本館 14室
2020年1月2日(木) ~ 2020年2月24日(月)
仮面、とくに能で使われる能面を作ることを「面(おもて)を打つ」といい、能面の作者を「面打(めんうち)」と呼びます。安土桃山時代には面打を世襲する家が現れましたが、それ以前の面打について詳しく知る手掛かりはほとんどありません。近年の研究で、面頬(めんぼお、甲冑の顔の下半分を覆う部分、鉄製)の作者や、馬に乗るときに使う鞍を作る鞍作(くらつくり)などとの関わりが指摘され、少しずつその実態が解明されてきたとはいえ、まだまだ不明なことが多くあり、なかには実在したかすらわからない者までいます。こうした面打が、伝説の面打です。その多くは、世阿弥(ぜあみ)が記した『申楽談儀(さるがくだんぎ)』に名手として紹介されています。
今回は、江戸時代の面打によって、伝説の面打の作品だと鑑定された面を展示します。彼らが活躍したのは南北朝時代から室町時代。新たな能の曲が次々と創られ、面の種類も増えていった時代です。この頃に作られた面は、個性豊かで造形的な魅力に富んでいます。
これらがなぜ伝説の面打の作とされているのか。その魅力はどこにあり、伝説の面打たちはどんな人物だったのか。能面をじっくり見ながら思いを巡らせていただく機会となれば幸いです。