本館 14室
2018年7月10日(火) ~ 2018年9月30日(日)
江戸から明治にかけては、仏像を巡る環境も大きく変化した時代です。明治に入っておこった仏教の排斥運動により、仏像制作の需要も、仏像作家である仏師の仕事も激減しました。
一方で、日本の文化を象徴する文化財の破壊を恐れた明治政府によって、その保護と活用が意識されるようになると、信仰の対象として造られていた仏像は、岡倉天心(おかくらてんしん)らによって紹介された近代的な美意識のもと、美術鑑賞の対象ともなったのです。同時に、仏師は彫刻家へと転身を図り、これまで培われた高度な木彫技術を背景に、美術作品として彫刻制作を行なうようになります。幕末を代表する仏師の系譜を継ぐ高村光雲もそのひとりです。
本特集では、館蔵品および寄託品の中から、江戸の仏像と明治以降の彫刻作品の比較を試みます。江戸時代には信仰の対象でありながら江戸幕府の御用を務めた七条仏師(しちじょうぶっし)や、円空(えんくう)や木喰(もくじき)といった僧侶らがそれぞれ多様な仏像を造っていました。明治以降も、仏師出身の彫刻家はもちろん、仏像の模刻によって彫刻を学び、仏像に着想を得て独自の表現に至った作家もいます。江戸から明治にかけての価値観の多様化にともなう新たな表現の展開とその魅力をご覧ください。