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ボストン美術館展、20日に開幕!

待ちに待った特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」(2012年3月20日(火・祝)~6月10日(日))がいよいよ20日に開幕します!
一足先に、見どころもりだくさんの展示についてご紹介します。


ココがすごいぞ「ボストン美術館」展!

日本にあったならば、国宝・重要文化財の指定を受けてしかるべき作品の数々。大スターたちが一挙里帰りです。


弥勒菩薩立像(みろくぼさつりゅうぞう)
快慶作 鎌倉時代・文治5年(1189) 
鎌倉時代を代表する仏師の一人快慶が、最も若いときにつくったお像。ため息のでる美しさです。


狩野元信筆 金山寺図扇面

金山寺図扇面(きんざんじずせんめん)
伝狩野元信筆 景徐周麟(けいじょしゅうりん)賛 室町時代・16世紀前半
狩野派独特の鮮やかな色使いが、この作品からも見てとれます。この時代の扇面は現存数が少ないのだそうです。

 

長谷川等伯 龍虎図屏風 長谷川等伯 龍虎図屏風(右隻)
龍虎図屏風(りゅうこずびょうぶ)
長谷川等伯筆 江戸時代・慶長11年(1606) 
今も人気の高い、等伯の作品。タイガーとドラゴンがにらみ合います。



尾形光琳筆 松島図屏風

松島図屏風(まつしまずびょうぶ)
尾形光琳筆 江戸時代・18世紀前半
さすが光琳!と思わず言ってしまいそうな、きらびやかな作品。ほんものはもっと色鮮やかです!

どれも目玉作品ばかりです。

 

目玉といえば、最も注目度が高いのはこの作品。

曽我蕭白 雲龍図
雲龍図(うんりゅうず)(部分)
曽我蕭白筆 江戸時代・宝暦13年(1763)

ぎょろりとした目玉や、力強くガッと開いた爪、うねる荒波の表現など、作品の気迫に圧倒されます。修復後、世界初公開というからこれは絶対に見逃せません。

この他にも“在外二大絵巻”と称される「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」が全巻公開されますが、それはまた後日、研究員へのインタビュー記事で情報を発信していきます。近日公開予定ですので、ぜひご覧ください。

この春イチオシの「ボストン美術館」展、どうぞお楽しみに!
 

All photographs (c)2012 Museum of Fine Arts, Boston.

カテゴリ:news2012年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2012年03月17日 (土)

 

博物館でお花見を(予告)

ひと雨ごとにあたたかくなる、そういった感じのお天気ですが、それでも今年の冬は、寒が強かったためでしょうか、全国的に梅の開花も遅れているようです。
梅は咲いたか、桜はまだかいな・・・春のおとずれが待ち遠しい今日このごろです。

さて、今年も恒例「博物館でお花見を」がやってきます。
2012年3月20日(火・祝) ~ 4月15日(日)の期間、トーハクは内も外も、桜の花ざかり。
展示室では、桜をモチーフにしたかずかずの作品が、みなさんをお待ちしています。
屏風、浮世絵、焼き物の器、漆の調度・・桜を詠んだ漢詩・・豪華なラインナップは当館ならでは。

桜にちなんだ作品
(左) 色絵桜樹図透鉢 仁阿弥道八作 江戸時代 19世紀 (本館13室、2012年2月14日 ~ 5月6日展示)
(中央) 名所江戸百景・隅田川水神の森真崎 歌川広重筆 江戸時代・安政3年(1856) (本館10室、2012年3月20日 ~ 4月15日展示)
(右) 瓢形酒入 船田一琴作 江戸時代・天保14年(1843) (本館8室、2012年3月27日 ~ 6月24日展示)


桜の姿かたち、色、配置も、けっして一様ではありません。桜をいかに美しく表すか、さらには、桜というモチーフにことよせて、画面や器、詩の芸術世界を作り上げるか。それにしても、私たちはなんと昔から、桜を愛でていたことでしょう。

建物を出れば、外のお庭では、ヨシノシダレ、ミカドヨシノ、オオシマサクラ、エドヒガンシダレ、ケンロクエンキクザクラ、ギョイコウザクラといった、さまざまな種類の桜をご覧いただけます。


庭園風景 エドヒガンシダレと茶室春草廬
庭園風景 エドヒガンシダレと茶室春草廬(昨年の庭園の様子)

国宝 花下遊楽図屏風」(2012年3月20日(火・祝) ~ 4月15日(日)展示)はじめ、桜をテーマとした作品の解説や、お庭の桜ガイド、お茶会、桜セミナー、コンサートなど関連イベントも盛りだくさん。桜の作品をめぐるスタンプラリーでは、開館140周年記念バージョンの桜缶バッジをプレゼント。「花の雲鐘は上野か浅草か」(芭蕉)。館内に設置した俳句ポストに、あなたの一句をぜひどうぞ。トーハクならではの桜を、ぜひご堪能ください。

カテゴリ:博物館でお花見を

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posted by 伊藤信二(教育普及室長) at 2012年03月16日 (金)

 

公式フィギュアプロジェクト トーハク×海洋堂 『考古学ミニチュア カプセルフィギュア』第1集の販売

がちゃ!

