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特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」報道発表!

2020年3月13日(金)~5月10日(日)、本館特別4室・特別5室にて、特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」を開催します。
9月24日(火)に本展の報道発表会を行いました。




まずは当館副館長の井上洋一と、法隆寺の古谷正覚(ふるやしょうかく)執事長よりご挨拶をいたしました。


 
左:当館副館長 井上洋一 右:法隆寺 古谷正覚執事長


飛鳥時代に描かれた法隆寺金堂壁画。東洋仏教絵画の白眉と言われた貴重なこの壁画は、1949年の火災により大半が焼損してしまいました。しかし、焼損前に描かれた模写などが残されているおかげで、今でもその威容をうかがい知ることができます。
本展では、法隆寺金堂壁画の模写や、焼損後に再現された現在の壁画、そして日本古代彫刻の最高傑作のひとつである国宝・百済観音など金堂ゆかりの諸仏を展示します。

本展の見どころについて、担当研究員の瀬谷愛より解説いたしました。




【みどころ1】
模写と再現壁画で、かつての荘厳な姿に迫る

かつて法隆寺の金堂内には、釈迦浄土図や阿弥陀浄土図などが描かれた大壁(高さ約3.1m、幅約2.6m)4面と、菩薩たちが描かれた小壁(高さ同、幅約1.5m)8面の、計12面から成る壁画群がありました。
金堂は、修学旅行などで行かれた方も多いかと思います。堂内をよく見てみると、現在は再現壁画があり、当時の空間をイメージできたり、空気感を感じ取ることができます。が、内部が少し暗めなことと、壁画まで少し距離があることで、細部までは見ることは難しいかもしれません。

明治17年(1884年)頃に桜井香雲(さくらいこううん)が、大正11年(1922年)に鈴木空如(すずきくうにょ)が原寸大で描いた模写など、全12面のうち、本展では9面を展示し(※会期中展示替えがあり、9面が入れ替わりで展示されます)、じっくりと対峙していただけるような空間をつくります。
(※焼損した本物の壁画は出品されません。)


 
法隆寺金堂壁画(摸本)
【左】第10号壁 薬師浄土図 
鈴木空如摸 大正11年(1922) 秋田県大仙市蔵 前期展示(3月13日(金)~4月12日(日))
【右】第6号壁 阿弥陀浄土図 
桜井香雲摸 明治17年(1884)頃 東京国立博物館蔵 後期展示(4月14日(火)~5月10日(日))



【みどころ2】
国宝・百済観音、23年ぶりに東京へ!

仏像好きの皆様、お待たせいたしました。百済観音がついに東京へやってきます!

飛鳥彫刻を代表する国宝 観音菩薩立像(百済観音)は、昭和のはじめまでは金堂内に安置されていました。現在は法隆寺の大宝蔵院内に安置されています。
このお像は、江戸時代には「虚空蔵菩薩」とされていましたが、明治になって透かし彫りの宝冠が見つかり、その正面に観音菩薩の象徴である阿弥陀如来の姿が表わされていたため、「百済観音」と呼ばれるようになりました。

初心者の筆者は、やわらかな微笑みを湛えたこのお像に会えるのが楽しみで仕方ないのですが、「23年前にも見たし、法隆寺でも見ているわ」というマニアの皆様にもご納得いただけるような、美しい展示にする予定です。


国宝 観音菩薩立像(百済観音)
飛鳥時代・7世紀 法隆寺蔵
(撮影:佐々木香輔 、提供:奈良国立博物館)


法隆寺の古谷執事長は、ご挨拶のなかで、
「天変地異など大変なことが起こっている昨今、少しでも皆様のお力に繋がるようにという思いで、百済観音にお出ましいただくことになりました」とお話しくださいました。

当館蔵でも今までほとんど展示する機会がなかった壁画模写と、百済観音をご覧いただける貴重な機会です。
特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」、どうぞお楽しみに!


