日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」では、1月15日から31日の間、平日昼に現在ご活躍中の人間国宝の方々によるギャラリートークを実施しています。
特別展会場に展示されている作品1点を選んで、その作品や作り手に関するお話、そしてご自身の作品づくりのことなどをお話しいただきます。
1月23日(木)森口邦彦さん(重要無形文化財「友禅」保持者)のギャラリートークの様子。
実は、トーハクの特別展会場でのギャラリートークは今回が初めての試みです。
初回、15日(水)に実施された中島宏さん(重要無形文化財「青磁」保持者)のトークの折は、まさに歴史的瞬間に立ち会ったようなドキドキ感がありました。
人間国宝自らから紡ぎだされる数々の「言葉」や「物語」は、作品の向こう側に広がる新しい一面を教えてくれます。
特別展会場に並ぶ作品を生み出した人間国宝は、いまご活躍の方々にとって、多くは「師」であったり、また「家族」であったりします。
そうした先人の近くで作品づくりや思いを体感していた人ならではのお話は、ここでしか聞くことのできない、大変貴重なものです。
21日(火)にお話をされた佐々木苑子さん(重要無形文化財「紬織」保持者)は、「先人があってこそ、今の私がある」と、感謝の言葉を表されていました。
伝統工芸は連綿と現在まで育まれ、そしてこれからまた未来へと続いていく。そのことをあらためて実感できる、そんなギャラリートークです。
作品を「目」で見て、人間国宝の声を「耳」で堪能する。
ちょっとぜいたくな平日お昼のひととき、ご参加をお待ちしております!
現役人間国宝によるギャラリートーク
1月31日(金)までの平日 13:30~14:00
≪今後の予定≫
1月28日(火)奥山峰石 重要無形文化財「鍛金」保持者
1月29日(水)原清 重要無形文化財「鉄釉陶器」保持者
1月30日(木)林駒夫 重要無形文化財「桐塑人形」保持者
1月31日(金)伊勢崎淳 重要無形文化財「備前焼」保持者
会場:東京国立博物館 平成館特別展示室第3・4室
参加費:無料(ただし、本展覧会の観覧券が必要。)
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、2013年度の特別展
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posted by 横山梓 at 2014年01月27日 (月)
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は小山(おやま)研究員といっしょに「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」を見に行くほ。
研究員ならではの展覧会の見どころを教えてくださいだほー!
小山研究員(以下O):こんにちはトーハクくん!展覧会の見どころね。
この展覧会は、国宝や重要文化財といった古い名品と人間国宝の作品を隣り合わせて展示しているところがポイントなの。
(左)重要文化財 奈良三彩壺 奈良時代・8世紀 九州国立博物館蔵
(右)三彩花器「爽容」 加藤卓男作 平成8年(1996) 東京国立博物館蔵
ボクの勝手なイメージだけど、「古い名品!」って言われるちゃうと、やっぱりそっちのほうがなんとなくスゴイ感じがしちゃうんだけど。
O:そうですねー。
えっ!
(言い切っちゃったほ!)
O:だって昔の人は制作にかけた時間も素材も全然違うんだもの、仕方のないことでしょう。
ひとつの作品をつくるためだけに生き、色んな技法を試す。そういう時間と環境こそが良い作品を生んだのよね。
ほー!
(小山さんはかわいいお顔なのに、コメントに男気があるほ!)
O:昔の作品はやっぱりすごい。パワーがある。
昔の日本人、つまり私たちの祖先はこんなにすごいんだってことを見てほしいという気持ちもあるの。
そして現代の作家さんたちが、ここまでがんばって発展させてきたこと、これもまたすごいことね。
こういう作品から、たくさんエネルギーをもらってほしいわ。
しっかし、人間国宝かあ…。なんだか仙人みたいなイメージだほ。
小山さんは図録の執筆のために人間国宝さんにインタビューをしていたけど、実際にお話してみてどんなひとたちだったほ?
O:そうねえ、雲の上の人っていうイメージを持っている方も多いでしょうね。
でも実際はそうではないの。
どんなに偉いひとだって、皆最初はゼロからスタートするでしょ?
スタート地点があって、寄り道もして、歩む道を選択しながらやっとここまで来たの。
悩んで悩み抜いて試行錯誤して、到達した結果が人間国宝というだけの話。
今だって姿勢は変わらず、作品をつくるために日々悩んでいらっしゃるわ。
そうか、人間国宝も人間なんだね!当たり前のことだけど!ちょっとムネがアツくなったほ!
O:私もインタビューをしていてアツくなったわ。
作品制作も、伝統をどこまで引き継ぎ、どこまで自分の表現を出すのか、自分なりの道を見出さないといけない。その作業はとても大変なことよ。
それを粘り強く続けられたからこそ人間国宝になれるのね。
粘り強く続けられる。ひとはそれを才能と呼ぶのだほ。(キマッタほ!)
O:うふふ、でも才能だけでは人間国宝にはなれないのよ。
ぐはっ!(かっこわる!)
