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1089ブログ

トーハクくんがゆく! 特別展「縄文」でドッキドキだほ

ほほーい! ぼくトーハクくん!
開幕してはや2週間、ようやく特別展「縄文―1万年の美の鼓動」を見に来られたほ(泣)。


最初の展示室には、縄文時代の人たちが日常に使っていた道具が展示されているんだ。
ぼくのおすすめは、もちろん縄文ポシェットだほ。

重要文化財 木製編籠 縄文ポシェット
青森市 三内丸山遺跡出土
青森県教育委員会蔵(縄文時遊館保管)


ポシェットはぼくも使っているから、気になるほ。
縄文人さん、ポシェットって便利だよね。

トーハクくんのポシェットの中にはクッキーが入っていますが、縄文ポシェットのなかには、発掘時、クルミの殻が入っていました

縄文時代には耳飾もあったんだほ。

重要文化財 土製耳飾
東京都調布市 下布田遺跡出土
江戸東京たてもの園蔵


この赤くてきれいな耳飾は、耳に穴を開けてはめこんで着けるんだって。
おもに女のひとが着けていたらしいほ。
ほー、縄文時代の人はおしゃれさんだったんだほ。

そして、縄文時代といえば縄文土器。
土器につけられた縄目の文様が、「縄文時代」の名前の由来になったんだほ。

 
↑これが「縄文」です
重要文化財 片口付深鉢形土器/埼玉・上福岡貝塚出土/個人蔵)

展覧会では、縄文土器がたっぷり見られるほ。
縄目文様がいっぱいの縄文時代前期の土器も…

重要文化財 関山式土器
千葉県松戸市 幸田貝塚出土 縄文時代(前期)・前4000~前3000年
千葉・松戸市立博物館蔵


派手なかざりの中期の土器も…

火焰型土器・王冠型土器
新潟県十日町市 野首遺跡出土 縄文時代(中期)・前3000~前2000年
新潟・十日町市博物館蔵


きれいな文様が描かれた晩期の土器も…

重要文化財 大洞式土器
青森八戸市 是川中居遺跡出土 縄文時代(晩期)・前1000~前400年
青森・八戸市蔵(八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館保管)


縄文土器がいっぱいでドキドキだほ!(いちど言ってみたかったんだほ・照)

第2会場は「縄文国宝室」でスタート。

国宝 火焰型土器
新潟県十日町市 笹山遺跡出土
新潟・十日町市蔵(十日町市博物館保管)




あ、あかい…!
縄文時代のこくほー全6件が初めて揃う「縄文国宝室」だけあって、特別感がスゴイんだほ。

こくほー6件のうち、「土偶 縄文のビーナス」と「土偶 仮面の女神」(長野・茅野市蔵[茅野市尖石縄文考古館保管])は7月31日(火)から展示だほ。
センパイたちの到着を待ってるほー。
※古墳時代の埴輪であるトーハクくんにとって、縄文時代の土偶は大先輩なのです。

縄文国宝室を抜けると…
そこは、土偶センパイたちが大集合の土偶ひろばだほ。


いろんな土偶センパイがいてテンションあがるほ~!!
 

センターには土偶界のアイドル!

重要文化財 遮光器土偶
青森県つがる市木造亀ヶ岡出土
東京国立博物館蔵


展覧会担当研究員の品川さんによると「この遮光器土偶は背中も見てください。背中もとってもきれいな子なんです」だって。
見逃さないように注意だほ。

土偶好きの人は、ウェブ上のぬりえ「マイ土偶」に挑戦してみてね。
じゃ~ん、ぼくもぬってみたほ!

ポイントは目のまわりの赤いろです。「ぼくのほっぺをイメージしたほ」(トーハクくん談)

展示室で気になってしかたがない存在感をはなっているのが、この土器。

重要文化財 深鉢形土器
長野県富士見町 藤内遺跡出土
長野・井戸尻考古館蔵


ぱっと見はよくわからないんだけど…
よーく見ると何かが土器を抱きかかえているんだほ!


