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140周年ありがとうブログ

人とのつながり、出会いをくれる土偶に、ありがとう

東京国立博物館に収蔵されている考古資料は、「購入」「寄贈」「管理換」「引継」「発掘調査」という、さまざまな経緯を経てその内容を充実させてきました。
その中でも多くを占めるのが寄贈資料です。

本館1室や平成館考古展示室へ足を運んだお客様のなかには、展示されている土器や石器そして土偶などにつけられる題箋(だいせん:作品名や年代などが記されている台紙)に、寄贈者の方々のお名前を見つけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

東京国立博物館のコレクション全体では、1872(明治5)年の創立から数えて3000人を超える所蔵者の方々から貴重な文化財をご寄贈いただいています。
そのご厚意を顕彰するために本館20室(寄贈者顕彰室)では、ご芳名をパネルで紹介しています。


本館20室に設けられた、寄贈者顕彰パネル。
(知っている人がいないか思わず探してしまいます。)


さて、お客様からの一番多い問い合わせは展示されている考古資料についてですが、時折寄贈者のご親族の方からもお問い合わせをいただくことがあります。
「祖父が土偶を寄贈しているかと思うのですが・・・」という問い合わせを受けて確認してみると当館でもしばしば展示し、また他館からも貸出依頼のある土偶でした。


考古展示室の土偶たち。この中に、ご寄贈の土偶も。

お孫さんにお会いしてお話しを聞いてみると、当時その土偶をおじい様がどのようにして入手したのか、また祖父と当時の研究者との交流の様子など、よくご存知なことを知りました。
お孫さんが土偶を前に、「祖父には会ったことはなく両親の話でしか聞いたことがなかったのですが、土偶を見つめていると祖父に会っているような気持ちになります」という言葉を聞いたときに、なんともあたたかくほっこりした気持ちになりました。

ご寄贈していただいた土偶は、縄文時代の儀礼を知るためにとても重要なもので、過去と私たちをつなぐものです。
一方で、今を生きる私たち同士をつなぐ側面もあることに改めて気づかされました。
このような人と人とのつながりを再認識する出会いをいただいた土偶に感謝。
そして、これからもその機会をくれるだろう資料や作品にも期待を込めて感謝。

カテゴリ:2012年9月

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posted by 品川欣也(考古室) at 2012年09月15日 (土)