本館 特別1室・特別2室
2021年2月9日(火) ~ 2021年3月21日(日)
狩野派は室町時代中期から明治時代初期まで続いた、日本の絵画の最も代表的な流派の一つです。江戸幕府の御用絵師のなかでも、将軍への直じきのお目見えがかなう、旗本にも匹敵する身分を「奥絵師(おくえし)」といいますが、その筆頭を務め、画壇の中心的な役割を担ったのが木挽町狩野家(こびきちょう かのうけ)です。
歴代当主は、江戸城内の障壁画や贈答用絵画の制作、古画の鑑定、将軍家の子女への絵画教育などに加え、屋敷内に「画所(えどころ)」を設け、全国から5、60人もの弟子たちを集め教育するなど、画壇において絶大な権威を誇りました。またその立場を最大限利用して、全国の大名や社寺が所有する古画・名画を取り寄せ、模写に励み、膨大な絵画情報を集積していたことが知られています。
当館にはこの木挽町狩野家に伝来した5000件近い模本や下絵が収蔵されています。中には、既に原本が失われてしまった貴重な模本のほか、鑑定の際の所感を記したメモや、生き生きとした自由な筆線が残されていて、当時の絵師の息遣いを知ることのできる絶好の資料となっています。本特集では、この膨大な木挽町狩野家伝来資料の一部を「記録と学習」というキーワードからご紹介いたします。本画とは異なる、模本や下絵ならではの魅力を発見いただければ幸いです。