そして、法隆寺公認「百済観音フィギュア」の製作が決定しました!製作はもちろん、海洋堂さんです。
価格などの詳細は、決まり次第本展公式サイトにてお知らせします。

カテゴリ:彫刻2020年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2019年10月13日 (日)

 

特集「平安時代の書の美―春敬の眼―」

現在、本館特別1室で、特集「平安時代の書の美―春敬の眼―」を開催しています。春敬の眼、としましたが、飯島春敬(いいじましゅんけい、1906~96)の視点から、平安時代の書をご紹介するものです。春敬は、書家であり、古筆研究家であり、コレクターでもありました。その古筆研究は、現在の研究の基礎を形作っています。今回の展示は、春敬の研究からテーマを設定しました。

テーマ(1)は、「伝紀貫之筆 高野切の研究」です。

和漢朗詠集断簡(関戸本)
和漢朗詠集断簡(関戸本) 源兼行筆 平安時代・11世紀

これは、「高野切」(こうやぎれ)の筆者による別の作品です。「高野切」は、『古今和歌集』(こきんわかしゅう)を書写した現存最古の写本で、仮名の基本といえる作品です。伝紀貫之(きのつらゆき)筆とされますが、実際は、第一種、第二種、第三種と呼ぶ三人の筆者によって寄合書き(よりあいがき、分担して揮毫)されています。春敬は、第二種筆者が源兼行(みなもとのかねゆき、~一〇二三~七四~)であるということを、書風から研究しはじめました。その後、兼行の書状の発見により、「高野切」第二種が源兼行筆であり、「高野切」は平安時代・11世紀中ごろに制作されたことが現在は定説となっています。三人の筆者は当時活躍していたため、ほかの書もたくさん残しています。

十巻本歌合切
十巻本歌合切 伝宗尊親王筆 平安時代・11世紀 植村和堂氏寄贈 [展示期間:10月27日(日)まで

 

次に、テーマ(2)は、「十巻本歌合、二十巻本歌合の研究」です。

歌合(うたあわせ)とは、左右に分かれて、左の和歌と右の和歌で競い合う催しで、平安時代の貴族の間でさかんに行われました。また、平安貴族は、歌合の記録の編纂をしました。それが、「十巻本歌合」、「二十巻本歌合」という歌合集成です。
十巻本、二十巻本はともに草稿本(そうこうぼん)で、清書本(せいしょぼん)ではありません。芸術性に欠けるためなのか、また、筆者が10人以上にわたるためなのか、なかなか書の研究が進みませんでした。そんな中、一念発起したのが飯島春敬でした。春敬は、この歌合集成の研究を行うにあたって、「命がけで努力」し、「悲壮な覚悟でこの研究に立ち向かった」と記しています。
 

 

そして、テーマ(3)は、「小野道風、藤原佐理、藤原行成の研究」です。

重要文化財 書状 藤原行成筆
重要文化財 書状 藤原行成筆 平安時代・寛仁4年(1020)

平安時代の中期に、「三跡」(さんせき)と呼ばれる三人の能書(のうしょ、書の巧みな人)が活躍しました。その三人が、小野道風(おののとうふう、894〜966)、藤原佐理(ふじわらのさり、944〜998)、藤原行成(ふじわらのこうぜい、972〜1027)です。写真は、行成直筆の現存唯一の書状です。春敬は、道風、佐理、行成それぞれの書の研究をし、「日本の書道は、三筆時代に大きな飛躍があったが、真にその国民性を発揮したのは、三跡の時代である」と述べました。
さいごに、そのほかの春敬の研究として、「源氏物語絵巻詞書」(げんじものがたりえまきことばがき)などの珠玉の春敬コレクションや当館所蔵の古筆を、のぞきケースで近づいて御覧いただけます。春敬やその後の研究を確認しながら、平安時代の書の美をお楽しみください。

 
特集「平安時代の書の美ー春敬の眼ー」

 

特集「平安時代の書の美―春敬の眼―」
2019年10月1日(火)~11月17日(日)
本館特別1室

 

特集「平安時代の書の美ー春敬の眼ー」

特集「平安時代の書の美―春敬の眼―」
2019年10月1日(火)~11月17日(日)
本館特別1室

 

カテゴリ:書跡特集・特別公開

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posted by 恵美千鶴子(東京国立博物館百五十年史編纂室長) at 2019年10月10日 (木)

 

中国絵画にLOVEをみつけよう!

