扱い方、無計画性等々、どれもこちらに非があることばかりで、当然、反論もなにもできたものではありません。

いまにして思えば、数々の叱責は自分のことを一人前に育てようという先輩の配慮によるものであることがよくわかり、そうしたことがあったからこそ、これまでこの仕事を続けてこられたと、しみじみ思います。
よき先輩とは、ありがたいものです。

こうした直接の先輩というわけではありませんが、トーハクが収蔵する数多くの文化財の中には、数百年、ときには千年単位の時の流れの中を、無数の先人たちの計り知れない尽力によって現在まで長らえてきたものがたくさんあります。


重要文化財 菩薩立像 中国山西省長子県付近  北斉時代・天保3年(552)  根津嘉一郎氏寄贈
(2013年1月2日(水)~ 2013年3月31日(日) 東洋館 1室にて展示予定)
私の専門、東洋美術の作品です。これも大切に守り伝えられてきた文化財のひとつです。


人と物とに対する取り組み方は、ただちに一緒に考えることはできないかもしれませんが、後に続く世代のことに思いを馳せる点では、後輩を叱咤激励してくれる先輩の姿と、文化財を守り伝えてきてくれた先人の姿には、どこか重なるところがあるように思います。

創立140年という期間が長いのか、短いのか、それは見る尺度によって異なりますが、はるか昔から存在していた文化財を、近代的な博物館のはしりとして設立されたトーハクが引き継ぎ、それを何代もの先輩たちが懸命に支えてきてくれたという事実は、時の積み重ねの分だけ伝統の蓄積となって、いまのトーハクの大きな財産となっているはずです。

先人や先輩に深く感謝しつつ、またこの先、人と物との両様の伝統を、末永く伝えていかなければなりません。


2013年1月、いよいよ東洋館がリニューアルオープンします。乞う、ご期待!

カテゴリ:2012年9月

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posted by 松本伸之(学芸企画部長) at 2012年09月24日 (月)