地元では「神像(しんぞう)筒形土器」と呼ばれているって聞いたほ。
本当に神様のつもりで作ったのかもしれないんだほ。
ほー、不思議な土器だほ…。

こっちの土器も見過ごせないほ。

顔面把手付深鉢形土器
山梨県北杜市 津金御所前遺跡
山梨・北杜市教育委員会蔵


ほ? 顔がふたつ?? こんな土器、見たことないほ。
これはおかあさんとあかちゃんを表していて、なんと出産のシーンを土器にしているらしいほ。

いま土偶センパイや縄文土器は大人気だけど、岡本太郎さんや柳宗悦(やなぎむねよし)さんも、縄文時代のものが好きだったんだほ。
展覧会の最後のコーナーでは、縄文の美に注目した作家さんや芸術家さんが紹介されているほ。
 
岩偶
岩手県岩泉町袰綿出土
東京・日本民藝館蔵


この岩偶センパイは、柳宗悦さんが「日本民藝館所蔵品ぜんぶと引きかえにしても欲しい」って言った大のお気に入りの岩偶で、右側の箱は岩偶センパイのためにわざわざ作ったんだって。
センパイ、うらやましいっす。
そんなこと言われたら埴輪冥利に尽きるほ~。

岩偶センパイだけじゃなくて、今回の展覧会の作品はどれも地元の人にとって「大事なうちの子」なんだほ。
縄文ご当地ビデオレターは各地の「うちの子愛」が爆発だ!ほ。
展覧会の予習復習にオススメだほ。

有名な遮光器土偶センパイや火焰型土器のホンモノが見られる感動あり、「こんな縄文があったんだほ!」っていう驚きあり、ドッキドキの展覧会だほ。
みんな、マイベスト縄文を探しにきてほー。

土偶センパイに負けないように、愛される埴輪になろうと決意をかためたトーハクくんなのでした

カテゴリ:考古2018年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2018年07月18日 (水)

 

今年もやります、BEER NIGHT!



昨年夏に平成館前庭にて開催し大好評をいただいたビアガーデン企画、「トーハク BEER NIGHT!」。
今年は会場を本館前庭に移し、NIGHT!といいながら9:30からスタート(※)など、よりパワーアップして盛り沢山の内容で開催します。
※アルコールの提供は16:00~


「トーハク BEER NIGHT!」昨年の様子

どのあたりがパワーアップしたのかと言うと…

パワーアップポイント(1)
広くなった会場!


昨年は時間帯によっては席がいっぱいになり、お入りいただけない状況にもなりましたが、今年は本館前の広大な空間にテーブル席を設けます。
でも、テーブル席が埋まってしまったら...
ご安心ください、芝生エリアでレジャーシートを敷いて楽しんでいただけます!
レジャーシートは今回のために特別に作成したトーハクオリジナルデザインです。
当日は生ビール販売店舗にてビールと一緒にお買い求めいただけます(※)。
広報大使のトーハクくんとユリノキちゃんがデザインされたシックなレジャーシート、ぜひお買い求めを!
※販売開始は16:00~。レジャーシートは指定された場所でのみお使いください。


新作のトーハクくん&ユリノキちゃんレジャーシート(900mm×600mm) 500円(税込)

パワーアップポイント(2)
豊富なメニュー!!

日替わりキッチンカーを昨年の4店舗から6店舗に増やします。
ビールにぴったりの世界各国のバラエティに富んだお料理をお楽しみいただけます!


出店料理の例(写真はイメージです)

現在開催中の特別展「縄文―1万年の美の鼓動」(2018年7月3日(火)~9月2日(日))では、縄文の国宝6件すべてが史上初めて集結します(「縄文のビーナス」「仮面の女神」の展示は7月31日〈火〉~)。
それにちなみ、各キッチンカーでは国宝6件の出土地域(北海道、青森県、山形県、新潟県、長野県〈2件〉)のクラフトビール6種類を各日、各種50本限定で販売します。しかもクラフトビール購入者には特別展オリジナルグッズの「火焰型土器紙コップ」を1本につき1個プレゼント!


