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140周年ありがとうブログ

文化財を残してきた日本人の心にありがとう

私の仕事では日常的に文化財を取り扱いますので、自分にとっては“モノ”のある場所が博物館という認識になっていますが、ふと仕事の中で気付くことがあります。
今、自分が触れている“モノ”は偶然ではないことを。
“モノ”は残そうとする人の意志ではじめて残されます。
“モノありき”ではなく、残そうとする“人の心”が重要なのです。
140年の歴史を持つ東博には古い文化財が多いので、残そうとした人、その心を受け継いだ人たちは数え切れません。
その実現には相応の努力を必要とします。
しかし事故や自然災害の影響から免れ得ないことも一方で厳しい現実です。
その努力をしなければ、モノは残ってはいきません。


筆者


1873年のウィーン万博に出品された美術品を載せて伊豆半島沖で沈没したニール号という貨物船の事故で海底より引き揚げた品々が東博に残されています。

 銹絵葡萄図角皿 乾山 江戸時代・18世紀
銹絵葡萄図角皿 乾山 江戸時代・18世紀
  (展示期間:~2012年2月12日(日) 本館13室にて)


吉野山蒔絵見台 江戸時代・18世紀
吉野山蒔絵見台 江戸時代・18世紀
  (展示予定は未定)


当時では大変困難を伴う作業でした。
 “モノ”の背後には必ず、過去・現在の日本人の姿があり、感謝の気持ちを我々は忘れてはならないと思い知らされます。私たちの心の中にある“自国の文化を大切にしてきた気持ち”にありがとうを言いたいと思います。

カテゴリ:2012年1月

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posted by 高梨真行(書跡・歴史室、ボランティア室) at 2012年01月23日 (月)