現在、東洋館では「博物館でアジアの旅 LOVE♡アジア(ラブラブアジア)」(~10月14日(月・祝))が開催中です。
「中国の絵画 高士と佳人―18から19世紀の人物画と肖像画」(~10月27日(日))が展示されている東洋館8室でも、LOVEを探してみましょう。


東洋館8室「中国の絵画」会場風景

中国では悠久の歴史の中で、さまざまな恋物語が語られてきました。
そして画家たちは、これらの物語にインスピレーションを得て、次々と魅力的な作品を生み出してきたのです。

例えば、三国志に登場する貴公子、曹植(そうしょく/192~232)の文学作品『洛神賦(らくしんふ)』は、古くから何度も絵画化されてきた恋物語です。

曹植は、魏の曹操(そうそう/155~220)の息子で、優れた詩人として知られています。
都から帰る途中、華北地方を流れる洛水(らくすい)のほとりで、川の女神に出会った曹植は一目で恋におちます。

『洛神賦』は、女神の美しさ、二人の間に育まれる愛、そして「心はとこしえにあなたを想っています」との言葉を残して、女神が天上に去っていくまでを、流麗な文章でうたいあげています。
一説に、この女神のモデルは、曹植が恋焦がれていた、兄・曹丕(そうひ/187~226)の妻であったといいます。


洛神女図扇面 顧洛筆 清時代・18~19世紀

顧洛(こらく/1763~1837頃)は、杭州(浙江省)の画家で、美人図を得意としたといいます。
この扇面では、風に衣をたなびかせながら、波立つ水面の上に浮き、蠱惑的な笑みを浮かべる洛水の女神を描きます。

   

髪や耳の華麗な装飾、唇に点じられたつややかな紅など、細部まで非常に丁寧に表わされています。
『洛神賦』が、「朝もやに昇る太陽」「波間に咲く蓮」にたとえるような、曹植を虜にした女神の魅力が伝わってきます。

下って南宋時代、12世紀には、姜夔(きょうき)と小紅(しょうこう)の物語が知られています。
姜夔は、詩体の一種である詞と、笛のような楽器である簫(しょう)の名手として有名な文人でした。
美貌の歌妓(かぎ)、小紅を寵愛しており、詞を作ると彼女に歌わせ、自ら簫を吹いて伴奏するのが常であったと、仲睦まじい様子が伝わっています。

晩年、困窮した姜夔は、小紅のためを思って、しかるべき相手に彼女を嫁がせたようです。
姜夔が亡くなり、馬塍(ばしょう)という花の名所に葬られると、彼の友人が「もし小紅がここにいたら、嘆き悲しんで、馬塍の花をことごとく散らせてしまっただろう」と追悼の言葉を述べています。


春水吹簫図扇面 諸炘筆 清時代・乾隆48年(1783)

諸炘(しょきん)も杭州の画家で、18世紀ころに活躍しました。
姜夔と小紅の故事になぞらえたとして、春のうららかな一日、舟上で簫を奏でる青年と、その音に耳を傾けている乙女を描きます。

 

桃の花が咲き乱れ、思わず召使の子供がうたたねしてしまうような気候の、まさにデート日和。
簫をギターに持ちかえれば、現代日本の公園でもみられる光景かもしれません。
ひな人形のような、愛らしく上品な顔立ちがほほえましい作品です。

この他にも東洋館8室には、「LOVE♡アジア」にちなんだ作品が並んでいます。
この機会にぜひ、中国の絵画・書跡の中に、LOVEをみつけてみてください。

カテゴリ:研究員のイチオシ中国の絵画・書跡博物館でアジアの旅

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posted by 植松瑞希(出版企画室研究員) at 2019年10月04日 (金)

 

「愛」を探して、博物館でアジアの旅!

