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140周年ありがとうブログ

保存と修理に携わってこられたみなさんにありがとう

東ブータンのタシガン・ゾンをバックに
筆者

3月末日まで保存修復室に勤務する北川美穂です。
写真のバックは東博???……ではなく、昨年夏に漆工技法材料調査で訪れた東ブータンのタシガン地区の行政庁舎兼僧院のタシガン・ゾンです。
ブータンはアジアの漆産地の最も西に位置していて、漆工品製作の中心地はここから1時間ほど北のタシヤンツェ地区ですが、この写真を撮った場所の近くや、向こうに見える山にも漆の木が自生しているんです。

保存修復課というと、毎日、文化財の修理作業をやっていると思われがちです。実は日本の美術館や博物館には独立した保存修復課があるところはまだまだ少なく、海外の大きな博物館のように分野ごとの修理技術者の職員が常駐しているところはほとんどありません。国民の財産である数多くの収蔵品を長く保つためには、素材の性質を知り、それぞれに最適な環境を整えるところからはじまります。そして、損傷状態を調査し、限られた予算の中でどの作品を優先して、どのように処置するかを決定する資料を集めます。さらに、民間の保存修復専門家の方々との対応も重要な業務のひとつです。

列品貸与時の状態点検作業の様子
列品貸与時の状態点検作業の様子

平成館1階企画展示室で開催中の特集陳列「東京国立博物館の保存と修理」はすでにご覧いただけましたでしょうか。(2012年4月1日(日)まで) 当館の館蔵品のみならず、日本の文化財のほとんどは民間の修復専門家の手によって処置がなされてきた長い歴史があります。保存修復課ではどの修理工房に修理していただくかを決めるため、さまざまな情報を集めて会議にかけるだけでなく、修理経過と完成状態をチェックする作業も大変責任が重い仕事です。適切な処置のためには、日々の情報収集、実験・研究も欠かせませんし、もちろん応急処置作業にもあたります。館内の仕事だけでなく、本年は東北の文化財レスキューにも微力ながら参加させていただきました。

みなさんが今、東博の中でご覧になっている作品の数々は、職員のみならず民間の保存修復専門家のみなさんのご尽力もあってこれまで受け継がれてきたといえます。少ない人数で幅広い業務をこなしている保存修復課と、これまで修理に携わってこられた修復家のみなさんにありがとう。

カテゴリ:2012年3月

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posted by 北川美穂(保存修復課) at 2012年03月16日 (金)