特別デジタル展「故宮の世界」の魅力紹介(1)――清朝宮廷絵画の傑作、「慶豊図巻」
2022年7月26日(火)から、日中国交正常化50周年記念 特別デジタル展「故宮の世界」が開幕します。
北京にある故宮博物院の全面協力のもと、故宮の建築(明・清時代の宮殿)を散策したり、所蔵の文化財を間近に見たりする経験を、VR(ヴァーチャル・リアリティ)等によって可能にしよう! という展覧会で、平成館における最新技術を駆使したデジタル展示は、トーハク初の試みです。
VRで再現した、清時代の宮殿、太和殿の内観 映像展示『バーチャル紫禁城―Night & Day―』より
(VR作品『故宮VR 紫禁城・天子の宮殿』、製作・著作:故宮博物院/凸版印刷株式会社)
この特別デジタル展「故宮の世界」に付随し、「清朝宮廷の書画と工芸」と銘打ち、トーハクが所蔵・管理する清朝宮廷美術作品(これは実物)も展示しています。
これらの魅力をみなさまに紹介するため、担当研究員によるブログ連載を始めます!
第1回目は、東洋絵画担当から、中国絵画の名品を1点ご紹介したいと思います。
「慶豊図巻」(部分)
金昆、陳枚、孫祜、丁観鵬、程志道、呉桂筆 乾隆5年(1740) 個人蔵
(縦28.6センチメートル、横512.4センチメートル)
「清朝宮廷の書画と工芸」コーナーで出陳されている作品の内、とりわけ注目度が高いのが、清朝最盛期である乾隆帝(けんりゅうてい)の御代に宮廷画家たちが合作した長大な画巻、「慶豊図巻(けいほうずかん)」です。
「慶豊図巻」には、5メートル以上にわたり、華やかな都市の繁栄が非常に緻密に描かれています。
描かれた街には、新年を祝う言葉が散見され、たくさんの燈籠が飾られます。
また、巻頭には、清朝の重臣で、書家としても著名な梁詩正(りょうしせい)が乾隆帝自作の詩を書いていますが、ここに満月を寿ぐ句や「皇都」の言葉が見られます。
以上のことから、この長巻には、元宵節(げんしょうせつ、旧暦1月15日の祭)を迎えた北京が理想化されて描かれていると考えられます。
門に貼られた「祝春王正月」の書
燈籠を運ぶ人々
巻頭、梁詩正の書いた乾隆帝題詩
首都が平和で繁栄しているのは、とりもなおさず、統治者である皇帝の徳政のたまものですので、「慶豊図巻」はある意味で、乾隆帝を称賛するための絵画作品ともいえます。
宮廷美術に関する様々な雑事を記録した公文書(活計檔)には、乾隆帝が、即位したばかりの乾隆元年(1736)正月、元時代の画家、銭選(せんせん)による「慶豊図巻」を献上され、宮廷画家の陳枚(ちんばい)にこれをもとに画稿(下描)を作るよう命じた旨が記されます。
同年10月、完成した画稿を確認した皇帝は、その出来に満足し、この通りに本画を作るよう命じています。
この本画は乾隆2年には完成したようです。
今回展示した「慶豊図巻」は乾隆5年(1740)12月完成と落款にありますので、上記は別本と思われますが、作者には同じ陳枚が名を連ねているので、乾隆2年本の成果が何らかの形で、本巻にも反映されているとみてよいでしょう。
「慶豊図巻」(部分)
いずれにせよ、何度も「慶豊図巻」を作らせた乾隆帝が、この主題に大きな関心があったのは確かです。
乾隆5年の活計檔には、12月25日、乾隆帝が、完成したばかりの本巻をわざわざ取り寄せて手元に置き、翌正月3日に改めて、これを特に気を付けて表装するよう臣下に命じた旨が記されています。
また、制作から50年以上経った乾隆57年、老境にいたった皇帝が元宵節の燈籠鑑賞の際に、朝鮮や琉球、ベトナムなど各国の使節に本巻を披露したことがわかっています。
「慶豊図巻」(部分)
さまざまな風俗が精緻に描き込まれた「慶豊図巻」は見所だらけの名作です。
栄華を誇った大清帝国の最も偉大な皇帝、乾隆帝が、生涯を通して愛したこの長大な画巻を、現代に生きるみなさまにもぜひ楽しんでいただきたいと思います。
龍舞
新春の骨董市
カテゴリ:中国の絵画・書跡、2022年度の特別展
