本館 14室
2008年11月18日(火) ~ 2009年2月1日(日)
鉄あるいは銅、銀、四分一(しぶいち:銀と銅の合金)などの金属で、龍、蛇、鳥、魚、海老、蟹、昆虫などを 写実的に作り、しかもそれが本来的に持っている体や手足などを動かすことができる機能までも、実際に動かせるようにしたものを自在置物と称しています。龍は胴をくねくねと動かすことができ、脚や爪も曲げたり、伸ばしたりすることが可能です。鳥は翼の開閉、頸をまわすことができます。また、昆虫はクワガタや トンボ、蝶など多くの種類がありますが、すべて本物と同じように動かすことが可能です。
自在置物で年号を記したものでは、正徳3年(1713)銘のある明珍宗察(みょうちんむねあき)の龍が最も古く、ほかに宝暦3年(1753)銘の明珍宗安(みょうちんむねやす)の蝶があり、こうした作品が江戸時代中期には製作されていたことが知られます。明珍は甲冑師で、とくに鉄の鍛錬と打出技術に長じており、江戸時代中期の平和な時代にこうした置物の製作を行ったと考えられます。この種の置物は、明治時代になると海外へも輸出さ れました。その中心的な工房が京都の高瀬好山(たかせこうざん)でした。好山は、鉄以外にも銅や四分一などを使い、色調までも本物に近づけることを追求しています。
写実から可動へと進展した金属工芸の表現力と技巧の極みをお楽しみください。