朝晩はひんやりとした風が心地よく、虫の声が秋の訪れを感じさせる今日この頃。
トーハクでは、秋の恒例企画「博物館でアジアの旅」を絶賛開催中です。皆様、もうお越しいただけましたか?



会場はトーハクの東洋館。ここではアジア各地の美術品や考古遺物を展示しています。
東洋美術ファンはもちろん、「いつも特別展を見るだけで手一杯」、「そもそも『東洋館』ってどこにあるの…?」という方にも、ぜひこの機会に足をお運びいただきたい場所です。


正門から入り、本館を前にして、右手に見えるこの建物が「東洋館」です。

「博物館でアジアの旅」では、毎年さまざまなテーマのもと、アジアの名品をご紹介してきました。
今年のテーマは「愛」! 「LOVE♡アジア(ラブラブアジア)」というタイトルのとおり、愛を題材にした多彩な作品を展示しています。


東洋館の入口でも、韓国語の「サラン」やギリシャ語の「エロス」など、「愛」を表す言葉が皆様をお出迎え。


東洋館の中はこんな感じ! フロアが複雑に入り組んでいます。

館内に足を踏み入れて、「『LOVE♡アジア』の展示室はどこだろう?」と戸惑う方がいらっしゃるかもしれません。
実は、作品が特定のスペースに集合しておらず、館内のあちらこちらに点在しているのが、「博物館でアジアの旅」の醍醐味。
まさにアジア諸国を旅するような気分で、東洋館の各フロアをのんびり散策しながら楽しんでいただきたい企画なのです。
「愛」にちなんだ作品全39件を探して館内をめぐるうち、思いもよらないところで、新たなお気に入りの一品に出会えるかも?


このピンクの札が、「LOVE♡アジア」関連作品の目印です。

どんな作品が皆様をお待ちしているか、少しだけお見せしましょう。


花鳥図屛風 朝鮮 朝鮮時代・19世紀 小倉コレクション保存会寄贈

最上階の10室に展示しているのが、こちらの屛風。
可愛い鳥たちとともに、石榴(ざくろ)や牡丹(ぼたん)などの植物が表されています。
目にもラブラブなつがいの鳥は、夫婦円満の象徴。
さらにこれらの植物は、富貴や長生きなど、おめでたい意味を持つのだとか。



「屛風」と聞くと絵画を連想するかもしれませんが、この作品は刺繡で表現されているのも見どころです。
繊細な仕上がりは、思わずため息が出そうなほど。
こうした華やかな屛風は、朝鮮時代、新婚の高貴な女性に贈られたものと考えられています。


草葉文鏡 中国 前漢時代・前2世紀

対してこちらの鏡は、ぱっと見た限りではラブラブ感が皆無……。
けれど実は、「見日之光長毋相忘(日の光あらわる。長く相忘るることなかれ)」という、君主と臣下、あるいは男女が互いを末永く大切に想うことを願う銘文が施されています。
言い回しは難しいけれど、私たち現代人も共感できるメッセージに、少し親近感が湧いてきませんか?

そして、「LOVE♡アジア」関連作品をより深く知ることができるイベントもお見逃しなく!
明日28日(土)は、月例講演会「アジア美術に見える愛の表現」を開催。
また、ボランティアによるさまざまなガイドツアーも実施しています。
*ガイドツアーの日程はこちらをご参照ください。

さらに、研究員が「愛」をキーワードにご案内するスペシャルツアー「愛を探す旅 ―添乗員はトーハク研究員―」もおすすめです。
開幕初日に行われた第1回「工芸に表現された愛」では、たくさんの方にご参加いただきました。


展示の見どころを熱くお伝えする三笠主任研究員(左)と小野塚研究員(右)


TNM&TOPPANミュージアムシアターでワヤン・クリについて解説した猪熊特別展室長。シャツの柄にもご注目を!

スペシャルツアー第2回「絵画に表現された愛」は10月8日(火)に開催します。
事前のお申込みは不要! 当日ふらっと参加できるので、お気軽にお立ち寄りください。

博物館でアジアの旅 LOVE♡アジア」は、10月14日(月・祝)まで。
いろいろな愛のかたちを探しに、この秋はぜひトーハク東洋館へ!

