本館 特別2室
2013年9月10日(火) ~ 2013年10月20日(日)
考古資料の展示では、しばしば各種の情報を伝える写真や復原模造品が遺跡・遺物の知識を深める重要な資料として登場します。今回展示する絵画や模造品の多くは、大正時代から昭和初期(1913~35年頃)にかけて、画家や工芸家に依頼して作られたものです。遺跡の景観は油絵に、遺物は模造品にうつし、考古資料で当時の様子を再現したこれらの「記録」から、当時模造品や絵画を用いて考古展示に工夫を凝らしてきたことがわかります。
一方、これらの資料に残された手法・技術からは、「工夫」(展示構成など)の遷(うつ)り変りに加え、当時の作家と考古学者との関係も見えてきます。現状の把握に努めた大正時代と過去の復元に努めた昭和初期という違いが見られることも興味深い点です。このほか、素材や技法を変えて制作された模造品からは、複製品による過去の復元や考古学の普及という目的に工芸家と考古学者が協働して努力してきた様子がうかがえます。
東京国立博物館の所蔵するこれらの記録資料は、画家・工芸家と考古学者が「うつす・つくる」という行為を積みかさねて文化財を「のこす」努力を続けてきたことの証で、博物館における考古学と美術の関係を物語る重要な資料と言えるのではないでしょうか。
担当研究員の一言
祖先の遺した足跡に深い関心を寄せ、文化財の保存・記録と展示に努めた先人の想いを感じ取って頂ければ幸いです。/古谷 毅140年の歴史のあるトーハクだからこそ収蔵されてきた絵画(考古)や模造品を、この機会にぜひご覧ください。/鈴木 希帆