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金色堂の仏像(1)

いよいよ開幕いたしました、《建立900年 特別展「中尊寺金色堂」》。ここでは、展覧会のみどころのひとつ、国宝仏像11体についてご紹介いたしましょう。

中尊寺金色堂には須弥壇(しゅみだん)が3基築かれています。この須弥壇内は奥州藤原氏歴代が今なお眠る厳粛な聖空間です。
本展ではこのうち初代清衡(きよひら)が眠る中央壇上に安置されている国宝仏像11体を展示しています。
 
会場展示風景
 
持国天・増長天の二天像は大きく腕を振り上げ、それに呼応して袖が翻るダイナミックな動きが見どころです。 
 

国宝 増長天立像
平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵

国宝 持国天立像
平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵
 
 
この姿を模したと思われる仏像がいくつか見つかっており、平泉が流行の発信源であったことがわかります。中世では、この二天像が中尊寺で一番有名な仏像だったかもしれません。キュッと引き締まったウエストは、鎧を脱いだらいったいどれだけ細い体なのでしょうか。 
 
持国天立像の引き締まったウエスト
横から見た姿
 
 
それでも、横から見るとぷっくり膨れています。不思議な体形ですが、このようにやや誇張された姿は神将形像の典型的なプロポーションです。
 
ユーモラスな姿が魅力の、踏みつけられている邪鬼はおそらく明治期の修理時に補作したものと見られます。  
 
持国天立像邪鬼
 
なんと、オリジナルグッズとして邪鬼のぬいぐるみを本展オリジナルショップで販売中です。時には踏んづけ、時には抱きしめ、時には踏まれる邪鬼に同情してあげてください。
  
ショップに並ぶ「邪鬼ぬいぐるみ」 価格:3,850円(税込)
 
次にご紹介するのは、とても愛らしい地蔵菩薩像です。
 
 

国宝 地蔵菩薩立像 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵

六体セットのいわゆる六地蔵です。六地蔵とは釈迦の滅した後の無仏時代に、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天という六道を輪廻転生して苦しむ衆生を救い極楽往生へと導いてくれる存在です。
極楽浄土の阿弥陀三尊だけでなく六地蔵を安置するところに、奥州藤原氏の「絶対に極楽往生する!」という強い意志を感じます。たとえ極楽往生できずに六道を輪廻しても、六地蔵が救ってくれるのです。可愛らしい見かけによらず、とても心強い味方です。
 
こちらは前期(3月3日まで)展示中の国宝・金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅(こんこうみょうおうさいしょうおうきょうきんじほうとうまんだら) 第三幀です。画面左下方にご注目いただきましょう。
 
 
国宝 金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第三幀 全図及び部分 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺大長寿院蔵
前期展示:2024年1月23日(火)~3月3日(日)
 
この錫杖(しゃくじょう)を持つ僧形は金光明最勝王経では妙幢菩薩(みょうとうぼさつ)と呼ばれていますが、実は地蔵菩薩のことです。殺生するのを見届けているようですね。この後、殺されたものだけでなく殺生して地獄に落ちた者も救ってくれるのでしょう。できれば、殺したり殺されたりする前に救われたいのですが、いずれにせよ、殺生して地獄に落ちても救ってくれるのがお地蔵さんです。
 
普段、金色堂ではこの6体の地蔵菩薩像は阿弥陀三尊像の左右に3体ずつ縦に並んでいるのですが、本展会場では横一列に整列しています。せっかくの機会ですので、6体それぞれと親しく向き合ってみてください。全部同じに見える? いえいえ、実はちゃんと個性があるのです。ここでは、顎の角度にご注目いただきましょう。
 
左列内側に展示している前方の像はグッと顎を引き、中央の像はスーッと正面を見据え、外側に展示する後方の像は顎をクイッと上げます。 
 
アゴを引く(内側・前方)
正面を見据える(中央)
アゴを上げる(外側・後方)
 
 
今回の展示は横一列に並んでおりますので、内側からグッ、スーッ、クイッの順でご覧いただけます。横からご覧いただくと分かりやすいですよ。
 
地蔵菩薩立像展示風景
 
集合写真で後ろに並んだ方が写りこむよう一生懸命顎を上げている、そんな風にも見えてきます。なんとも、いじましい姿ですね。 
 
この順序で並んでいるのがいつのことからか定かではありません。ただ、左右両列ともこの順序で並んでいるのは、こうすると顔が見えやすいことにどこかの段階で気づいて並べなおした結果かもしれません。もしかすると、当初からこうした並び順を意識して制作した可能性すらあります。というのも、その証拠に顎を上げている左列後方像は、首の後ろのお肉がムニュっと盛り上がっているのです。顔の向きと顎の角度とに有機的に連動した肉付き。ちょっとリアルで、なんともかわいい。。。ぐるっと360度ご覧いただける展覧会ならではの醍醐味です。
 
地蔵菩薩立像(背面)
 
