林宗毅氏にありがとう
東博に奉職して間もないころ、林宗毅氏より中国書画をご寄贈いただきました。
林氏は台湾の名家のご出身。台湾大学・東京大学を卒業後、日本に帰化され、実業家として世界を叉に掛けるかたわら、短歌や俳句をたしなまれ、中国書画の収蔵家としても名を馳せる文人の側面もお持ちでした。
数回にわたってご寄贈いただいた書画は、当館に欠落していた近代を補う貴重な作品ばかりです。
風鳶図巻(部分) 翁同わ筆 清時代・光緒17年(1891) (展示予定は未定)
晩年、ご寄贈の件でご自宅を訪れたときのこと。
にこやかに笑みを浮かべながら
「週に2回通院してましてね、人工透析をした日は、終日だるいんですよ」。
するとすかさず奥様が
「だからあなた、お若い時分に総合病院を建てておけばよかったんですよ」。
これをうけて林さん
「今にして思えば、確かにそうしておくのでしたなぁ(笑)」。
私は日常会話の規模の大きさに、ただただ唖然とするばかりでした。
ご寄贈いただいた中国書画は、改修を終えた東洋館で永遠に輝き続け、多くの人々に深い感銘をあたえることでしょう。
林宗毅さん、ありがとうございました。
最後に林さんの句集からお気に入りを一つ。
「寒桜大志を胸に孤高なる」
東京国立博物館の庭園・茶室を背景にして。
カテゴリ:2012年4月
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posted by 富田淳(列品管理課長) at 2012年04月25日 (水)