春の扉が開く音が聞こえてきそうですね。トーハクでは、3月20日(火・祝)から4月15日(日)「博物館でお花見を」を今年も開催します!トーハクの春の風物詩として定着したこのお花見企画、今年も多彩な展示とイベントでお客様をお待ちしております。

でも、その日、「がちゃ」っと聞こえてくるのは春の扉だけではないんです。この日、3月20日(火・祝)から、トーハクは140周年を記念して東京国立博物館公式『考古学ミニチュア カプセルフィギュア』第1集を館内で限定発売することになりました。

ガチャガチャ販売機         ガチャガチャカプセル
販売用マシンとカプセル(イメージ)

よりトーハクに親しみをもっていただき、文化財をより身近なものとして感じていただきたいという願いをこめてプロジェクトが開始され、今回はその第1弾となります。
このミニチュアフィギュアは、ガレージキットや食玩などで世界的に有名な株式会社海洋堂製です。教科書でもお馴染みの、古代日本を知るためのトーハク所蔵の考古遺物-土偶、埴輪、銅鐸、土器をもとに6種類制作しました。いずれのフィギュアも当館考古の研究員の細部に渡る学術上の見解、そして「こだわり」をもとに精密に再現されています。
例えば、銅鐸フィギュアに描かれている絵画。ここから弥生人の生活が読み取れる貴重な史料となっております。その中に描かれている人物の頭の形は、男性はまるく、女性は三角で表現されています。今回のフィギュアはそこまでをも忠実に再現され、まさに研究員の細部に渡る見解、「こだわり」が表現されています。ぜひ、「ホンモノ」と見比べてみてください。

販売は館内設置のがちゃがちゃマシンから「カプセルトイ」が出てくる形式で、中身は硬貨を入れてレバーを回してからのお楽しみとなります。

フィギュア
「考古学ミニチュア カプセルフィギュア」第1集
左から、
人面付壺形土器
遮光器土偶
埴輪 踊る人々(小)
埴輪 踊る人々(大)
袈裟襷文銅鐸
埴輪 犬
高さ:約4cm~7cm

ご来館の際には、是非、お目当てのミニチュアフィギュアを狙って、ドキドキワクワクでレバーを回してみてください。

設置場所:本館 地下1階ミュージアムショップ
              平成館2階 特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」会場ショップ
              平成館1階 考古展示室入口

※2012年秋には、『考古学ミニチュアフィギュア』第2集と絵画立体化フィギュアプロジェクトの開始を予定しています。こうご期待!

カテゴリ:トーハク140周年考古

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posted by 内誠(総務課) at 2012年03月16日 (金)

 

酒宴のうつわ

3月6日(火)から、本館14室において「酒宴のうつわ」と題し
当館所蔵の陶磁器の酒器を集めた特集陳列を行っています。(~5月13日(日))

酒器、とひとことで言っても、いくつかの種類があります。
今回は、お花見の季節に合わせて主に宴席で用いる徳利や銚子、酒呑、杯など
33件を集めて構成しました。
いずれの酒器も、用いられる場所や場面、席主や客の好みなどに応じて創意工夫がされ、
さまざまな意匠のものがあちこちの産地でつくられてきました。
ここでは、バラエティーに富んだ酒器から、いくつかをご紹介します。
(掲載の画像の作品は全て2012年5月13日(日)まで展示)


まずは、土(陶)の酒器
よく焼き締まった徳利は存在感があります。

(左)褐釉菊水文大徳利 志戸呂 江戸時代・万治3年(1660)
(中)黄瀬戸酒呑 美濃 安土桃山時代・16世紀 広田松繁氏寄贈
(右)自然釉徳利 備前 室町時代・16世紀 山梨謙蔵氏寄贈




次に、磁器の酒器から伊万里の染付のものなど4点。
伊万里焼の酒器は、コレクターのなかでも特に人気がありますが、
伊万里だけでも、これだけ多様な形があるのです(これはその一部にすぎません)
   
(左)黒地点斑文瓶 伊万里 江戸時代・17世紀 広田松繁氏寄贈
(中左)染付花卉図角徳利 伊万里 江戸時代・17世紀 横河民輔氏寄贈
(中右)瑠璃地金銀彩山水図徳利 伊万里 江戸時代・17世紀
(右)染付松竹梅文徳利 伊万里 江戸時代・17世紀



二つの銚子。
もとは漆や金属などでつくられた酒器を、やきもので表現しています。
 
(左)染付銹絵龍田川図銚子 京焼・御菩薩池 江戸時代・18世紀
(右)色絵花鳥文銚子 伊万里(古九谷五彩手) 江戸時代・17世紀



地方窯の徳利から、特にユニークな二つ。
讃窯の徳利は、別名「髭徳利」とも呼ばれ、ドイツに本歌があります。
鴨徳利は、囲炉裏の灰の中で燗をつけるために、通常の徳利が横に倒れたかたちをしています。
 
(左)褐釉人面貼付文徳利 讃窯 江戸時代・19世紀 小倉安之氏寄贈
(右)緑釉鴨徳利 小杉 江戸時代・19世紀



そして、中央のケースには、伊万里、景徳鎮、唐津を取り合わせてみました。
皆さんならどんな組み合わせの酒器を用いたいと思われるでしょうか?

