トーハクではこの秋、特別展「中国 王朝の至宝」(10月10日(水)~12月24日(月・休)平成館)を開催します。
6月21日(木)に報道発表会を行い、展覧会の見どころや出品作品をご説明しました。
この展覧会ワーキンググループのチーフ、学芸企画部長の松本伸之より、展覧会の概要説明
中国の王朝に関する展覧会は、過去に何度も開催されていますが、今までの中国展と違うのは、夏から宋の時代にわたる中国歴代の王朝の都・中心地域に焦点をあて、それぞれの代表的な文物を対比・対決させながら展示する、という点です。
たとえば…
中原の「夏(か)・殷(いん)」 VS 四川の「蜀(しょく)」!
夏・殷 代表! VS 蜀 代表!
金製仮面(きんせいかめん) 爵(しゃく)
殷~西周時代・前12~前10世紀 殷時代・前16~前15世紀
四川省成都市金沙遺跡出土 河南省鄭州市商城遺址出土
成都金沙遺址博物館蔵 鄭州博物館蔵
精緻で力強い造形の青銅器や玉器を作るなど、中国文化形成の礎となった「夏・殷」。
そして、人の姿をした神や動物を崇め、金を多用した高度な文化をもつ「蜀」。
インパクトのあるビジュアルが特徴の中国初期王朝が、しのぎを削ります。
また、こんな作品対決も。
南方の「楚(そ)」 VS 中原の「斉(せい)・魯(ろ)」 !
楚 代表! VS 斉・魯 代表!
羽人(うじん) 犠尊(ぎそん)
戦国時代・前4世紀 戦国時代・前4~前3世紀
湖北省荊州市天星観2号墓出土 山東省臨湽市商王村出土
荊州博物館蔵 斉国故城遺址博物館蔵
土着的な信仰を色濃く残し、神秘的な姿をした神や獣を崇め、独自の文化を展開した「楚」。
諸子百家(春秋戦国時代の学者・学派の総称)といわれる様々な思想・文化が花開いた「斉・魯」。
いずれも魅力的な文物ばかり。
1089ブログでも、これから展覧会の魅力や作品をご紹介してまいります。
また本展覧会に関連して、NHKスペシャル「中国文明の謎」を今年秋以降に放映予定です。当日は、本番組ナビゲータ、俳優の中井貴一さんにお越しいただきました。
寄ったところをもう1枚。
か、かっこいいです…。番組ロケへの意気込みや、展覧会への期待などをお話いただきました。
この秋開催する特別展「中国 王朝の至宝」、どうぞご期待ください!
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posted by 小島佳(広報室) at 2012年07月06日 (金)
トーハクくん、6月19日(火)は私たちの東京国立博物館がお休みなんだって。
ほぉー? 聞いてないほー。
博物館も年に一回、健康診断が必要なのよ。
なるほど・・・。
じゃー僕は、平成館の1階ギャラリーで土偶先輩たちと、うたた寝でもしてるほ。
あのイスの座り心地は最高なんだほー。
もう、しょうがないわね。
というわけで。
2012年6月19日(火)は設備保守点検のため全館臨時休館いたします。
なお資料館は、2012年6月18日(月)~6月19日(火)の2日間臨時休館いたします。
皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしますが、ご理解いだけますようよろしくお願い申し上げます。
(東京国立博物館 広報室)
月曜、火曜は休んで、また20日(水)からまってるほー。
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posted by ユリノキちゃん&トーハクくん at 2012年06月15日 (金)
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」 入場者50万人達成!
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」は、2012年6月8日(金)午後、50万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。
50万人目のお客様は、品川区よりお越しの大橋美里さんです。
お母様の秋山佳子さんと一緒にお越しくださいました。
記念品として、ボストン美術館 日本美術保存修復家 フィリップ・メレディス氏よりオリジナルグッズの「雲龍図時計」を、東京国立博物館長 銭谷眞美より本展図録を贈呈いたしました。
左から、フィリップ・メレディス氏、大橋美里さん、秋山佳子さん、銭谷眞美館長
2012年6月8日(金) 東京国立博物館平成館にて
大橋さんは学生時代に美術を専攻されていたとのこと。展覧会にはよく足を運ばれるそうで、「フィリップさんが修復された雲龍図や、絵巻を見るのが楽しみ」とお話くださいました。
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」は、会期終了まで本日ふくめ残り2日となりました。
今週末はお天気が心配ではありますが、ご来館を心よりお待ちしております。
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posted by 広報室 at 2012年06月09日 (土)
一番最初の展示室には、美しい仏画が並んでいますが、中でも一番奥の壁に展示されている一枚は抜きんでて貴重な作品とのこと。
『至宝とボストンと私』第9回目は、東洋室研究員の塚本麿充(つかもとまろみつ)さんと、もと東大寺の法華堂に伝わったという奈良時代の仏画、法華堂根本曼荼羅図(ほっけどうこんぽんまんだらず)を見てゆきます。
法華堂根本曼荼羅図
奈良時代・8世紀
『仏画の根本。だから根本曼荼羅。』
広報(以下K):いきなりですが、この作品はどうして貴重なのか教えてください。
塚本(以下T):8世紀の仏画作品が、日本にどれくらいあるかご存知ですか?実はほとんど残っていないのです。さらに、8世紀の山水画がどんな風だったのかが分かる、世界でただ1つの作例ですので、本当に奇跡の一品と言っても過言ではありません。
この作品には大きく2つの魅力があります。
1つ目は仏様の端正なお顔立ち。
気品があり、若々しくハンサムで、胸がキュンとしてしまいます!
