書を楽しむ 第32回「短冊」
書を見るのは楽しいです。
より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第32回です。
短冊(たんざく)、というと、
一番身近なのは、七夕でしょうか。
7月7日、
笹の枝に、願い事を書いた短冊を結びつけましたよね。
いま、本館3室で、
短冊をたくさん貼り付けたアルバム、
「短冊手鑑」を展示しています。
短冊手鑑 鎌倉~江戸時代・14~18世紀(本館3室・宮廷の美術にて 2013年3月24日(日) まで展示)
ひとつひとつの短冊に装飾がされていて、
きらびやかです。
短冊の右側には、
小さめの紙に人の名前が書いてあり、
これを極札(きわめふだ)と呼びます。
筆跡を鑑定する古筆家(こひつけ)が、
筆者名を書き、印(「琴山」) を捺しています。
短冊の一番上に書かれた大きい文字は、
和歌の題です。
その下に二行に分けて和歌が記され、
左下に和歌を詠んだ人の名前が小さく書かれています。
(天皇の短冊の場合、親王時代には名前を書きますが、
天皇になってからのものは署名をしません)
和歌の会では、
題名だけ書かれた短冊を渡されて、
その題に合わせた和歌を書きます。
だから、歌会での短冊の場合は、
題と和歌は、ちがう人が書いていることになります。
さて、この「短冊手鑑」は、
江戸時代の浦井有国(うらいありくに、1780~1858)が
編纂したものです。
浦井有国は、刀剣の柄糸(つかいと)を扱う商人ですが、
俳句や和歌を学んでいて、短冊収集に熱心でした。
そのため、
その時期の『甲子夜話』(かっしやわ)という本の中で、
浦井有国は「短冊天狗」(たんざくてんぐ)と呼ばれています。
「短冊天狗」、
なんだか、いい呼び名ですね。
「短冊天狗」の集めた「短冊手鑑」、
ぜひ御覧ください。
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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2013年02月27日 (水)