ところで、こちらは先ほどご覧いただいた国宝・金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第三幀の右上方に描かれる釈迦如来です。釈迦の白毫から放たれた光が六道(傍題では四趣)を照らすという同経の内容を描いています。光の筋の先に地獄や餓鬼、畜生の姿が見えていますね。 
 
 
金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第三幀(部分)
 
これを参考にするならば、顎を上げて一生懸命顔を見せてくれようとする姿は、実は六道輪廻する衆生を救済し極楽往生へ導こうとする地蔵菩薩の本願を見事にあらわした姿なのかもしれないことに気づかされます。つまり、六道をしっかりと見据えようと顎を上げてくれているのです。そう思うと、いじましいだけでなく、有難さもひとしおです。是非、会期中に間近でご覧ください。
 

カテゴリ:彫刻「中尊寺金色堂」

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posted by 児島大輔(東洋室主任研究員) at 2024年02月06日 (火)

 

皆金色の極楽浄土! 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」が開幕します

明日1月23日(火)から、本館特別5室で、建立900年 特別展「中尊寺金色堂」が始まります。
 
建立900年 特別展「中尊寺金色堂」会場入口
 
今年2024年に上棟(じょうとう)から900年を迎える中尊寺金色堂。
これを記念して開催する本展では、中央の須弥壇(しゅみだん)に安置された11体の国宝の仏像や、きらびやかな荘厳具(しょうごんぐ)の数々を通じて、金色堂の魅力をお伝えします。
 
音声ガイド案内
 
音声ガイド・ナビゲーターを務めるのは、「進撃の巨人」エレン・イェーガー役や、「僕のヒーローアカデミア」轟焦凍(とどろきしょうと)役などを担当された声優の梶裕貴(かじゆうき)さん。
アニメ「平家物語」では、奥州藤原氏と縁の深い源義経役も演じられています。
展示作品とあわせ、音声ガイドによる解説もお楽しみください。
 
それでは、会場をご覧いただきましょう。
 
8KCGにより再現された中尊寺金色堂 ©NHK/東京国立博物館/文化財活用センター/中尊寺 
 
最初にみなさんをお迎えするのは、こちらの巨大なスクリーン。
幅7m、高さ約4mのディスプレイ上に、8KCGで再現された金色堂が原寸大で映し出されます。
実際の金色堂は、劣化を最小限にするために建物全体をガラスで仕切っており、参拝者はガラスの外から拝観します。
一方この映像では、仮想的に金色堂の内部にはいりこみ、須弥壇上の仏像や内陣の装飾を、間近に見るという体験ができます。
 
特別5室 展示風景
 
続いて、本展最大の注目作品である国宝の仏像11体をご覧いただきましょう。
金色堂内には3つの須弥壇(中央壇、西北壇、西南壇)が設けられており、各壇上に11体(計33体)の仏像が安置されています。
本展では中央壇上の仏像すべてを展示。阿弥陀三尊像、地蔵菩薩像(六地蔵)、二天像という構成です。
なお、本展図録では他壇上22体の仏像の写真も掲載しています。33体すべて見たい!という方はぜひお買い求めください。
 
国宝 阿弥陀三尊像(左から:勢至菩薩立像、阿弥陀如来坐像、観音菩薩立像) 平安時代・12世紀 岩手県・中尊寺金色院蔵
ふっくらと穏やかで優美な姿が特徴。金色堂建立当初から安置されていた可能性が高いとされます。
 
国宝 地蔵菩薩立像 平安時代・12世紀 岩手県・中尊寺金色院蔵
阿弥陀三尊の両脇に3体ずつ安置される地蔵菩薩立像。阿弥陀三尊と六地蔵のセットは六道輪廻からの救済を願う往生思想を体現しています。
 
金色堂の仏像1体1体を全方位からつぶさにご覧いただける大変貴重なこの機会。
京(みやこ)の仏像と比較しても遜色のない優れた造形を、ぜひご堪能ください。
 
金色堂を装飾していた荘厳具も見逃せません。
 
国宝 金銅迦陵頻伽文華鬘 平安時代・12世紀 岩手県・中尊寺金色院蔵
 
金色堂の柱の上部を横にわたる長押(なげし)にかかってたものです。
左右には、人の顔をした鳥が描かれているのがわかるでしょうか。
迦陵頻伽(かりょうびんが)と呼ばれる、極楽に住んで美声で鳴く空想上の鳥です。
たいへん愛らしい姿をしていますね。
 
国宝 紺紙金銀字一切経(中尊寺経) 平安時代・12世紀 岩手県・中尊寺大長寿院蔵
 
金字と銀字で交互に書写された、大変珍しいお経です。
一切経は5400巻近くにも及ぶ経典で、金色堂を建立した藤原清衡(きよひら)が8年もの歳月をかけてこの書写事業を完成させました。
大部分は高野山に移管されており、国宝指定のもので中尊寺に残るのは十五巻のみとなりますが、まさに奥州藤原氏のもつ莫大な富を象徴する作品です。
 
最後には金色堂の模型展示も。本品のみ撮影OKです!
 
