前々回のブログに続いて、特別展「桃山-天下人の100年」に関連するお話を。
▼100年間の表現の変化を追う
本展覧会では、同じ時代の作品を横並びに見るだけではなく、前後の時代とも比べていただくことで、それぞれの特徴を感じていただけるのではないかと考え、同じ主題や素材を使った室町時代、安土桃山時代、江戸時代のものを並べるというコーナーをいくつか作りました。
絵画ですと、洛中洛外図、源氏物語図、韃靼人狩猟図などのコーナーがそれにあたります。どれもオススメですが、このうち私が最も興奮したのは、展覧会冒頭の洛中洛外図屛風コーナーです…!現存する洛中洛外図屛風のうち、最も古い「歴博甲本(旧町田本)」(千葉・国立歴史民俗博物館蔵、重要文化財)と、二番目に古い「上杉家本」(山形・米沢市立上杉博物館蔵、国宝)、そして名前こそ洛中洛外図ではありませんが同じく京中を描く「聚楽第図屛風」(東京・三井記念美術館蔵)の3つが、至近距離で並びます。
桃山展 第1会場展示風景(11月1日まで)
「洛中洛外図屛風」は京の市中と郊外を描いた屛風で、室町時代後期から幕末まで長く描かれ続け、現在100件以上の作品が残っています。このうち歴博甲本と上杉家本は最も古いツートップであるだけでなく、人々のイキイキとした様子、景観の精緻さ、保存状態の良さなど見どころ満載で、日本絵画史だけでなく、さまざまの分野の専門家が大注目している作品なのです。そのふたつが、こんな至近距離で並ぶなんて…!自分もついお客様と同じ目線になってウルウルと感動してしまいます。
今回は、私の記憶にある限りでは初めての光景ですので、ふたつを並べて感じたことを書いてみたいと思います。
▼ふたつの洛中洛外図屛風
洛中洛外図屛風は京を地図のような正確さで描こうとするのではなく、注文主のリクエストによって建物のセレクトや扱いの大きさ、構図などが異なります。また時代ごとの新しいランドマークをドンドン取り入れる傾向があるので、時代を映す鑑のようでもあります。
歴博甲本は、向かって右に鴨川や内裏を、左に北山や嵐山、将軍や有力武家の邸宅などを描き、内裏(天皇や公家)と将軍家などを対比する構図になっています。もともと1520年ごろの景色を描いているのではないかと考えられていましたが、近年、大永5年(1525)に細川高国が将軍足利義晴のために造営し、ほんのわずかな期間だけ使用された「柳の御所」が描かれていることが明らかになり、高国が描かせたのではと話題になりました。
対する上杉家本は、「狩野永徳が描き、織田信長が上杉謙信に贈った」と記録されているもので、現代まで大切に守られてきた上杉家の家宝のひとつです。こちらも近年新しい史料が紹介され研究が進んだことで、現在では多くの研究者から「永禄8年(1565)に将軍足利義輝が狩野永徳に描かせ、上杉謙信に贈ろうとしたもの」であると考えられています。
▼印刷物ではわかりにくい違い
それでは実際に両者を並べてみるとどんなことに気がつくでしょうか。まず目に飛び込んでくるのが屛風サイズの差です。歴博甲本は縦138.2cm、上杉家本は160.4cmと、歴博甲本が20cm近く小さいことがわかります。室町時代の屛風は、安土桃山時代や江戸時代の屛風に比べて総じて少し背が低いことが知られており、この辺りからも年代の差を読み取ることができます。
次に気がつくのは金色の差です。歴博甲本がほんのりと穏やかに輝くのに対して、上杉家本は光を強く反射して画面全体が輝いているかのようです。
歴博甲本が金粉を絵の具のように溶かした金泥を主体に、輪郭線を明確にしない雲や霞のようなものを描いているのに対して、上杉家本は地面にも金雲にも金箔を使い、雲の輪郭にはさらに金泥を塗り重ね、箔の重なりや金泥との境目がわかりにくくなるように磨いてあります。金泥よりも不純物の少ない金箔はよく光りますし、磨けば磨くほどその輝きは増します。上杉家本はあらゆる方法を駆使して、画面全体が光り輝くよう工夫しているのです。歴博甲本の金泥による雲や霞の表現は室町時代によくみられる技法ですが、上杉家本はそこから離れ、より輝きを強調し、華々しい京の表現を目指しているといえます。