K:キュンですか…(-_-;)
T:これより後の時代になると、いわゆる「仏頂面」という、仏様のようなお顔になっていってしまうのですが。
K:仏様ですものね。
T:この作品が制作された当時、8世紀の日本は、東大寺などが創建され、「新しい国をつくるぞ!」という理想に燃えた時代でした。挫折を知らない、いわばロマンチックな時代です。
まさに国が盛り上がらんとするエネルギーに溢れていました。
K:行け行けどんどん!という勢いがあったのですね。
T:そうです。この作品からは、そういう力が感じられます。
体つきもピチピチして若い感じがするでしょう?
K: 確かに、はつらつとした印象をもちます。
2つ目の魅力はなんですか?
T:背景の山水画がすごいんです。
法華堂根本曼荼羅図 右上部分
山々の稜線には緑青が使われており、色鮮やかであったことを彷彿とさせます。
この絵には、インドの霊鷲山(りょうじゅせん)という山で説法をするお釈迦様が描かれています。
当時の中国では、山それ自体を神聖なものとする憧れがありますので、お釈迦様が説法していらっしゃるこの山は、中国人にとってはただの山ではありません。
この作品が、その後発展する中国山水画のスタートだったといえます。
K:なるほど。第3章「静寂と輝き~中世水墨画と初期狩野派」の内容とリンクしますね。
でもどこにどのように山水画が描いてあるのかよく見えません…。
T:8世紀に描かれている作品ですから損傷も激しくて、はっきりと見ることは難しいのです。どうぞ心の目で見てみてください。
K:はっ!説法を聞いている気分になってきました!
(作品の左隣に、赤外線調査をした時の画像がありますので、山水画はそちらをご覧ください。)
ところで、「根本曼荼羅」の「根本」とはどういう意味なのですか?
T:作品の背面に、この作品が「法華堂根本曼荼羅図」と称される、という内容が書かれた銘文があります。
当時のお坊さんは、出来れば皆インドに行きたいですよね。しかし実際には行くことは出来ません。
でもこの作品をかければ、お釈迦様に出会えるわけです。鎌倉時代にはこの作品を写した作品もつくられます。
南都(奈良)の仏画の規範、「根本」となった作品だから「根本曼荼羅」というのです。
K:仏画の根本、というわけですね!貴重とおっしゃる意味がようやく分かりました。
T:奈良・大和文華館の初代館長、矢代幸雄氏はこの作品を見て、「磁石が鉄を引き付けるように、この作品に吸い寄せられてしまう」という言葉をのこしました。
その気持ち分かるなあ!あぁ、この作品をこんなに間近で見られるなんて、なんて素晴らしいんだろう!私は今回初めて本物を見たのですが、わしづかみにされましたね、キュンとしてしまってほんとに…(以下省略)。
『奇跡の一品』
K:しかし、それほどまでに貴重な作品なのに、手放さざるを得なかった当時の日本の状況がしのばれます。
お客様のご意見でも、「こんなに素晴らしい作品が、今はアメリカにあるなんて」というご感想をよく目にします。
T:ここで重要なことがあります。
ビゲローがこの作品を購入したのは、たまたま安かったから買ったのではありません。この作品が、ビゲローやボストンにとって必要だったからです。
その地域の人がどういうものを守り、どういう文物を持っているのか、作品の収集は地域の人のアイデンティティーを形作ることにもつながります。
今もボストン美術館に行くと、たくさんの人が東洋美術の展示室で熱心に作品に見入っている姿に出会います。東洋の美術や、それによって表されている何かが、アメリカの社会にとって必要なものだったんだなあ、と思います。
奈良時代から明治の世までこの作品を守り続けた東大寺の精神もすごい。
そして近代、この作品をボストン市民として受け入れ、日本美術に敬意をはらい、後世に残そうとしているボストンの人たちの精神もまた素晴らしいと私は考えます。
K:改めて、ボストンの皆様に感謝するとともに、この作品が数奇な運命をくぐりぬけて現代に残っている奇跡の一品なのだということを、強く感じました。
塚本さん、どうも有難うございました。
専門:東洋仏画 所属部署:東洋室
『至宝とボストンと私』はこれで終了です。どうも有難うございました!
