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未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―

  • 『焔 上村松園筆 大正7年(1918)』の画像

     上村松園筆 大正7年(1918)

    本館 2室
    2022年5月10日(火) ~ 2022年6月5日(日)

    東京国立博物館は、令和4年(2022)に創立150年を迎えました。この150年の歴史のなかで収集された文化財のなかには、国指定の国宝や重要文化財となっていなくとも素晴らしい作品が数多く収蔵されています。

    「150年後、もしくはその先の未来、この国宝室にはどのような作品が展示されているのだろう」。
    こういった問いかけから、今年度は「未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―」というテーマで展示を行なうことにしました。私たち研究員が選び抜いたイチ押しの作品を「未来の国宝」と銘打って、年間を通じてご紹介していくという試みです。
    数万件に及ぶ絵画、書跡、歴史資料のなかから選び抜いた、東京国立博物館コレクションの「逸品」をどうぞご堪能下さい。

     

    年間の展示予定

     

     


    上村松園筆
    大正7年(1918)

     

    『源氏物語』に登場する六条御息所が、光源氏に思いを寄せるあまり、生霊となったさまをモティーフにして描かれたといいます。身にまとう着物の柄は、絢爛に咲く紫と黄色の藤花で、白と黒で表わされた蜘蛛の巣が絡みついています。藤花は実際に糸で刺繍されているように、盛り上げて表現されています。ねじった体の形や滝のように流れる髪などの曲線が重ねられて、「動き」が表わされています。さまざまな曲線はまた、運命の波に翻弄される女性の姿を彩っているともいえるでしょう。

    藤の蔓は、周囲に絡みつきながら大きく伸びていく強い生命力を感じさせ、そのことが激烈な心の内面を象徴しています。ここでは、六条御息所という女性の心の悲しさと同時に、強さもあらわされているのです。

    作者の上村松園(1875~1949)は京都出身で、女性としてはじめて文化勲章を受賞した画家です。松園は清らかで朗らかな「良き母像」や「良き女性像」を数多く手がけましたが、この作品は異色のものといえます。日本絵画のなかでこの作品ほど、個人の激情や情念といったものを鮮烈に描いたものは、他に類をみないともいえるでしょう。

     

 主な出品作品
*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
 主な出品作品
*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
 上村松園筆 大正7年(1918)