東洋館 13室
2024年11月12日(火) ~ 2025年2月16日(日)
遊牧民は、家畜とともに水や牧草を求めて定住と移動を繰り返す生活をおくる人々です。山羊や羊の毛を使って製作された敷物や袋物には、遊牧生活を快適に過ごす工夫が詰まっています。本特集で取り上げるバローチは、パキスタン、アフガニスタン、イランにまたがるバローチスターンを中心に暮らす、イラン語派のバローチー語を話す人々です。一口にバローチといっても、夏には涼しい地域、冬には暖かい地域へと移動して暮らす人々から、農耕に従事する人々など、生活様式は一様ではありません。しかし、牧畜はどのバローチにとっても等しく生活を支える大きな営みであり、1979年には約6割の人々が遊牧生活を送っていたといわれます。親族を中心とした小さなグループで生活をおくり、遊牧の際には山羊、羊、ラクダ、ロバとともに移動します。移動時には、 袋物に塩や皿などの生活用品を詰めて家畜に載せ、短期間その場にとどまるキャンプ時には、枝を組み黒い毛織物をかけたギダーンと呼ばれる簡素なテントに敷物を敷き、装飾布を掛けます。
本特集では、バローチの暮らしに着目し、織技法や文様の特徴とともに、テキスタイルと生活とのかかわりについてご紹介します。作品を収集した松島きよえ氏が撮影した、20世紀後半のバローチの生活風景や、現地に広がる景色の写真にもご注目ください。