このほかにも、どこからの視点で構図が出来上がっているか、四季の表現や季節の行事をどのように埋め込んでいるかなど、作品の前に立つと気がつくことはたくさんあると思います。今回は前期展示の2作品について取り上げましたが、11月3日(火・祝)からはじまる後期展示でも、このような視点を持ちながら御覧いただければ、いつもと少し違った楽しみ方をしていただけるのではないでしょうか。
そして最後にもうひとつ。第2会場にて展示中の「日吉山王祇園祭礼図屛風」(東京・サントリー美術館、11月1日まで)の左隻(祇園祭礼図隻)も、洛中洛外図屛風と同様、京の市中を描いたものです!こちらは室町時代末期の土佐派によるもので、歴博甲本の後、上杉家本の少し前の作品と考えられています。少し離れていますが、こちらも併せて比べて見ていただければ、と思います。
カテゴリ:研究員のイチオシ、2020年度の特別展
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posted by 特別展「桃山」絵画担当 金井裕子(平常展調整室主任研究員) at 2020年10月31日 (土)
10月6日(火)より開幕しました、特別展「桃山―天下人の100年」。
前回の絵画担当の金井の記事を受け、今回は刀剣と甲冑を担当した酒井が続きます。
おそらく「桃山美術」は日本の文化のなかでもとりわけ人気があるものでしょう。
豪華な屛風や個性豊かな甲冑、異国の文化も取り入れた南蛮美術、あるいは千利休や古田織部による茶湯道具。
いずれも具体的なイメージがすぐに浮かぶのではないのでしょうか。
しかし「桃山美術はこうだ」とわかっていても、「なんで桃山美術が生まれたのか」、あるいは「桃山美術はその後どうなったのか」と言われると答えに窮するのではないでしょうか。
この理由は様々ありますが、ここでは視点を変えてみましょう。
唐突ですが私は歴史とは一枚の布のようなものと考えています。
たて糸は人間が過去・現在・未来を過ごした時間。よこ糸はその時点での人間の活動です。
前回金井が紹介した桃山美術の「分野の異なる作品のコラボレーション」とは、よこ糸の一例と考えていただければよいでしょう。
先の問いは、実は布全体から考えないとなかなか分からず、答えに窮するのは、おそらく桃山という布が、織目が細かく、しかも壮大なことに理由があると思われます。
このように桃山美術の説明は難しいのですが、そう言ってしまうと紹介にならないので、今回はよこ糸に続いてたて糸の一本を紹介してみます。
日本刀の刀身を収める、鞘と柄(つか)からなる刀装に「打刀(うちがたな)」という形式があります。
この刀装は、長い寸法の刀身を収め、基本的には刃を上にして左腰の帯に指して用います。
打刀はいつから使われるようになったのかはよく分かっていないのですが、16世紀のはじめころには、あまり身分の高くない人々が実戦で用いたものとされています。
一例として「黒漆打刀(No.36)」をあげると、全体の色調は暗く質実なものです。
また、刀剣を持つ部分となる柄には韋紐(かわひも)を巻きしめて握りやすくする工夫がみられます。
黒漆打刀(くろうるしのうちがたな) 室町時代・16世紀 東京国立博物館蔵
これが16世紀後半の安土桃山時代になると身分の高い武将が用いるようになり、豪華な装飾が施されるようになりました。
写真の打刀(No.37)は、徳川家康の次男、結城秀康(ゆうきひでやす、1574~1607)が用いたもので、朱漆を塗った鞘は目にも鮮やかで一見して違いが分かると思います。
重要文化財 刀 無銘 伝元重・朱漆打刀(かたな むめい でんもとしげ・しゅうるしのうちがたな)
(刀身)伝備前元重 南北朝時代・14世紀 (刀装)安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京国立博物館蔵