豪華絢爛な金色堂の至宝を東京でご覧いただける、大変貴重な機会となっています。
ぜひ足を運んでいただき、清衡が目指した極楽浄土の世界を体感してください。
 
会期は4月14日(日)まで。事前予約は不要ですが、事前にチケットをお買い求めいただくと入館はスムーズです。
チケット情報は展覧会公式サイトから。
 
お見逃しなく!
 

カテゴリ:彫刻「中尊寺金色堂」

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posted by 天野史郎(広報室) at 2024年01月22日 (月)

 

上野に金色堂!? 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」のご紹介

2024年1月23日(火)~4月14日(日)、本館特別5室で、建立900年 特別展「中尊寺金色堂」を開催いたします。
 
本展ポスタービジュアル
 
中尊寺は岩手県平泉町にある、本坊と山内17ヶ院の支院で構成される寺院です。
参拝入口から月見坂と呼ばれる参道を登っていくと、自然豊かな境内の中に、本堂をはじめとする諸堂を見ることができます。
参道を進み、左手に見えるのが宝物館である讃衡蔵(さんこうぞう)で、その先の小高くなっているところに位置するのが現在の覆堂(おおいどう)です。
昭和まで金色堂は旧覆堂(重要文化財)の中にありましたが、金色堂解体修理(昭和の大修理)の際、現在の覆堂内に移築されました。
 
 
中尊寺風景・夏(金色堂覆堂)
国宝 中尊寺金色堂(中央壇)
 
国宝・中尊寺金色堂は、天治元年(1124)藤原清衡(ふじわらのきよひら、1056~1128)によって建立された東北地方に現存する最古の建造物で、2024年に上棟(じょうとう)から900年を迎えます。
本展は、これを記念して開催するものです。
 
去る7月4日(火)、平成館大講堂で報道発表会を行いました。
 
報道発表会の様子
 
最初に、主催者である中尊寺貫首奥山元照(おくやまげんしょう)氏と、当館副館長富田淳がご挨拶いたしました。
 
天台宗東北大本山中尊寺貫首 奥山元照氏
当館副館長 富田淳
 
奥山貫首は、清衡が2つの合戦で自身の家族を亡くしたことをきっかけに金色堂を建立したことに触れ、「戦いによって失われた尊い命を、敵味方の隔てなく極楽浄土に導きたいという願いが金色堂の輝きには込められている。ひとりでも多くの方に東京国立博物館に足を運んでいただき、清衡の平和への願いを感じ取ってほしい。」とお話しくださいました。
 
富田からは、本展では金色堂中央壇上の国宝仏像11体そろってはじめて寺外で公開すること、また8KCGにより金色堂を原寸大で再現することをご紹介いたしました。
 
 
続いて、本展の2つの見どころを、当館主任研究員児島と、NHK メディア総局・第1制作センター統括プロデューサー国見氏より解説いたしました。
 
当館学芸研究部東洋室
主任研究員 児島大輔
NHK メディア総局・第1制作センター
統括プロデューサー 国見太郎氏
 
 
解説に沿って、本展のみどころをご紹介しましょう。
 
【みどころ1】中央壇上の国宝仏像11体をそろって展示
金色堂内には3つの須弥壇(しゅみだん、中央壇・西北壇・西南壇)が設けられており、その内部に奥州藤原氏の遺体が納められています。
中央壇内部の棺に眠るのが、奥州藤原氏初代にして金色堂を建立した藤原清衡です。本展ではこの中央壇上に安置される国宝の仏像11体をそろって公開します。
 
国宝 阿弥陀如来坐像 平安時代・12世紀
岩手・中尊寺金色院蔵
ふっくらと穏やかで優美な姿が特徴
国宝 増長天立像 平安時代・12世紀
岩手・中尊寺金色院蔵
腰が引き締まり動勢の激しい姿が特徴
 
 
 
【みどころ2】超高精細な8KCGで実物大の金色堂を大型ディスプレイ上に再現
超高精細8KCGにより、金色堂と壇上の仏像をはじめとする堂内空間を、幅約7mの大型ディスプレイ上に原寸大で再現します。
普段ガラスの外からしか拝観できない金色堂を、8KCGにより、まるで堂内に入ったかのように細部まで鮮明にご覧いただけます。
この世の浄土ともいうべき輝きに満ちた信仰空間を体感してください。
 
 
  
8KCGで再現した中尊寺金色堂 ©NHK
 
 
世界遺産平泉の黄金文化を上野でお楽しみいただける、またとない機会となっています。
会期は2024年1月23日から。どうぞご期待ください!
 

カテゴリ:「中尊寺金色堂」

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posted by 天野史郎(広報室) at 2023年09月19日 (火)