最近注目の浮世絵師「歌川国芳」
歌川国芳は最近注目の浮世絵師。
10年以上前のこと、朝日新聞社から出版された「浮世絵を読む」という6冊シリーズの本を制作するために、浮世絵研究の泰斗浅野秀剛大和文華館館長と近世都市史研究の第一人者吉田伸之東大教授のもとで勉強会を開いたことがありました。
浮世絵師6人を取り上げるのですから、「六大浮世絵師」と呼ばれる、鈴木春信・鳥居清長・喜多川歌麿・東洲斎写楽・葛飾北斎・歌川広重を選ぶのが普通ですが、上品で健康的な美人画で知られる清長ではなく、こともあろーに、アウトロー国芳を選ぶことになったのです。
その首謀者は、身分的周縁論を展開している吉田先生、そして子供の頃から国芳びいきの私です。
その席にいた浅野先生は千葉市美術館で「鳥居清長展」(2007年4月28日(土)~2007年6月10日(日))を開催しているのですが、やはりこれに賛同。
新六大浮世絵師での出版が杯を手にしながら決まったのです。
そして今年は、没後150周年にあたり各地で展覧会が開かれ大入りの人気のようです。
私が子供の頃から国芳を知っていたのは、浮世絵少年だったからではありません。
弘前生まれの私は、夏の祭りねぷたをこよなく愛していました。
そこに登場するのが三国志・水滸伝の英雄たち。
小学生が『三国志』の関羽や張飛、『水滸伝』の花和尚や九紋竜史進、そして張順を見つけて喜ぶような土地なのです。
今でこそゲームの重要キャラクターとして子供にも人気がありますが、弘前は江戸の名残がまだあったのです(というより、ねぷたという祭りが江戸感覚の名残なのです)。
その手本になったのが、北斎やその弟子の「三国志もの」、そして国芳の描いた「通俗水滸伝豪傑百八人一個」のシリーズ。
今回展示の張順の水門破り図もかつて祭りで見たことがあります。
通俗水滸伝豪傑百八人・浪裡白跳張順 歌川国芳筆 江戸時代・19世紀
(~2011年10月16日(日)展示)
この図柄は、火消しに好まれたようで、火消し半纏の内側にも描かれました。
現在も刺し子半纏やスカジャンで好まれているとのこと、男気の象徴でしょうか。
もっともこの図は、刺青の下図としてもよく利用されています。
こちらはなかなか見比べにくいのでしょうが、国芳の版画は、本館10室(浮世絵と衣装―江戸(浮世絵))でじっくりとご覧ください。
なお、今回の展示(~2011年10月16日(日)展示)と次回の展示(2011年10月18日(火)~11月13日(日))は、国芳の作品を中心に構成しております。
今回は、武者絵のほかに美人画を加え、
山海愛度図会・つづきが見たい 歌川国芳筆 江戸時代・19世紀
(~2011年10月16日(日)展示)
次回は風景画を中心にしての展示です。
東都御厩川岸之図 歌川国芳筆 江戸時代・19世紀
(2011年10月18日(火)~11月13日(日)展示)
どちらもお見逃しなく!
カテゴリ:研究員のイチオシ
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posted by 田沢裕賀(絵画・彫刻室長) at 2011年09月27日 (火)