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」は6月10日(日)まで開催しています。奇跡の一品、ぜひお見逃しなく!
All photographs © 2012 Museum of Fine Arts, Boston.
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、2012年度の特別展
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posted by 小島佳(広報室) at 2012年06月08日 (金)
仏像の前では皆真剣な表情で、時間を忘れて仏像と対峙します。慌しい日々を過ごす私達にとって、大切な時間といえるかも知れません。
『至宝とボストンと私』第8回目は、教育普及室長の丸山士郎(まるやましろう)さんと、快慶作 弥勒菩薩立像(みろくぼさつりゅうぞう)を見てゆきます。
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」弥勒菩薩立像のコーナー
『ヒントは銘文のなかに』
広報(以下K):最近、若い女性の間でも「仏像好き」が増えてきているようですね。
「仏像が見たくて、展覧会に来ました」というお客様も多くいらっしゃいます。
この展覧会で、メインの仏像作品といえばやはり…
丸山(以下M):快慶作 弥勒菩薩立像です。
弥勒菩薩立像
快慶作 鎌倉時代・文治5年(1189)
K:展覧会のチラシにもご登場いただいた、麗しい仏像ですね。
どういう作品なのか教えてください。
M:海外にある日本美術の名品は多くありますが、仏像となるとあまり多くはありません。その中ではとても優れた作品といえます。
12世紀は、内乱が続き世が乱れたことで、多くの人々が絶望の淵にたたされていました。そういう時代に、正しい教えを説き衆生を救うとされた弥勒菩薩に信仰が集まったのです。
この像は、鎌倉時代を代表する仏師、快慶がつくりました。現存する快慶作品の中で最も年代が古い像、つまり快慶が最も若い時につくった像です。
そのためか、快慶独特の表現よりも顔つきがふっくらしていて、表現にういういしさが残っているように見えます。
K:快慶独特の表現というのは、どんな特徴があるのでしょうか?
M:知的な表情、細身の体型、絵画的に処理された衣文、すこしめくれ上がったような上唇です。
K:ところで、最も若い時につくったと、どうして分かるのですか?
M:明治39年にこの像を修復した際、像内から納入品が出てきました。
弥勒菩薩立像 像内納入品(弥勒上生経、宝篋印陀羅尼)
快慶奥書 鎌倉時代・文治6年(1190)
この経典の奥書には、快慶が作ったということが記されていますのでご注目ください。
快慶は、ある時からすべての作品に快慶の名前を残しています。そのため、史料に恵まれた仏師といえます。
K:きらきら輝いていて、保存状態も良さそうですね。
M:表面の金色は近年に修復されたものですが、全体的に状態は悪くないです。
快慶は若い頃から腕が良く、高い技術をもっていたためか、お像は今も壊れずに丈夫に残っています。史料としての意味でも大変重要な作品で、作風も優れているので、後世に残したい逸品です。
『端正、知的、流麗』
K:この作品の見どころはどこですか?
M:やはり、整った端正なお顔だちでしょう。切れ上がった目、小さめの口。ちょっとクールで、知的な印象を与えます。
K:目の中がうるんでいるように見えます!
M:玉眼です。仏像の目の部分をくり抜いて、内側から凸レンズ状の水晶を当てています。仏像が生きているかのように見せる工夫です。この像がつくられる30~40年前から、仏像に玉眼が用いられるようになり、この頃には一般的になっていました。
フォルムが美しい仏像ですね。複雑な形ではないのですが、上手いな!と思います。なかなか出来る仕事ではありません。
K:丸山さんがこの作品を最初にご覧になった時、どんな印象を持ちましたか?
M:資料の写真で見ていたとおり、まとまりの良い作品だと思いました。ぴちっとした肉づきや、はつらつとした感じがとても良いなと。
K:丸山さん、なんだか嬉しそうですね。「快慶の作品大好き!」という感じが伝わってきます。
M:大好きです。お顔の感じが全体的に好きなんです。
運慶の陰に隠れてフィーチャーされない存在ですが、もっと人気が上がっても良いのではと思います。
K:今回の展覧会で、きっとファンがもっと増えたと思います!丸山さん、どうも有難うございました。
専門:彫刻 所属部署:博物館教育課 教育講座室長
次回のテーマは「法華堂根本曼荼羅図」です。どうぞおたのしみに。
All photographs © 2012 Museum of Fine Arts, Boston.
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、彫刻、2012年度の特別展
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posted by 小島佳(広報室) at 2012年06月07日 (木)