カテゴリ:催し物博物館でアジアの旅

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posted by 新井千尋(広報室) at 2019年09月27日 (金)

 

トーハクにいる3羽の共命鳥

現在、東洋館で開催している「博物館でアジアの旅 LOVE♡アジア(ラブラブアジア)」(10月14日(月・祝)まで)。愛をテーマにしたさまざまな作品を展示している本企画から、今回は共命鳥についてご紹介します。



共命鳥(ぐみょうちょう)は人の頭をふたつもった想像上の鳥です。

『阿弥陀経(あみだきょう)』には、共命鳥がクジャクやオウムなどとともに極楽浄土に棲み、妙なる声でさえずると記されています。

また『雑宝蔵経(ぞうほうぞうきょう)』では、ふたつある頭のうちの一方がおいしい果実を食べて満腹になったことに、もう一方が嫉妬し、その腹いせに毒の入った果実を食べてしまいます。ついにはともに死んでしまうのです。
この物語は、身体がひとつなのに、頭がふたつあるゆえに生じる感覚や思いの食い違いがさまざまな葛藤や愛憎を惹(ひ)き起こし、やがてわが身を滅ぼすという悲しい結末へと至ります。
そして物語の最後では、おいしい果実を食べた頭が仏陀、毒の入った果実を食べた頭が仏陀と敵対する弟となったと結び、仏教における因果(いんが)がめぐったことを説いています。

このように共命鳥は不思議な姿をし、そして愛憎劇ともいえる不思議なエピソードをもつ鳥として、人々に理解されてきました。
実は、『西遊記』の三蔵法師として知られる玄奘(げんじょう)も『大唐西域記』の中でネパールのヒマラヤ山脈に共命鳥がいたと記しています。玄奘はインドへ仏教経典を取りに行く途中、共命鳥を目撃したのでしょうか。

そんな共命鳥が、トーハクには3羽もいます。


重要文化財 如来三尊仏龕(にょらいさんぞんぶつがん) 中国陝西省西安宝慶寺 唐時代・8世紀

まず1羽は如来三尊仏龕の上部に彫り出された浮彫で、東洋館1階1室の「宝慶寺石仏群」のコーナーにいます。


如来三尊仏龕の上部中央に表わされた共命鳥

これは現在、片方の頭が欠損しているものの、一般的な共命鳥の姿です。ふたつの顔には男女の区別がありません。共命鳥が天空を飛ぶ姿を浮彫に表現したと考えられます。共命鳥を仏龕の上部に表わした例はこの作品のほかになく、たいへん貴重です。

そして残りの2羽は大谷探検隊が将来したテラコッタ製の共命鳥像で、いずれも東洋館2階3室の「西域の美術」のコーナーにいます。

そのうちの1羽は男の顔をもつ鳥と女の顔をもつ鳥が互いに肩を組み、合掌(がっしょう)していたと考えられます。本来の共命鳥像のように身体がひとつでもありません。ただ頭に光背(こうはい)を表わしているので、仏教の尊像であったと考えられます。


共命鳥像 中国、ヨートカン 5世紀 大谷探検隊将来品

もう1羽は人面をもつ鳥ひと組がくっついた姿をしているようです。


共命鳥像 中国、ヨートカン 1~4世紀 大谷探検隊将来品


東洋館3室にある、「テラコッタ小像及破片」を展示したこちらのケース右下にご注目ください。

これらは如来三尊仏龕に表現された共命鳥と、まったく異なるものです。
どうやら西域には男の顔を持つ鳥、女の顔を持つ鳥がそれぞれ仲睦まじい姿に表現されることがあったようです。ただこの種の共命鳥は当館が所蔵する2点しか現存していません。その点できわめて貴重な作品であるといえます。

東洋館では「博物館でアジアの旅」を開催している間、3羽の共命鳥がそろっています。これを機会にぜひ3羽の共命鳥を探してみてください。

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻博物館でアジアの旅

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posted by 勝木言一郎(東洋室長) at 2019年09月24日 (火)