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心惹かれる「陶片の美」

東京国立博物館としてはちょっと毛色の変わった、陶片のみの展示をいたします。

「せともののかけら」に心惹かれるのは何故でしょうか?

遺跡から出土する陶片は、産地や製作技法、製作時期や流通経路などを研究するために欠くことのできない資料です。
そればかりでなく、陶磁器は化学的に安定して堅牢な性質であるため、土中でも朽ち果てることなく、当初の色や輝きを保ちます。
東南アジアでは、はるばる海を越えて運ばれてきた磁器が割れたのちも、アクセサリーなどに加工することが行われています。

陶片は見る者の想像力に訴えかけます。
私たちがよく知っている器種の一部であることもあれば、未知の陶磁器の一部位であることもあります。
窯址に打ち捨てられた小さな陶片が、逆に今日残されているモノの意味を問いかけてくるのです。

このたびご紹介する米内山庸夫氏採集の南宋官窯址出土陶片は、謎に満ちた南宋官窯の実像解明に大きな役割を果たしました。

南宋官窯址出土陶片 南宋官窯 中国 浙江省杭州市郊壇下官窯址出土 南宋時代・12~13世紀


水町和三郎氏採集の唐津焼の陶片は、唐津焼の歴史をめぐってかつて大論争を引き起こしました。

道園窯址出土陶片(肥前窯址出土陶片のうち) 唐津 伊万里市松浦町提川字道園出土 安土桃山~江戸時代・16~17世紀


蜷川第一氏らによって採集された御室窯址出土陶片は、野々村仁清の作陶活動の知られざる一面に光を当てました。

御室窯址出土陶片 御室窯 京都府京都市右京区御室竪町出土 江戸時代・17世紀


小さな陶片が語る歴史の実像に、是非耳を傾けてみてください。


特集陳列「陶片の美」は2011年12月4日(日)まで。
本館14室でご覧いただけます。
 

列品解説「肥前の古窯址出土陶片」

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 今井敦(博物館教育課長) at 2011年10月03日 (月)