東洋館 5室
2015年9月1日(火) ~ 2015年12月23日(水・祝)
古来中国の人々は死後も霊魂が存在すると信じ、親や先祖の霊魂が不自由なく暮らせるよう心を砕きました。春秋戦国時代(前5世紀)には、死者に仕える兵士、召使や芸人などのさまざまな人物や家畜を象って人形とし、墓のなかに副葬するようになりました。このように副葬のために作られた人形を俑、とくに焼物の俑を陶俑といいます。
その後、清時代(1644~1912)に至るまで、各時代の風俗や流行をも形に写した陶俑は、時代ごとの異なる特徴と魅力を具えるようになりました。なかでも、漢時代(前206~後220)の俑は素朴な造形のなかに文化の成熟を、唐時代(618~907)の俑は華やかさのなかにシルクロードを通じて伝わった西方諸国の影響を認めることができます。
陶俑は20世紀初頭に中国河南省の墳墓から偶然出土したのを契機に、骨董市場に流出し、おもに欧米の人々が競って求めました。日本の市場では、墓の出土品であり、また、伝統的な茶道具と馴染のないものだったため、陶俑はなかなか受けいれられませんでした。
そのようななか、陶俑をいちはやく評価したのが大正・昭和に活躍した実業家や芸術家でした。本特集では、横河民輔、中野欽九郎といった実業家ゆかりの陶俑のほか、安田靫彦、小林古径などの作品に描かれた陶俑に注目し、静物画の画題や歴史画の考証資料として愛蔵した画家たちの慧眼に迫ります。また、当館には明治43年(1910)から陶俑を積極的に蒐集してきた歴史があります。当館が所蔵する漢・唐時代の優れた陶俑を通して、その魅力とともに、陶俑受容の歴史に触れていただければ幸いです。