(奥)色絵祥瑞文瓢形徳利 伊万里(祥瑞手) 江戸時代・17世紀
(点前左)古染付捻文杯 景徳鎮窯 中国 明時代・17世紀 広田松繁氏寄贈
(点前右)黄釉酒呑 唐津 江戸時代・17世紀 広田松繁氏寄贈



やきものは、日常生活と接した身近な美術工芸品です。
鑑賞者は、願わくば作品を手にとって、
掌中におさめたときの感じまでをも体験できることが望ましいのですが、
博物館ではそれは叶いません。


展示をするときは、やきものができるだけ生き生きとして見えるように、
いつも並べ方、置く位置などに工夫をするように心がけています。
今回も、先輩研究員のアドバイスを受けながら、自分なりに納得いくまで
何度も何度も何度も…置き直しました。
たとえば器は、向きを少しひねるだけでも、途端に表情が変わることがあります。
これはやきものという立体作品ならではの面白さ、奥深さだと思いますし、
何より「☆!(ピン!)」とくるポイントが見つかると、
実はこっそり小躍りしたくなるほど嬉しかったりします。


展示室でも、可能な限り(ほかの鑑賞者の方の妨げにならない限り)、
ぜひケースの横にもぐるっと回ってご覧になってみてください。
前から見ていただけでは見えなかった、思いがけない発見があるかも・・・しれません。


ゆるやかに描かれた鉄絵がユニークな朝鮮の瓶と杯

(左)鉄砂草花文瓶 朝鮮 朝鮮時代・17世紀
(右)絵刷毛目杯 朝鮮 朝鮮時代・15~16世紀 広田松繁氏寄贈



横から見てみると・・・

「☆!」 瓶の中の人が楽しく酒盛りしています♪

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 横山梓(特別展室) at 2012年03月15日 (木)

 

黒田清輝-作品に見る「憩い」の情景2

本ブログは、特集陳列「黒田清輝-作品に見る「憩い」の情景」(~ 2012年4月1日(日))で展示される作品をご紹介する全3回のブログのうちの、第2回です。

黒田は1893年夏にフランスから帰国します。同年秋、生まれて初めて京都を訪れ、「始めて日本と云ふ一風変つた世界の外に在る様な珍しい国に来た様な心持」がしたといいます。特に舞妓に興味を抱き、「天下無類」「実に奇麗なものだと思ひました」と語っています。≪舞妓≫(1893年)はそうした折の作品です。モデルとなったのは小野亭の小ゑんという舞妓で、画面の右に後姿で描かれているのが仲居候補のまめどんです。近づいてきたまめどんに話しかけられて応えようとする瞬間の表情がとらえられています。お座敷に出ているときとは異なるくつろいだ自然な表情です。


重要文化財 舞妓 黒田清輝筆 明治26年(1893)
(~2012年4月1日まで展示)



日本に帰ってからの黒田は、フランス留学で学んだことを踏まえて日本の油彩画を制作しようとしていきます。フランスのサロンに出品されていたような絵画を日本の主題、モチーフで描くことを意識して、帰国後最初に取り組んだのが≪昔語り≫の制作でした。


昔語り下絵(構図Ⅱ) 黒田清輝筆 明治29年(1896)
(~2012年4月1日まで展示)

≪舞妓≫を描いた1893年秋の京都滞在の折、黒田は清水寺周辺を散策し、清閑寺という寺で平家物語にまつわる寺の由来を居合わせた老僧から聞きます。清閑寺は高倉天皇の寵愛を受けたために平清盛に恨まれた小督の局が出家させられて住んだ所です。その話を聞き、まるでその時代に居るような心持になった黒田は、いつか人が話をする情景を絵にしようと思ったと語っています。老僧を若い男女が囲んで話を聞く構図は、フランス留学中に黒田が作品への助言を受けに訪ねたピュヴィス・ド・シャヴァンヌの≪休息≫という壁画を参考にしているという指摘があります。シャヴァンヌは19世紀後半に壁画の大家として活躍し、フランスの公共建築内部に多くの作品を残しています。≪休息≫は≪労働≫と対を成す作品で、ひろやかな自然景観の中に古代風の人物を配して、自然に働きかけて日々の糧を得、休息時には長老の話を聞いて知識を得る生活を表しています。黒田はこの作品に深い共感を抱いていたようです。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 山梨絵美子(東京文化財研究所 企画情報部近・現代視覚芸術研究室長) at 2012年03月12日 (月)