そして、「分部志津(わけべしづ)」という名刀を収めた徳川家康の刀装(No.38)は、鞘が暗い色調であるものの、表面の黒漆は丁寧に塗り重ねられ、研(と)ぎあげられて光沢を放っています。
さらに、この打刀には、家康の子で紀州徳川家初代となった頼宣(よりのぶ)がこれを模したという打刀も残っているのです。
重要文化財 刀 無銘 伝志津(名物 分部志津)・黒漆打刀(かたな むめい でんしづ〔めいぶつ わけべしづ〕くろうるしのうちがたな)
(刀装)江戸時代・17世紀 文化庁蔵
こうしてみると、民衆が実戦で用いていたものが、身分の高い武将が用いるようになって装飾が加わり、権威者のスタイルとして受け継がれていったことが分かります。
桃山美術の華麗な工芸品も、経緯があって生まれ、そして後の時代に意味をもって引き継がれていったのです。
ここでは打刀という一本のたて糸を紹介しましたが、先に書きましたとおり、私は「歴史は布」と考えています。
しかも桃山美術は織目の細かく大きな布です。とてもすぐに分かるものではありません。
しかし本展をみると、糸が人の営みそのものであり、人々が100年の間で全力を尽くし生きていたことが体感できます。
私はこれこそ文化財の力だと思っています。
そして、こうした文化財は、新型コロナウイルスの流行によって閉塞した状況にこそ、我々に何かの示唆を与えるものと考えています。
カテゴリ:2020年度の特別展
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posted by 特別展「桃山」担当 酒井元樹(調査研究課工芸室 主任研究員) at 2020年10月28日 (水)
表慶館で開催中の特別展「工藝2020−自然と美のかたち−」では、日本の現代工芸作家が近年に制作した82件の作品を展示しています。
工芸には陶芸、漆芸、金工、染織、木竹工、人形、ガラスなど様々な分野がありますが、自然由来の素材を使い、古くから伝えられてきたわざを用いながら、作家たちは個々の創造性を生かして現代を表現する作品を制作しています。
本展は工芸の諸分野を網羅していますが、今回は展示作品から二つの作品を紹介し、現代工芸にみる過去とのつながりについても紹介します。
柏葉蒔絵螺鈿六角合子(はくようまきえらでんろっかくごうす) 室瀬和美作 平成26年(2014) 個人蔵
こちらは漆の作品で、合子とは蓋付きの容器のことです。秋の日差しに照らされて異なる色に輝く柏の葉と小さいどんぐりが器全体を覆う、自然の息吹が感じられる作品です。
葉の部分には金粉を蒔く蒔絵と鉛板を貼り付ける平文(ひょうもん)という技法を用い、どんぐりは、二種類の貝を模様型に切り取って嵌める螺鈿(らでん)技法で表しています。金色に輝く葉は、形の異なる金粉を使うことで仕上がりも違ったものになっていますが、
5~10ミクロンという非常に細かい金粉を粉筒に入れ、中指、薬指、小指を使って蒔く量を調整しながら一定のリズムで蒔いていきます。刷毛やヘラなど、室瀬氏が制作に使う道具のほとんどが自然由来のもので、粉筒には鶴の羽の軸を使っています。
この作品には、金粉を蒔いた後、全体に漆を塗り磨く作業を繰り返して仕上げていく研出蒔絵(とぎだしまきえ)という技法が用いられています。
蒔絵や螺鈿は古くから漆工に用いられてきた技法で、東京国立博物館所蔵の八橋蒔絵螺鈿硯箱にも同じ技法が使われています。
国宝 八橋蒔絵螺鈿硯箱(やつはしまきえらでんすずりばこ) 尾形光琳作 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵 2020年11月29日まで本館12室にて展示
月出ずる 並木恒延作 平成26年(2014) 個人蔵
工藝2020展からもう一つの作品をご紹介しましょう。「月出ずる」は、画面の大半を占めているスーパームーンが印象的な、静寂が支配する厳かな雰囲気をもちながら迫力のある作品です。月の表面がリアルに表現されており、前景には湖が広がり、月の優しい光を受けて湖面がキラキラと輝いています。