O:努力、運、人との出会いも大切ね。
でも逆にいうと、いま作品の制作に携わる全ての人たちにも、人間国宝になれる可能性があるってことよ。
私は、現代人が昔の人に劣っているとは決して思わないの。
昔の日本人が、こんなに素晴らしい作品を作っていたのだということを糧にして、現代の人にはそれ以上の作品をつくってもらいたいなと思います。
では究極の質問だほ!
もし小山さんが、世紀の美術泥棒・キャッツアイだったら何を盗みたいほ?
O:あらあらキャッツアイ?そうね…ひとつだけ選ぶのは難しいわね…
あのね、「いいもの」っていうのは古さを感じさせないものなの。
現代まで残っているのには理由があるのよ。(キラーン☆)
うわっ!いま小山さんの目が光ったほ!
O:そう!私は小さい頃からキラキラしたものが大好きだったの。
宝石の広告チラシを切り抜いて遊んだりしてたなあ。
ということで、私はコレを選びます!
截金彩色飾筥「花風有韻」(きりかねさいしきかざりばこ かふうゆういん)
江里佐代子作 平成3年(1991) 文化庁蔵
えっ?!小山さんは染織が専門なのに、お着物は選ばないんだほ?
O:悩んだんだけどね。
毎日同じ服を着る人っていないでしょ?だからお着物をどれかひとつって言われると困っちゃうの。
こういう作品だったら毎日手元に置いて眺めたり、中に自分の大切なものを入れたりして楽しめるじゃない?
にゃるほ。小山さんはこの作品のどういうところが好きなんだほ?
O:キラキラしていて本当に綺麗でしょう?
これは截金(きりかね)って言って、細く切った金箔を杉の箱に施しているの。
O:見て!光に当たって、まるで金糸みたいにきらめいて見えるでしょ?照明も工夫したのよ。
ほー、キラキラの線が折り重なってビューティほー!
O:もしキャッツアイだったら、暗闇の中で懐中電灯をつけて、パッとこのハコが目に映った時、きっとトキメクだろうなあ!
♪みーつめるキャッツアイ かーふうゆういん きーんいろにひかーるー
O:トーハクくん、古い歌知ってるのね。
えへへ。5歳だけどものしりだほ。
でもこうやってガラスケースに入っていると、「美術作品」として見てしまうけど、「どれが欲しいかな」とか「自分だったらどう使うかな」とか、そういう風に見てもいいんだほ?
O:もちろん!そういう風に見てもらいたいわ。
だって使う人あっての工芸だもの。作り手と使い手、双方が一緒に工芸を盛り立てて、お互いに成長していくの。
そのことを心に留めて展覧会を見ていただけたらいいなと思ってます。
そうか、使うひとがいないと、作るひともいなくなっちゃうもんね!
使うひとも大事な役割なんだってことが、とってもよくわかったほ!
小山さん、アツいお話をどうも有難うございました!
小山弓弦葉(おやまゆづるは)工芸室主任研究員。専門は染織です。
大好きな作品(友禅訪問着「羽衣」 森口華弘作 昭和59年(1984) 滋賀県立近代美術館蔵)の前で。
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posted by トーハクくん at 2014年01月22日 (水)
いよいよ明日、「クリーブランド美術館展―名画でたどる日本の美」と、日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」が開幕します。
それに先立ち、本日は2つの展覧会の開会式・内覧会が行われました。
ご来場いただいたお客様の数は、午前中に行われた報道内覧会とあわせると1500人近く。
皆様の大きな期待を受けて、好発進となりました。
クリーブランド美術館からフレデリック・ビッドウェル館長が出席され、
「今回の展覧会がクリーブランド美術館と東京国立博物館の長い交流の成果であり、クリーブランドの市民は、彼らの愛するクリーブランドの日本美術コレクションを日本の皆様に見ていただけることを、とても楽しみにしている」と挨拶されました。
フレデリック・ビッドウェル クリーブランド美術館長
展覧会の入口では、雷神さまがお出迎え。
雷神図屏風 「伊年」印 江戸時代・17世紀 クリーブランド美術館蔵
ユーモラスな顔に思わずにっこりしてしまいます。
白い体が金の地から浮かび上がって見えることにもご注目ください。実はこの作品には、新しい照明が使われています。
照明に関しては、本ブログにて改めて解説いたしますのでご期待ください。
大画面が並ぶ、「花鳥風月」「物語絵画」のコーナー
この展覧会では、日本美術における人と自然の表現に焦点をあてながら、日本美術の流れをご覧いただきます。
そんなコンセプトが成り立つのは、クリーブランドの日本美術コレクションが体系だったものだから。
市民の皆さんが誇りに思っておられるというのもうなずけます。
次に日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」についてご紹介します。
歴代人間国宝104人の名品がずらりと並びます。これだけ揃うと大変豪華です。
この展覧会の最大の魅力は、国宝・重要文化財などの名品と、人間国宝の作品が並べて展示されることです。
名品の造形が人間国宝の作品にどのように影響したのかを見比べていただくことができます。
改めて、人間国宝の作品には迫力があります。そして、古典の名品が守り伝えられてきた理由も分かります。
両展ともに、新春を飾る特別展にふさわしく、華やかで見ごたえのある作品が揃いました。
まったく違うアプローチの2つの展覧会ですが、共に日本の美の再発見を目指します。
どうか、会期中早いうちにご来場ください。
今後、本展覧会の見どころについて研究員がご紹介してまいります。どうぞおたのしみに!
