最近、スマートフォンが急速に普及して、博物館や美術館にかかわるいろいろなアプリも公開されています。
スマートフォンのアプリは、いつでもどこでも手軽に楽しめるところが長所ですよね。今年1月にリリースしたiPhoneアプリ「e国宝」も、国宝や重要文化財をお手もとでじっくり楽しんでいただけるようにと開発したものです。おかげさまでこれまでにダウンロード数も20万を越えるご好評をいただいています。
「e国宝」はもともとWebサイトがありますので、スマートフォンでそちらにアクセスすることもできるのですが、実際にはいまひとつ操作しづらいところがあります。iPhoneで見たときにその問題に気がつき、これはもったいない!ということで専用アプリの開発を決めました。
作ってみて初めて気づいたのですが、パソコンの画面で見るのとはかなり違った感覚で作品が見えてきます。みなさまにもよく言われるのが「手に入れたような感じ」。自分の手のひらの中で至宝の数々を眺める楽しさは他にないものです。
そして「e国宝」といえば何といっても高精細画像。大画面に細かく描きこまれた人々を拡大したり、
観楓図屏風(部分) 狩野秀頼筆 室町~安土桃山時代・16世紀
(2011年11月15日(火)~12月11日(日)展示)
長い絵巻物をスクロールしたり、
住吉物語絵巻(部分) 鎌倉時代・13世紀
(2011年9月21日(水)~10月30日(日)展示)
自由に動かしながら、心ゆくまで鑑賞していただけます。
そして特にオススメの使いかたは、当館Webサイトのスケジュールで展示中の作品をチェックして、お目当ての作品を「e国宝」で隅々まで見たうえで、展示室で実物を鑑賞していただくという方法です。もちろん実物を見てから「e国宝」でもう一度、というのもいいですね。どんなに質の高い画像でも、実物を目にする体験にはかえられません。でも、「e国宝」を合わせて見ることで、その体験はもっとディープなものになるに違いありません。
さて、そんな「e国宝」のあれこれをお話するイベントを、お台場の「東京カルチャーカルチャー」で開催します。
「国宝日和 ~トーハクへ行くのが先か、e国宝で観るのが先か。~」
2011年11月6日(日) 12:30~15:00(12:00開場;予定)
前売り券1500円 当日券2000円(飲食代別途必要・ビール¥600など)
情報担当の研究員が博物館とデジタルについて語ります。是非お越しください。
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posted by 村田良二(博物館情報課) at 2011年10月29日 (土)
本日より、特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」(~2011年12月4日(日))が開幕しました。
今朝は開館前から多くの方にご来場いただきました。
誠にありがとうございます。
会場内では、皆様一点一点熱心に作品をご覧になっています。
また、昨日開会式が行われました。
こちらも多くの方にお越しいただきました。
この展覧会は、法然と親鸞ゆかりの名宝を一堂にあつめその全体像を紹介する史上初の展覧会です。
開催にあたり両宗派の全面的な協力を得て、様々な作品から法然と親鸞の全体像をご紹介する構成となっています。
この秋は、法然と親鸞のゆかりの名宝をぜひお楽しみいただければと思います。
ご来館を心よりお待ちしております。
*展示期間が作品によって異なりますので、ご注意下さい。
特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」作品リスト
カテゴリ:news、2011年度の特別展
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posted by 江原 香(広報室) at 2011年10月25日 (火)
みなさまは「留学生の日」をご存じでしょうか。
東京国立博物館が留学生の皆さんをご招待する特別な一日です。
今年は10月8日、土曜日に開催されます。
浮世絵の美人が、留学生の皆さんをお誘いしていますよ!
留学生のみなさんは日常生活のなかで、日本の「今」に接することはできても、「伝統」に触れるチャンスは少ないのではないでしょうか。
特に、絵画や工芸など日本の優れた美術作品の「ほんもの」を見ることはあまりないかもしれません。
季節を愛でるモチーフや精緻な技巧など、日本の伝統に触れ、日本の心を味わってほしい。
そしてなにより、緑あふれる構内で、ゆったりと心休まる一日を過ごしてほしい。
そんな願いをこめて開催するのがこの留学生の日です。
当日は、英語による展示解説や、茶道体験など、留学生のための企画も盛りだくさん!
なにやってるのかな? 興味しんしん。
脚のしびれは大丈夫でしょうか?
