平成館 企画展示室
2010年9月28日(火) ~ 2010年10月24日(日)
紀元前150年頃に中国で発明された紙の製法は、朝鮮半島を経て、日本に伝わりました。奈良時代には国家的 な写経事業や、行政制度の整備が行われ、紙の需要とともに、全国に紙漉きの技術が広まります。最初に漉かれた紙は、苧麻(ちょま)の繊維、麻布(まふ)の ボロなどを原料とする麻紙(まし)です。しかし、麻は原料の処理に手間がかかるだけでなく、文字などを書くには、叩(たた)いて平滑にする(打紙(うちか み))、表面を磨くなどの作業が必要でした。そのため、次第に原料の処理が容易で、増産に適した楮紙(ちょし)が普及しました。
料紙の染色は、もとは防虫のための黄色が中心でしたが、「漉(す)き染め」「浸(ひた)し染め」「引き染め」「吹き染め」の染色法が開発され、さまざま な色紙(いろがみ)を継いだ料紙も使用されました。平安時代になると、貴族は和歌・物語などにふさわしい優雅で繊細な紙を求め、中国や朝鮮から多くの料紙 が輸入されました。11~12世紀は、装飾料紙の全盛期で、華麗な文様を摺(す)り出した中国の唐紙(からかみ)が珍重され、これを模倣した国産品が登場 します。また、再生紙を活用した各種の色紙による美しい装飾本も作られました。
各国の料紙を、顕微鏡、透過光などを利用して観察すると、それぞれの料紙の違いがみえてきます。この展示では、日本・中国・朝鮮の料紙について、その種類や特徴、作り方などをご紹介いたします。