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「3.11大津波と文化財の再生」救出から再生へ

開催中の特別展「3.11大津波と文化財の再生」では、本館特別4室で「文化財再生のみちのり」と題した、文化財レスキューの進み方と今後解決を必要とする技術的課題についてのパネル展示を行っています。
今回は、パネル展示の流れに沿って、本館特別2室で展示中の「石川啄木歌碑拓本」が救出されてから本展での展示にいたるまでのみちのりをご説明します。

写真1は、被災した陸前高田市立博物館(写真2)から救出された直後の資料の様子です。
画面中央にコンテナがあり、そこにたくさんの掛軸が収納されているのがわかりますでしょうか。
 
写真1                                                      写真2

こうして救出された掛軸は津波で濡れ、泥や砂に覆われた状態でした(写真3)。このまま放置するとカビが発生し、劣化が著しく進行してしまいます。

写真3

そこで、表具を解体し、本紙1枚の状態にした後で水を使って洗浄と脱塩(塩分の除去)を繰り返します(写真4)。救出後に行なわれるこうした作業を安定化処理と呼び、これ以上劣化が進行しないような状態に留める処理内容のことです。安定化処理後の状態は本紙1枚だけですから(写真5)、このままでは展示に活用できません。
 
写真4                                                      写真5

再び表具を仕立てる本格修理を行い、ようやく現在の姿(写真6)に再生されるのです。

写真6


今回の特別展でお借りした全ての作品は、それぞれが様々なみちのりを経て当館で展示することができたものです。しかし、これで文化財の再生が完結したわけではありません。被災地が復興して、新たな博物館が完成した後に、そこで展示に活用されてようやく再生の終着を見ることができるのだと思います。

館内各所では特別展「3.11大津波と文化財の再生」のリーフレットを配布しています。
 こちらからリーフレットのダウンロードができます

文化財レスキューの進み方など現地で撮影された画像とともに詳しく説明した内容となっています。
ぜひ、お手にとってご覧ください。

カテゴリ:2014年度の特別展

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posted by 和田浩(環境保存室長) at 2015年02月13日 (金)