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特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」の会場デザイン(2)

特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」の展示デザインは東京国立博物館のデザイン室で行っています。
展示は2部構成で、第1部は4章立てでデュシャンの初期の絵画作品から遺作までを紹介する教科書のような構成です。
第2部は日本美術の展示です。

ここでは展示会場のいくつかの特徴についてご紹介したいと思います。

-ゲートと開かれた平面プラン-
第1~第4章の第1部会場にはアーチ状のゲートがいくつか設けてあります。
このゲートをくぐりぬけるとデュシャンの作風が変化し、デュシャンの一生や思考を辿るように会場内を歩けます。
各章の展示空間は、広かったり狭かったり、閉じたり開いたり、向こう側が見えたり見えなかったりと、それぞれに特徴を持ちながら空間が分節されています。
また、狭くて作品の密集している所や広くて作品点数の少ない場所など意図的に操作してあります。

 

 

第2部の始まりは「黒楽茶碗 銘 むかし咄」です。
アールのついた黒色の壁に囲まれた中心に真黒な展示台が置かれ作品が展示されています。



順路を気にせず見ることもできるので、何度も会場内を行ったり来たり、ぐるぐる回ってご鑑賞下さい。


-グラフィック-
各章のグラフィックでは、展示される作品の特徴を取り込んだり、作品の背景、開口部を利用して別の作品の展示風景を切り取ったりと、グラフィックと作品との一体化やグラフィックの展示空間化を試みています。
特に、会場に散りばめられたグラフィックの中のデュシャンの眼差しに注目してみて下さい。

  


-解説-
難解に思われがちなデュシャン作品を始めて見る方に少しでも理解の補助になるよう、今回の展覧会では、ほとんどの作品に個別解説があります。


-「遺作」の映像展示-
「遺作」の映像は、所蔵するフィラデルフィア美術館からの要望で4Kプロジェクター(※1)を採用しています。
本当にフィラデルフィア美術館で「遺作」を見たかのように感じられる高精細な映像展示は必見です。
※1 キヤノン株式会社協賛


-展示照明-
照明は一部を除いて、色彩の再現性の高いLEDとOLEDを使っています。作品保護の観点より低照度でありながらも、展示作品は自然で色鮮やかに照らされています (40~150lux) 。
第1章の一部にはスマートライティング(照度調整、上下左右可動、配光角の可変)というアプリで操作可能なもの(※2)を用いています。
約7mの高さにあるダクトに照明器具を設置した後でも、作品を見ながら細かな光の調整を同時に行えました。
とても便利な機能で助かります。
※2 ミネベアミツミ株式会社協賛

また、第2部冒頭の漆黒の展示台の上に置かれた黒楽茶碗や掛軸の、見え方や色彩などにもご注目いただければと思います。


第1部第2部合わせて160点を超える作品の一つ一つをなるべくストレスなく鑑賞でき、記憶に残る展示となるようにデザインしました。
第1部のデュシャン作品はフィラデルフィア美術館でもなかなか公開されていない作品も数多く展示されています。
この貴重な機会に是非何度でもトーハクへ足を運んで頂き、“デュシャン”に触れて“芸術とは何か”と考える秋はいかがでしょうか。

 

カテゴリ:2018年度の特別展

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posted by デザイン室 at 2018年11月16日 (金)