本館 特別1室
2011年6月28日(火) ~ 2011年7月24日(日)
中国絵画は羅漢(らかん)・寒山拾得(かんざんじっとく)・観音の絵画を展示します。羅漢とは仏教で、高い境地にある修行者のことで、いまだ仏にはならず、現世にあることに意味があります。観音もまた多くの人々を救うために、現世にあり、さまざまな姿になって衆生を救う菩薩です。これらは、文人たちが憧れた、世間を離れ、隠逸する自分たちの理想の姿と重なって、多く絵画化されてきました。寒山拾得は唐代浙江省の天台山に居たといわれる伝説の僧侶です。彼らの表情からは、世間の塵芥を笑い飛ばし、自由に生きる精神の高みを感じることができます。
中国書跡は明時代を取り上げます。明時代の中頃には、商業都市として繁栄した蘇州(江蘇省)に経済の中心が移り、多くの文人が参集しました。当時は、科挙の試験に報われず挫折を体験した人物が、豊富な知識を詩書画に向け、筆墨に専心し生計を立てることで、新たな書風を形成してゆきました。この時期の書を、蘇州の古名にちなんで 「呉中派」と称し、文徴明(ぶんちょうめい)がその代表的な人物です。明時代の末には松江(上海市)出身の書画家が活躍しました。「松江派」の中でも董其昌(とうきしょう)は書画ともに秀で、明末から清初に流行する連綿趣味の先駆者として大きな役割を果たしました。