実はこの作品は漆や金粉を使って描かれています。山と空の境界線のあたりには金粉をまき月明かりがぼんやりと照らしている様子をあらわし、よくみると、きらきらと輝いている水面には貝が使われています!自然の素材の特徴を巧みに取り入れて生かした作品です。この作品にも螺鈿や研出蒔絵が用いられています。
これらの作品を見ると、同じ素材や技法を用いながらもそれぞれ表現が異なること、そして素材や技法によって現代と過去がつながっていることがわかります。
展示会場には漆工の他にも、陶芸、染織、木竹工、金工、人形、ガラスなど、現代を表現する芸術家たちの手による作品が多数展示されています。作品は画像では伝えきれない多くのことを語ってくれます。是非会場に足を運んでみてください。
展覧会公式ウェブサイトでは、展示作品について作家が制作の意図や技法などを語ったコメントを紹介していますので併せてご覧ください。
カテゴリ:2020年度の特別展
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posted by 特別展「工藝2020」担当者 at 2020年10月23日 (金)
10月6日(火)、特別展「桃山―天下人の100年」がオープンいたしました!
本展覧会は、室町時代末から江戸時代初期にかけての激動の100年に日本人の美意識がどのように移り変わったのかを、安土桃山時代を中心にご覧いただく展覧会です。
おそらく同テーマを扱った展覧会では過去最大規模なのではないかと思います。
事前予約制のため、ご観覧の皆様には大変お手数をおかけしております。
その分、お越しいただいた甲斐があった!と思っていただけるよう、担当者一同、細心の注意を払いながら準備してまいりました。
重要文化財 松鷹図襖・壁貼付(まつたかずふすま・かべはりつけ)
狩野山楽筆 江戸時代・寛永3年(1626) 京都市(元離宮二条城事務所)蔵
作品の展示前に1件1件を丁寧に点検。ひとつひとつの作業を確認しながら進めていきます。
展示中の様子。作品に負担がかからないよう、襖がピッタリを収まる大きさの桟(さん)を設計し、慎重にはめていきます。
そこで、通常よりゆったりご鑑賞いただける今だからこそできる鑑賞のポイントをひとつご紹介したいと思います。
それは、「分野の異なる作品のコラボレーション」です!
大井戸茶碗越しに洛中洛外図屛風をみたり、高台寺蒔絵越しに襖絵をみたり、南蛮漆器越しに南蛮屛風をみたり…。
安土桃山時代の屛風や襖絵を背景に、その時代を生きた人々が実際に触れた優れた器物を展示し、両者を同時に鑑賞するということは、実は通常の展覧会ではなかなか実現できないことです。
本展は前後期合わせて、絵画74件、書跡20件、金工21件、武器武具28件、陶磁50件、漆工25件、染織13件という内訳で構成されており(※途中展示替えがございます)、室町時代末から江戸時代初期にかけての多くの分野の優品が一堂に会します。
ご鑑賞いただく立ち位置によって、見えてくる「桃山」の景色も変化します。
ぜひ皆様のお気に入りの組み合わせを見つけていただければと思います。
本展に合わせて、総合文化展でも同時期の作品を展示しています。
ぜひ博物館全体で、変革期の100年の美をお楽しみください。
カテゴリ:2020年度の特別展
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posted by 特別展「桃山」絵画担当 金井裕子(平常展調整室主任研究員) at 2020年10月16日 (金)
特別展「工藝2020ー自然と美のかたちー」では様々な工芸分野の作品が出展されています。
今回はその分野の中から「陶磁」と「染織」についてご紹介し、あわせて展示作品もピックアップしてご紹介します。
陶磁は、陶土や陶石を主原料とする土器や陶器、磁器などの総称です。