火焰型土器紙コップ

パワーアップポイント(3)
縄文展特設ショップが出張販売!!!

さらに、充実したグッズが話題沸騰中の特別展「縄文」ですが、その中から夏にオススメのアイテムを取り扱う特設ショップがBEER NIGHT会場に登場!(※)
日が落ちてもまだまだ蒸し暑いこの時期、例えば汗拭き用に土偶パペットタオルなどはいかがでしょうか。
※販売開始は16:00~


土偶パペットポーチ 2000円(税込)

特設ショップには土偶折り紙ブースも出展。
大きな土偶折り紙で、原寸大の土偶を折ったりお面を無料で作ったりできます。折り方がわからない方はブースにてレクチャーもいたします。
ビールを飲みながら、ほろ酔い気分でチャレンジしてみてください。


折る土偶ちゃん-作って発掘・縄文おりがみ-(朝日出版社)

いかがでしたか?
展示を見た後は開放感あふれる本館前の贅沢な空間で、太古の昔に思いをはせつつ、「トーハク BEER NIGHT!」で一杯を。
お友達やご家族、同僚の方で、もちろんお一人でも、どうぞお楽しみください。

 

トーハク BEER NIGHT!
7月27日(金)、28日(土) 9:30~21:00(オーダーストップ 20:00)
8月3日(金)、4日(土) 9:30~21:00(オーダーストップ 20:00)
※アルコールの提供および特別展「縄文―1万年の美の鼓動」特設ショップ・土偶折り紙ブースは各日16:00~20:00
※荒天中止
※当日の入館料が必要(特別展「縄文―1万年の美の鼓動」は別料金)

 

カテゴリ:催し物2018年度の特別展

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posted by 武田卓(総務課) at 2018年07月13日 (金)

 

この秋は、トーハクでデュシャン! 「マルセル・デュシャンと日本美術」

今年のお正月のブログで、当館銭谷館長から今年の特別展ラインナップが紹介されました。
その中である展覧会について、「?!」と思われた方がおられたのではないでしょうか。



当館とフィラデルフィア美術館との交流企画として開催する「マルセル・デュシャンと日本美術」展(2018年10月2日(火)~12月9日(日) )です。

「日本美術の殿堂」と称されることもある当館で、「現代美術の父」と言われるマルセル・デュシャン(1887 - 1968)の展覧会をするのは異例です。

これは、当館が長年にわたってアメリカのフィラデルフィア美術館と交流があり、これまで「本阿弥光悦」展(2000年)、「池大雅と徳山玉欄」展(2007年)、「狩野派展」(2015年)に協力してきたいわば「お返し」として、フィラデルフィア美術館がアジア巡回する展覧会を開催することになったものです。
当館では、第1部をこのフィラデルフィア美術館の世界的に有名なデュシャン・コレクションからなる「デュシャン 人と作品」(The Essential Duchamp)とし、第2部として世界的に有名な(はずの)当館の日本美術コレクションで構成する「デュシャンの向こうに日本がみえる。」を併催、あわせて「マルセル・デュシャンと日本美術」として開催します。

ということで、現在10月2日の開幕に向けて準備を進めておりますが、4月のはじめ、当館の本展ワーキンググループチーフの松嶋室長、展示デザイナーの矢野室長、環境保存室の和田室長と私の4人が現地に行き、フィラデルフィア美術館の皆さんと展示や輸送などの打ち合わせをしてきました。

フィラデルフィアは、アメリカの東海岸、ニューヨークとワシントンDCの間あたりに位置し、アメリカ独立宣言の起草がなされた歴史ある都市です。

美術館本館前の階段は、映画「ロッキー」で主人公が上るシーンが有名で「ロッキー・ステップ」と呼ばれています。
私たちが訪問した日にちょうどシルベスタ・スタローン本人がフィラデルフィア市長とともに、ロッキーの銅像の前を訪れていました!
(会えませんでしたが……)