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posted by 植松瑞希(絵画・彫刻室) at 2022年07月22日 (金)
特別展「琉球」は、6月26日(日)までと、あと1週間ほどになりました。
カテゴリ:2022年度の特別展
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posted by 品川欣也(教育普及室長) at 2022年06月17日 (金)
みなさん、こんにちは。現在開催中の特別展「琉球」も残すところ2週間ほどとなりました。
沖縄好きな人も沖縄には行ったことのない人も、琉球・沖縄の歴史、文化芸術をまるごと感じていただける展覧会です。ぜひお運びください。
カテゴリ:2022年度の特別展
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posted by 原田あゆみ(企画課長) at 2022年06月09日 (木)
沖縄は伝統工芸の宝庫として知られていますが、琉球時代には漆工や染織の工芸品が中国皇帝に贈られており、
これらは琉球を代表するものとして自負されていたように思われます。
染織については、すでに別にブログが書かれましたので、ここでは漆工について書きましょう。
琉球時代から沖縄では漆工が盛んなのですが、はたして沖縄で漆が栽培されていたかは議論がありますが、古い文献に沖縄で漆を栽培していたことを示す記事があることから、近年では栽培されていだのだろうと考えられています。その漆工の技法や意匠は、日本の本土よりも中国に似ていますが、まったく中国と同じというのでもありません。本土で漆器といえば、漆黒(しっこく)という言葉もあるように、黒塗りが基本ですが、琉球では朱塗りの漆器も多くつくられました。首里城正殿(しゅりじょうせいでん)の塗装にも漆が用いられており、「巨大な漆器」などといわれることもあります。
カテゴリ:2022年度の特別展
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posted by 猪熊兼樹(特別展室長) at 2022年05月31日 (火)
5月23日(月)、東博の正門横に、東博創立150年を記念したオリジナルデザインのポストを設置しました。
除幕式には、日本郵便株式会社のオリジナルキャラクター・ぽすくまとトーハクくんも登場!
ポストには創立150年記念のロゴマークと、記念ロゴマークにも使用されている唐草文様が施されています。
この唐草文様は、東博の所蔵品や、本館、表慶館の建築装飾に使われている唐草文がモチーフとなっています。
学芸企画部デザイン室の荻堂研究員によるデザイン
除幕式では、まずは館長の銭谷が「普段あまり郵便を使用しないという方もいるかもしれないが、このポストを利用していただくことで、手紙で思いを伝える機会を提供できれば」と挨拶しました。
また、上野郵便局の宮部 第一集配営業部部長からは、「上野公園のパンダポストと東博の創立150年記念ポスト、これだけ近くにラッピングポストがあるのは珍しいこと。ぜひ、観光等にご活用いただきたい」とご挨拶をいただきました。
ポスト投函の記念すべき第一号は、トーハクくん!京都国立博物館の公式キャラクター・トラりんに、葉書を送りました。
トーハクくん、トーカン!
本館1階ミュージアムショップでは、東博の作品をモチーフにしたポストカードや便箋を販売中。
その近くには、来館記念スタンプを押すことのできるスペースもご準備しています。
来館の記念に、スタンプを押した手紙や葉書をこのポストから送ることができます!
来館記念スタンプは全部で6種類。デザインは来館してからのお楽しみ!
ご来館の際には、創立150年記念ポストをぜひご利用ください!
カテゴリ:news、東京国立博物館創立150年
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posted by 総務課総務担当 at 2022年05月30日 (月)