東洋館 8室
2021年3月2日(火) ~ 2021年4月11日(日)
明時代(1368~1644)の宮廷画壇は、特に15世紀から16世紀はじめにかけて繁栄を誇りました。はじめは南京に、のち、三代永楽(えいらく)帝により北京に移された宮廷には、浙江(せっこう)・福建(ふっけん)地域出身の画家が多く採用されています。これらの地域には、宋時代(960~1279)の文化の遺風が色濃くのこっていたようです。宮廷画家たちは、宋時代をはじめとする古画をよく学び、花鳥、走獣、人物、山水など多彩な主題を描いていきました。
宮廷画風は在野にも広がっていき、15世紀後期ころから、宮廷に所属しない画家の活動も目立つようになります。中でも注目すべきは、筆と墨による表現の展開です。宮廷において、雄渾さ、闊達さを強調する方向に発展してきた筆墨の表現は、各地に拡大する過程でさらに激しく狂騒的になっていきます。蘇州(そしゅう)を中心とした一部の江南文人たちは、この粗放な画風を嫌い、正道からはずれた「狂態邪学(きょうたいじゃがく)」であるとの批判を繰り返しました。また、職業画家を蔑視する価値観が浸透する中で、宮廷絵画の系譜も、「浙派(せっぱ)」、つまり浙江の職業画家に由来する一地方様式にすぎないと低く評価されるようになります。しかし、現在はその力強い筆墨表現が見直されています。
本展では、宮廷絵画とそこから発展した浙派、狂態邪学派の名品を、江南文人書跡とともに紹介します。