Photo by 108UNITED
ロッキーの銅像の前。
かなり寄せてたモノマネの人はいました。


まずは、デュシャン作品の展示室へ。

Modern and Contemporary Art – Anne d’Harnoncourt Gallery (182), Marcel Duchamp, The Bride Stripped Bare by Her Bachelors, Even (The Large Glass), 1915-1923, oil, varnish, lead foil, lead wire, and dust on two glass panels. © 2012 Artists Rights Society (ARS), New York / ADAGP, Paris / Succession Marcel Duchamp. Photo: Philadelphia Museum of Art.
※画像が小さいのは「オトナの事情」です


フィラデルフィア美術館のデュシャンコレクションはこちらをご覧ください。 ※下へ送っていくと「Marcel Duchamp」とありますのでそこをクリック!)

ここには、デュシャンの主要2作品である通称「大ガラス」そして、「遺作」が展示されています。いずれもここからは動かすことができないので、東京には持ってこられません。
※「大ガラス」は東京大学の駒場博物館からレプリカ(東京版)をお借りします。
※「遺作」は映像でご紹介する予定で、今フィラデルフィアで映像制作中です。

会議では、作品の展示・輸送、また保険や契約関係、展覧会関係の出版物、そして展覧会の広報について話し合いました。
フィラデルフィア美術館からこれらデュシャン作品やアーカイヴ資料がまとまって館外で公開されるのは初めて、とのことで、特に当館の環境面については、細かいところも説明し、必要な措置を確認しました。展示についての会議では、立体、紙・素描・版画、絵画それぞれの専門分野の保存修復担当の方々、貸与担当レジストラーの方、展示部の方々、そしてデザイナーの方と個々の作品の展示方法や展示台の素材、サイズなど、話し合いは詳細に及びました。
メールのやり取りではなく実際に担当それぞれの方とお会いすると、お互いざっくばらんにお話しできます。


展覧会のコンセプトについて熱く語る担当学芸員のマシュー・アフロンさん。秋の特別展期間には講演会もお願いしています。



展示について、デザイナーのジャックさん、レジストラーのウェインさん、展示部のヤナさんに、当館矢野デザイン室長が当館案の詳細を説明、検討しています。
先方からはなかなか厳しい質問も……


ミーティングの後、フィラデルフィア美術館ティモシー・ラブ館長とマシューさんにインタビュー。
展覧会について語っていただきました。


ティモシー・ラブ館長。今回の「The Essential Duchamp展アジア巡回の発案者です。

動画は会期前に公開しますので気長にお待ちください……

短い訪問でしたが、秋に向けて有意義な話し合いができました。

自主企画展の「マルセル・デュシャンと日本美術」、今後も準備の状況を少しずつご報告していきたいと思います。
どうぞご期待ください!
 

カテゴリ:2018年度の特別展

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posted by 鬼頭智美(広報室長) at 2018年06月15日 (金)

 

特別展「名作誕生-つながる日本美術」10万人達成!

特別展「名作誕生-つながる日本美術」(4月13日[金]~5月27日[日])は、来場者10万人突破を記念して、5月11日(金)にセレモニーを行いました。
多くのお客様にご来館いただきましたこと、心より御礼申し上げます。

セレモニーにご出席のお客様は、東京都墨田区からお越しの荘司守さんです。
奥様の善美さんとご一緒にご来館くださいました。
ご夫婦でよく美術展に行かれるというお二人は、何度もトーハクに来てくださっているそうです。

荘司さんには、当館館長より展覧会図録のほか、美術雑誌『國華』創刊号の表紙をあしらったトートバッグ、オリジナルのクリアファイルなどを、記念品として贈呈しました。


特別展「名作誕生-つながる日本美術」10万人セレモニー
右から、トーハクくん、館長の銭谷眞美、荘司守さん、善美さん、ユリノキちゃん


「イタリアの文化が好きなんです」という荘司さん。
「ヨーロッパの美術展では、よく宗教画を見てきましたが、この展覧会では久々に日本美術に触れられるのが楽しみ。特に『見返り美人図』が見られるのは嬉しい」とお話しくださいました。
とてもノーブルで素敵なお2人で、憧れのご夫婦でした。

5月8日(火)からは後期展示がはじまっています。
本展は5月27日(日)まで。名品の豪華なラインナップを、どうぞお見逃しなく!