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posted by 小林牧(広報室長) at 2014年01月14日 (火)
皆様、明けましておめでとうございます。
平成26年、2014年の新年を皆様とともに寿ぎたいと思います。
今年は午年です。午は正午という言葉に示されるように十二支の中間に当たります。動物は「馬」がわりあてられています。
馬は家畜として親しまれ、競馬用のサラブレッドは特に有名です。(広辞苑より)
1月2日からの「博物館に初もうで」での馬に関わる展示「博物館に初もうで―午年によせて―」を是非お楽しみ下さい。
今年も1月15日からの「人間国宝展」「クリーブランド美術館展」をはじめ様々な企画を用意しております。
皆様が日本の文化や伝統、美術に親しんでいただき、楽しめる博物館となるよう努めてまいります。
どうぞ今年もトーハクをよろしくお願いします。
館長 銭谷眞美
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posted by 銭谷眞美 (館長) at 2014年01月01日 (水)
2013年もあとわずか。
今年もトーハクの一年を振り返ってみましょう。
新年も1月2日から開館したほ!
東洋館リニューアルオープンもこの日だったほ。
ビジュアルイメージキャラクターの井浦新さんを迎え、東洋館リニューアル開館記念式典が行われました。
洗練された展示空間が多くのお客様でにぎわいました。
お正月恒例の獅子舞や和太鼓に加え、華麗なアジアの舞も披露されたわね。
東洋館プロモーションビデオのひろしとユリの物語。 キュンときたんだほ~。
あ、私もあれ、ダーイ好き! 井浦さんにご登場いただいた広告ビジュアルが、第80回毎日広告デザイン賞 準部門賞をいただいたことも忘れられない思い出ね。
1月は特別展「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」、「書聖 王羲之」も始まったほ。
円空仏が立ち並ぶ、森のような空間が心地よかったほ~。
王羲之展では、蘭亭図巻がアニメのように動く映像が楽しかったほ~。
春は恒例の「博物館でお花見を」。庭園の桜、作品に咲く桜をお楽しみいただきました。
4月からは特別展「国宝 大神社展」も始まりました。普段、なかなか拝見できない神像をたくさん見ることができました。
国宝「七支刀」(奈良・石上神宮蔵)がかっこよかったほ!
「七支刀」は大人気で展示期間が延長されたんだほー。
夏の特別展はわたしも大好きな書の展覧会、「和様の書」でした。
この1089ブログでも、書の楽しみ方やワークショップの模様など盛りだくさんでした。
トーハクWEBでは投票「美文字選手権」も実施。やっぱり三跡が上位独占でしたね。
7月1日からは、トーハク広報室公式のTwitter、facebookを開始したほ!
ぼくもアイコンに登場しているので、ぜひぜひみてほしいんだほ!
そして秋は、「秋の特別公開」、9月28日(土)には「スペシャルイベントデー」を開催。
酒井抱一の「夏秋草図屏風」と「四季花鳥図巻」の美しさにうっとり。
特別夜間開館では、インドネシアのジャワガムランと舞踊、アジアンビアガーデンで秋の夜長を満喫いただけたのでは?
9月は、黒田記念館別館に上島珈琲店がオープンしました。
ちょうどこの時期、人気ドラマ「半沢直樹」でトーハク本館の大階段が登場。ロケ地めぐりで話題になったほ!
(トーハクくんったら、いつの間に…)
10月からは、特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」、「京都―洛中洛外図と障壁画の美」が開催されました。
東洋館リニューアルオープン記念の上海博物館展では、まさに中国絵画の至宝が一堂に会し、小規模ながらも充実した内容の展覧会でした。
京都展は、国宝・重要文化財に指定されている7件の「洛中洛外図屏風」を見比べて楽しめたほ。
4K映像や二条城の空間を再現した斬新な展示にも圧倒されたほ~!
龍安寺の4K映像は、テレビ業界で権威あるATP賞の特別賞を受賞しました!
プロジェクションマッピングも盛り上がったわね。
さて、トーハクくん、来年は…?
本館、正門のリニューアルがあるほ!
特別展も魅力的なラインナップだほ~!おいしそうな白菜も(じゅるる)…。
もう、トーハクくんは食べることばかり…。
お正月は1月2日(木)から開館します。
「博物館に初もうで」でお楽しみください。「新春特別公開」では、人気の国宝「松林図屏風」も展示されますよ。
今年も一年、お世話になりました。
2014年も、トーハクをよろしくお願いいたします!
カテゴリ:news
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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2013年12月30日 (月)