本館2階「日本美術の流れ」で。
ボランティアスタッフによる英語の解説
日本の学校に所属する留学生、ALT(外国語指導助手)と、その同行者(一名まで)は無料で入館できます。
あなたが留学生であればぜひお友達を誘って。
あなたの周りに留学生がいらしたら是非この情報を教えてあげてください。
東日本大震災以来、多くの留学生が日本を離れてしまったと聞きます。
こんなときだからこそ、1人でも多くの留学生にご来館いただければと願っています。
詳細は留学生の日のページをご覧ください。
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posted by 小林牧(広報室長) at 2011年09月30日 (金)
トーハクには、本館、表慶館、平成館、法隆寺宝物館、東洋館(現在休館中)、黒田記念館の展示館に加え、
黒門や校倉などの屋外展示や庭園・茶室、資料館があることをご存知の方は多いかと思います。
では、「柳瀬荘」をご存知でしょうか?
「柳瀬荘」は、埼玉県所沢市にあります。
この建物は、電力事業に生涯を捧げ「電力の鬼」といわれた実業家でもあり、茶人としても名高い松永安左エ門氏(1875-1971)の別荘だったものです。
昭和23年(1948)3月にこれまでに収集した美術工芸品とともに、柳瀬荘が当館へ寄贈され、現在は週に1回一般公開をしています。
荘内の主要建物である「黄林閣(おうりんかく)」は、天保15年(1844)、現在の東京都東久留米市柳窪の地に大庄屋の住居として建てられたものを 昭和5年(1930)に故松永氏が譲り受けてここへ移築しました。
そして昭和53年(1978)に江戸時代の民家の特色をよく示すものとして、重要文化財に指定されました。
そのほかに、書院造りの「斜月亭(しゃげつてい)」や茶室の「久木庵(きゅうぼくあん)」などが残されています。
当館では、「黄林閣」の茅葺屋根の保存のため、かまどを使った燻煙を年に3回実験的に行っています。
煙に含まれる化学成分が茅に浸み込んで害虫を駆除する働きがあります。
重要文化財 黄林閣
8月31日燻煙実験が行われたので、その様子を皆様にご紹介したいと思います。
燻煙を行う前には、消防署への事前連絡を忘れずに!火事と間違われては大変です。
そして、いよいよ作業開始。
まず、敷地内でかまどにくべる薪を集めることから始まります。
木を切り、集め、黄林閣まで運ぶ、この作業を繰り返します。大変な重労働です。
こちらがかまど。以前は毎日火が入っていたはずですが、今は、燻煙の時だけしか使用していません。
今回で5回目の燻煙ですが、燻煙史上初の4つのかまど全て使用することになりました!
当館の保存修復課と環境整備室の職員4名がひとり1つのかまどを担当します。
さあ火入れです!緊張が走ります。かまどには枯れた松葉を焚き口に詰め、新聞紙で着火します。
初めは勢いよく燃えるのですが、ここからじっくり火がまわるよう調整していきます。
今回初めて燻煙実験に参加した職員は一番大きなかまどを担当することになり、煙り出しに少し苦戦しています。
4つのかまど全てに火が入り、しばらくすると部屋中に煙がまわりました。
燻煙では、ただ薪を燃すだけでなく煙を出して天井にある茅葺を炙らなくてはなりません。
そのためには、不完全燃焼させてより多くの煙を発生させる必要があります。それがこの作業の難しいところです。
外に出てみると、屋根裏からも煙が出ていました。順調に煙が上がっていることがわかります。
ここから約3時間ほど燻し続けます。かまどのある部屋には煙がかなり充満し、目や鼻がつんとしてきます。
隣の部屋では、合間を縫って保存修復課の職員のミーティングが行われています。
3時間たち、かまどの木はほとんど燃え切り、最後の片付けに入りました。
今回の燻煙実験は夏の暑い時に行いました。特に火のそばで作業をしていた職員は
大変暑かったと思いますが、無事に終了しました。
黄林閣も上野にある文化財同様大切な文化財です。
茅葺屋根は、かつての日本の暮らしの中で守られてきたものです。
以前と同じ環境には出来なくても、これまで人の手で守られてきた文化財を今後も人の手で守っていかなくてはなりません。
様々な技術が発展してきている今、化学薬品を使う燻蒸方法も一つにあるのかもしれません。