ろくろによる成型やひもづくり(その名のとおり、土をひも状にして積み上げて成型する方法)、型を用いる成型など、形をつくる上でもその手法は様々です。
陶器は原料となる陶土の産地によって、その色やきめの細かさ、粘りなどが異なります。
中世から現代へ続く瀬戸焼や信楽焼、備前焼や、桃山時代以降の樂焼や萩焼の茶陶などが有名です。
磁器は陶石を細かく砕き、粘土状にして成形されます。焼成後は白くて硬く、あまり吸水性のない器胎となります。
磁器の中でも特に有名な有田焼は、佐賀県有田町とその周辺の地域で製造される磁器です。日本で初めて磁器が焼かれた産地でもあります。その他にも石川県の九谷焼、愛知県の瀬戸焼などが知られています。
陶磁は近代に入って西欧の窯業科学や技術がもたらされ、多くの作家が新しい技術と伝統をふまえて、原料の土石や素地の成形、加飾、施釉、焼成などにそれぞれの創意と技術を工夫した多様な制作がおこなわれています。
扁壺「松籟」 森野泰明作 2015年 個人蔵
第3章5室に展示されている森野泰明氏の作品「扁壺「松籟」」は手びねり手法によって成型されており、緑と淡い黄緑の模様は一見すると抽象的ですが、松の梢を吹きぬける風を自然の囁きと感じ取った作家のイメージが表れており、自然の風景を想起させます。
色絵雪花薄墨墨はじき雪松文蓋付瓶 今泉今右衛門作 2019年 個人蔵
第2章4室に展示されている今泉今右衛門氏の作品「色絵雪花薄墨墨はじき雪松文蓋付瓶」は江戸期から伝わる「墨はじき技法」に白の微妙な「雪花墨はじき」と不思議な輝きの「プラチナ彩」をとりいれて制作されています。「墨はじき」とは、墨を用いた白抜きの技法です。
部分図
松の芽の部分には特徴的なプラチナ彩が使用されています。見る角度によって輝きが変化し、作品の色々な表情が楽しめます。
雪の結晶の薄墨墨はじき紋様を背景に、堂々と描かれた常緑の黒松に純白の雪が降り積もり、荘厳かつ清澄感のある作品となっています。
染織は一般的には絹や麻、木綿などの布を染めたり織ったりすることです。身体にまとう衣類や調度類にかぶせる布、空間を彩る掛物、また現代では糸や布によって空間を造形するといった芸術表現の分野にもなっています。
染は布に糊や蠟を塗る、あるいは絞り括って防染し、藍などの染料で染める技法です。手描きの友禅や型を用いた小紋染や型絵染、また蠟染などがあります。
織は木綿や麻、絹、化繊などの糸をたてとよこに交互に組み合わせて布をつくるものです。
真綿から手紡ぎした糸で絣や縞の模様を織り出す紬織や、ところどころ白く残して染めた木綿や麻の糸を組み合わせて織り文様をあらわす絣織などがあります。
染織は日本においては奈良・平安時代には中国や西域アジアの影響を受け、明治以降の近代には西欧やアメリカの影響を受けるなどして、糸や染料の素材や染織の技法に地域的な特色をつくりつつ、特有の染織文化が連綿と形成されてきました。
蒼風 小林祥晃作 2015年 個人蔵
第4章8室に展示されている小林祥晃氏の作品「蒼風」は伝統的な技法である蠟けつ染(とかした蠟で文様を描き、染液に浸したあとで蠟の部分を洗い流し、文様をあらわす染色技法)によって制作されており、遥か彼方に吹く風をモチーフとし、その空間に存在するであろう生命や魂などを心象風景として表現されています。
友禅着物 緋格子文 森口邦彦作 2019年 個人蔵
第3章5室に展示されている森口邦彦氏の作品「友禅着物 緋格子文」は伝統的な友禅の技法で、黒と白の格子が交互して立体感を創出し、上品で鮮やかな緋色が空間を有機的に彩ります。
展覧会では上記でご紹介した作品以外にも、多様な分野の工芸作品を82件展示しておりますので、ぜひ会場にて実物の作品をご高覧ください。
カテゴリ:2020年度の特別展
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posted by 特別展「工藝2020」担当者 at 2020年10月07日 (水)