本館 特別1室・特別2室
2013年5月14日(火) ~ 2013年6月16日(日)
日本は中国を除けば、世界で一番多くの中国絵画を保有している国です。なぜでしょうか。それは千年にわたる交流の中で、日本の歴史が大切に守り、伝えてきたからです。この展示では江戸時代を中心に、当時「唐絵(からえ)」と呼ばれ珍重されてきた中国絵画が、いかに伝来し、守られてきたのかを展示します。
昨年度本格的な修理がおこなわれた馬遠(ばえん)筆「寒江独釣図(かんこうどくちょうず)」には、狩野(かのう)家歴代による四幅の模写が存在しています。美しい更紗(さらさ)と三重の木箱に包まれているのは、中国にはない日本独特の保存形式です。これらからは先人たちがこの作品を、いかに大切に扱ってきたのかを知ることが出来るでしょう。作られたのは中国でも名品は、長い歴史の中で次第に作りかえられ、日本文化の一部分となっていったのです。
これらの付属品は普段は展示されることはなく、ほとんどが初公開となります。また同時に鑑定に関する書物も展示することで、江戸時代の日本人がどのように中国絵画を研究してきたのかも展示します。
今年は1月に東洋館がリニューアルオープンしました。この素晴らしいコレクションも、このような日本人の歴史がアジア美術を集めてきた集大成であり、決して偶然の産物ではなかったことも、感じていただけるでしょう。先人たちの眼を通じて、きっと中国絵画の新しい姿が見えてくるに違いありません。
担当研究員の一言
作品は長い生命を紡ぎます。作った人も大事ですが、伝えた人も文化も大事だと思うのは、私たちもその「伝える社会」の一部だからです。ほとんど公開されていなかった付属資料の展示からは、名品を伝えようようした人々の努力や喜びまでもが伝わってくると思います。/塚本麿充