カテゴリ:news2018年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2018年05月11日 (金)

 

名作誕生展 ふるさと吉野

特別展「名作誕生-つながる日本美術」には「吉野山」というコーナーがあります。私にとって、吉野は母方の実家があるところ。なので、子供のころからよく遊びに行きました。

祖父母の家は、最後のニホンオオカミが捕まったという山里にあります。夏になると、村の人たちが鮎を捕るのを手伝ったりしました。冷たい川で鮎を網に追い込み、捕まえた鮎を川原で塩焼きにして、蓼[たで]の葉を酢で溶いた蓼酢を付けて食べます。尻尾から頭まで丸かじりに骨や内臓[はらわた]も食べます。これは大変おいしく、現在でも、私の一番の好物は吉野の鮎の塩焼きです。

秋になると、祖母が山で大きな松茸をたくさん取って来て、小さな土瓶から松茸がはみ出るような土瓶蒸しを作ってくれました。それから、役行者[えんのぎょうじゃ]にゆかりのある吉野山の金峯山寺[きんぷせんじ]に出かけて巨大な蔵王堂[ざおうどう]を見物したり、修験者の方から法螺貝の吹き方を教わったような思い出もあります。



吉野山図屛風[よしのやまずびょうぶ](左隻) 
渡辺始興[わたなべしこう]筆 江戸時代・18世紀
(展示期間:5月8日(火)~5月27日(日))



というのは、私にとっての吉野であり、やはり世間一般の吉野に対するイメージは桜でしょう。古くから吉野は桜の名所として名高く、日本美術では、なだらかな山に満開の桜をちりばめれば、それは吉野山のテーマを表現していることになります。



小袖 縞縮緬地桜山模様[こそで しまちりめんじさくらやまもよう]   
江戸時代・18世紀 神奈川・女子美術大学美術館蔵
(展示期間:5月8日(火)~5月27日(日))



桜は『日本人の心のふるさと』などと言われる国花[こっか]です。毎年3月の半ば過ぎになると、「今年の満開は何日頃だ」とか「そろそろ桜が咲きそうだ」といった話題が聞こえてきます。

日本では、4月を年度のはじめとするので、ちょうど新生活がはじまる頃に一斉にパッと満開する桜がひとびとの気持ちと重なるのでしょう。あまり長ったらしく咲き続けないで、サッと散るすがたも潔いものです。「花は桜木、人は武士」というのは、一休さんの言葉だそうですが、その美意識はさらにさかのぼるようです。

平安京の宮廷様式を伝える京都御所の紫宸殿[ししんでん]の前庭には桜と橘の樹木が植えられており、左近[さこん]の桜、右近[うこん]の橘といっております。左近のほうは、平安遷都時には梅を植えていたのですが、その梅が枯れると、桜に植えかえて、以後は桜になったのでした。



色絵吉野山図透彫反鉢[いろえよしのやまずすかしぼりそりばち]   
尾形乾山[おがたけんざん]作 江戸時代・18世紀 静岡・MOA美術館蔵



梅は中国で愛好されている花で、平安遷都時には中国文化に対するあこがれが強かったものが、やがて日本人の感覚に合う花が選ばれるようになったもののようです。そのころの宮廷人の在原業平[ありわらのなりひら]は、友人たちと花見に出かけて“世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし(この世に桜がなければ、桜の咲き散りを気にせず、春をのどかに過ごせるのに)“という歌を詠んだところ、それに対して友人は“散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか久しかるべき(散るからこそ、いっそう桜は愛しいのではないか。この世で何が変わらないままにいるのだ)”という歌を返したのでした。

そのように一瞬のあいだ咲きほこる桜に対する美意識を造形として留めたものが吉野山のモチーフだったといえましょう。

特別展「名作誕生-つながる日本美術」は5月27日(日)までです。吉野の魅力をぜひお楽しみください。

カテゴリ:2018年度の特別展

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posted by 猪熊兼樹 at 2018年05月09日 (水)