しかしながら、古くからのやり方をうまく使いながら行うのが黄林閣には最適だと、研究員は言います。
「燻煙実験」と呼んでいる理由は、今はまだ試行錯誤中だからです。
文化財を守るために実験をくりかえし建物にとって良い方法を考えていきたいと思っています。
また、このような実験を通して、職員自らの手で文化財を守ることで、各々の意識が高まると考えており、
当館ではこれからも燻煙実験を続けていきたいと考えています。
柳瀬荘の公開日は通常毎週木曜日のみですが、10-11月は「柳瀬荘 アート教育プロジェクト」を行います。
当館と日本大学芸術学部の共催による作品展やワークショップを開催するため、公開は木曜日から日曜日となります。
天井の高い座敷など格調高い雰囲気と共に、どこか懐かしさも感じる数少なくなった武蔵野民家をぜひご覧いただきたく思います。
おまけ:燻煙後は数日燻した匂いが取れず、カメラもすっかり匂いがついてしまいました。
かまどの火を担当していたもの曰く、洗濯をしたら水が黒くなったとのことです。
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posted by 江原 香(広報室) at 2011年09月20日 (火)
特集陳列「呉昌碩(ごしょうせき)の書・画・印」はじまりました
9月12日(月)、トーハクのある上野は晴れて中秋の名月がきれいに見えました。
皆様はお月見を楽しまれましたか?
さて、平成館企画展示室では、その翌日9月13日(火)から
台東区立書道博物館との連携企画第9弾として、
特集陳列「呉昌碩(ごしょうせき)の書・画・印」の展示がスタートいたしました。
呉昌碩は、清時代末期から近代にかけて活躍した書・画・印の巨匠です。
84歳で生涯を閉じるまで旺盛な創作活動を展開、在世中から多くの人々を魅了してきました。
(手前右)墨梅自寿図 呉昌碩筆 中華民国・民国14年(1925) 青山杉雨氏寄贈 (~2011年10月10日)
呉昌碩は、石鼓文(せっこぶん)の臨書が名高く、
日本に現存する作品が多いことでも知られています。
石鼓文とは戦国時代、前5~前4世紀の石碑の古代文字で、
石が太鼓に似ているので石鼓と呼ばれています。
本展では若書きの40歳代の作品から、最晩年の傑作までをご覧いただけます。
(左)篆書般若心経十二屏 呉昌碩筆 中華民国・民国6年(1917)
(右)臨石鼓文軸 呉昌碩筆 清時代・宣統2年(1910) 林宗毅氏寄贈
臨石鼓文軸(部分)
年を重ねるごとに変化してゆく石鼓文のとらえ方は大きなみどころですが、
さらに今回は、作品だけでなく手紙などの遺品を通じて、
呉昌碩の人となりを垣間見られる点も、楽しみのひとつです。
たとえば、上海で知り合った日本人の漢学者で書・画・篆刻の創作もした長尾雨山への手紙です。
長尾雨山宛書簡 呉昌碩筆 中華民国・20世紀 京都国立博物館蔵(~2011年10月10日)
自ら作成した印を「あまりできはよくないけれどもらってください」と送る呉昌碩。
雨山が謝礼を送ったため「そんな(お金をとる)つもりで送ったのではない」と現金を送り返しています。
美しい字で綴られた手紙はみているだけでうっとりしますが、
プライベートの書簡の内容は呉昌碩やその作品をより身近にしてくれるように感じます。
本展を連携で企画している台東区立書道博物館での展示には、当館の収蔵品などの作品のほかに
現在、休館中の朝倉彫塑館が所蔵する呉昌碩胸像石膏原型なども展示されており
呉昌碩の姿をより具体的にイメージすることもできます(呉昌碩の「福耳」にもご注目!)。
お散歩をかねて両館をごらんいただけると呉昌碩の世界がより大きく広がるのではないでしょうか。
朝夕に少しずつ秋の気配を帯びてきた上野で、
ぜひ、呉昌碩の書・画・印の数々をご堪能ください。
特集陳列「呉昌碩(ごしょうせき)の書・画・印」は
平成館 企画展示室にて11月6日(日)まで開催しております。
最後に、本展にご協力いただいた皆様に感謝して。結
月例講演会「呉昌碩の書・画・印」
列品解説「呉昌碩について」
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posted by 林素子(広報室) at 2011年09月14日 (水)