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館蔵能面名品撰

  • 『能面 大天神 室町時代・15~16世紀』の画像

    能面 大天神 室町時代・15~16世紀

    本館 特別1室
    2008年2月5日(火) ~ 2008年3月2日(日)

     能楽は古くは猿楽(さるがく)と言って、社寺の祭礼にともなって行われるものでした。そのため古い社寺に能面が伝わっている例がしばしばみられます。南北朝時代、春日社と興福寺の猿楽を勤めた結崎座(ゆうさきざ)(観世座(かんぜざ))・外山座(とびざ)(宝生座(ほうしょうざ))・坂戸座(さかどざ)(金剛座(こんごうざ))・円満井座(えんまいざ)(金春座(こんぱるざ))を大和猿楽四座といいます。このうち結崎座に観阿弥、世阿弥親子が出て足利義満の寵愛を受け、世阿弥が能楽を芸能として大成しました。この後の将軍も能楽を愛好、やがて武家の式楽(しきがく)として各地の大名も能を催し、数多くの面を所蔵するようになりました。

      大和猿楽四座のうち坂戸座から喜多が分かれ、現在の能楽シテ方宗家が揃いました。この宗家には能楽の演目と演出にあわせて工夫された面が備えられまし た。南北朝時代から室町時代は、あらたな曲がつぎつぎ作られ、面の種類も増えていった、いわば「創造の時代」と言うことができます。この時期に作られた面は造形的な魅力に富み、本面といってきわめて尊重されます。安土桃山時代以降は型を伝える「模倣の時代」で、能面も本面を模作するようになります。模作は形や彫りだけでなく傷や彩色の剥がれた様子も写します。これと比較すべき宗家の本面は容易に鑑賞や調査を許されないので、能面の時代判定には困難がともないます。

      東京国立博物館は200面を超える能面を収蔵しています。昭和25年(1950)に金春座に伝来した能面47面と能装束を購入しました。その中に造形的に優れた、「創造の時代」の所産とみられる面が少なからず含まれており、今回はそうした名品を中心に展示を構成しました。「模倣の時代」の名手、出目是閑吉満(でめぜかんよしみつ)、河内大掾家重(かわちだいじょういえしげ)の作と比較しながらご覧ください。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
能面 父尉 室町時代・15世紀
能面 大天神 室町時代・15~16世紀
能面 若曲見 室町時代・15世紀
能面 平太 出目是閑吉満作 安土桃山~江戸時代・16~17世紀
能面 十六 河内大掾家重作 江戸時代・17世紀