本館 14室
2013年3月19日(火) ~ 2013年6月2日(日)
巡りゆく季節を楽しみ、折々に神や先祖を祀(まつ)る。また、茶を点(た)てて大切なお客様をお迎えする。そうした際の室礼(しつらい)に欠かすことのできないものが花です。
古来、仏教の世界では花は重要な荘厳(しょうごん)の道具でした。花にまつわるさまざまの器は正倉院宝物をはじめ、古刹に伝わる法具があり、また仏画のなかにそれらが使われた様子を具体的に知ることができます。
「花を生ける」という風景が、現代の私たちにより身近な形になったのは、おそらく書院造の建築が完成した室町時代でしょう。書画を掛け、花を飾った床の間は、武士たちが教養を積み、精神性を高めるための空間として重要な役割を果たしました。当時日本は、足利将軍家を中心に中国の工芸品を積極的にとり入れており、気品高い古銅や青磁の花生を数多く将来したのもこの時期のことです。
室町時代末から安土桃山時代の頃になると、茶の湯の流行にともなって、日本で作られた花生が登場します。自然をそのままに、不完全さや素朴さを美とする「侘(わ)び茶」の世界では、備前や丹波などいわゆる土物の花生や、竹、瓢(ひさご)、籠などの独創的な花生が珍重されました。
今回の展示では、格式高い唐物の花生や、飄逸な形が魅力的な和物の花生に加え、日本人にとって親しみ深い古染付(こそめつけ)や万暦(ばんれき)赤絵の花生もあわせてご覧いただきます。時流に乗って変化をとげたさまざまの花生をどうぞお楽しみください。