本館 14室
2011年10月4日(火) ~ 2011年12月4日(日)
陶磁器を製作するとき、焼成不良品や窯道具は窯場に廃棄されます。窯址出土の陶片は、産地や製作技法の解明に欠かせない研究資料です。実物に即した実証的な陶磁史研究は、窯址の調査とともに進展したと言っても過言ではありません。
一方、陶磁器は化学的に安定しているため、土中に埋もれても当初の色や艶を保ちます。窯址出土品にはしばしば伝世品にみられない器形や文様、技法の陶片がみられますが、これらは時とともに忘れ去られていった「歴史の断片」といえるでしょう。
東京国立博物館には数カ所の窯址出土陶片が収蔵されていますが、これまでまとまって公開される機会がありませんでした。今回は元杭州領事の米内山庸夫(よないやまつねお)氏によって採集された中国越州窯址(えっしゅうようし)出土陶片、南宋郊壇下官窯址(なんそうこうだんかかんようし)出土陶片、元京都市陶磁器試験所研究員の水町和三郎(みずまちわさぶろう)氏によって採集された肥前古窯址(ひぜんこようし)出土陶片、蜷川第一(にながわはじめ)氏らによって採集された御室仁清窯(址(おむろにんせいようし)出土陶片をご紹介いたします。陶磁器のかけらが語る歴史の実像に思いを馳せてください。