トーハクくん、東洋館をバックに。
ほっほーい、ぼくトーハクくん!
明日から、東洋館で「博物館でアジアの旅」が始まるんだほ!
そうだ、アジア、行くほ。
って思っても、アジアって広いから全部行くのはなかなか大変なんだほ…。
だけど東洋館なら気軽にアジアを旅行した気分になれるんだほー!
「博物館でアジアの旅」期間中は、東洋美術の名品が展示されるから要チェックだほ。
今日は誰でも参加できるイベントを紹介するほ!
「アジアン スペクタクル」
韓国伝統芸能 サムルノリ(太鼓演奏)
10月4日(土) 14:00、16:00 (各30分)
京劇・雑技・音楽のショー
10月5日(日) 14:00、16:00 (各30分)
どちらも東洋館前(雨天の場合は平成館大講堂)
(左画像2枚)サムリノリ、(右画像)京劇のようす
こりゃ盛り上がりそうだほー!
スペシャルツアー
「60分でめぐるアジア美術の旅 研究員がエスコート」
10月1日(水)・2日(木)・8日(水)・9日(木)・10日(金) 11:00~12:00
10月4日(土)・5日(日) 18:30~19:30
10月12日(日)・13日(月・祝) 14:00~15:00
東洋館1Fエントランスホール集合
うわっ、東洋室長の小泉さんだほ! コ、コスプレー?!
ボランティアによる関連ガイドツアー
10月3日(金)・4日(土) (彫刻ガイド-東洋館)11:30~12:00
10月4日(土) (樹木ツアー)13:30~14:00
10月5日(日) (東洋館ツアー)・7日(火)(たてもの散歩ツアー) 11:00~11:40
樹木ツアー、たてもの散歩ツアーは本館1Fエントランスホール、
そのほかは東洋館1Fエントランスホール集合
ボランティアさんの解説、とっても分かりやすいんだほ。
講演会
月例講演会「中国青銅器をめぐる旅 4千年のものがたり」
10月11日(土) 13:30~15:00 平成館大講堂
定員:380名(当日受付、先着順)
平常展調整室の川村さんが、ラーメンの丼の縁によくある「回」字形の模様についてお話するんだって!
アジアを体感!
着てみてポーズ! 中国・韓国の伝統衣装(衣装体験)
中国、韓国の伝統衣装を着て記念撮影。それぞれの国の美意識や生活文化の違いを体感できます。
子ども用、大人用ともにご用意しています。
期間中毎日 11:00~16:00 東洋館1Fエントランスホール
コ、コスプレー!!(本日2回目)テンションあがるほ!
アジアンぬりえ
東洋館の展示作品をモチーフにしたぬりえをお楽しみください。
作品はお持ち帰りできます。子ども向け、大人向けともにご用意しています。
10月4日(土)・5日(日)・11日(土)・12日(日) 11:00~16:00 東洋館1Fエントランスホール
どんな作品のぬりえかなあ? 楽しみだほ。
本館(左)と東洋館(右)を望んで。東洋館がどこにあるのか分からない、という方のために。
アジアン屋台
アジア料理を中心にしたケータリングカーが東洋館前に登場。アジアンフードやドリンクでアジアを味わってください。※出店メニューは変更になる場合があります。
10月3日(金) 17:00~20:00
10月4日(土) 11:00~20:00
10月5日(日) 11:00~20:00
10月10日(金) 17:00~21:00
10月11日(土) 11:00~21:00
10月12日(日) 11:00~18:00
10月13日(月・祝) 11:00~18:00
中華料理、ベトナム料理、スリランカ料理、タイ料理、シンガポール料理、アジアンビールなど。
※メニューは日によって変わります。
やっほー! 色んなアジアンフードを楽しめるんだほ!
アジアンビールって、具体的にどこのビールなの? 教えてほしいほ。
(その答えはぜひトーハクで!でも未成年の飲酒は禁じられていますから、トーハクくんは飲めませんよ!)
どれもこれも楽しそうでワクワクしてきたほ!
「博物館でアジアの旅」は10月13日(月・祝)まで開催します。
この機会に、たくさんのイベントに参加して、東洋館の魅力を再発見してほしいほ~!
総合文化展「博物館でアジアの旅」
9月30日(火)~10月13日(月・祝)
ポスターのセンターに選ばれて、ちょっと照れるトーハクくんなのでした。
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posted by トーハクくん at 2014年09月29日 (月)
陶磁器といえば、東アジアを代表する工芸品です。
「やきもの大好き!」というお客様も多くいらっしゃることと思いますが、
そんな陶磁器好きの皆様必見の展覧会がついに開幕しました。
2014年日中韓国立博物館合同企画特別展「東アジアの華 陶磁名品展」(9月20日(土)~11月24日(月・休))です。
開幕に先立ち、9月19日(金)には開会式および内覧会が行われました。
開会式には多くのお客様にご出席いただきました
本展覧会は、日本・中国・韓国の国立博物館が初めて合同で行う企画展です。
開会式では、主催者として当館館長・銭谷眞美、中国国家博物館副館長・黄振春、
韓国国立中央博物館長・金英那よりご挨拶申し上げました。
展示作品は各館の魅力が伝わるよう、それぞれのコレクションの特徴をふまえて、厳選しています。
会場入り口を入ってすぐの展示にご注目ください。ここに、本展覧会を象徴する3作品が並んでいます。
手前から、中国国家博物館の2級文物「三彩馬」、
韓国国立中央博物館の国宝96号「青磁亀形水注」、
東京国立博物館の「火焰型土器」
北京の中国国家博物館には、中国の古代から近代まで120万点を超える作品が収蔵されています。
今回は、同館収蔵の陶磁器を代表して、唐三彩を中心に貴人墓や重要遺跡から出土した陶磁器を、
主に展示しています。
2級文物 三彩馬
陝西省西安市鮮于庭誨墓出土 唐時代・開元11年(723)葬
中国国家博物館蔵
2級文物「三彩馬」もそのひとつ。
白色の体に映える、障泥(あおり)の緑釉やたてがみの黄釉など、
その鮮やかな色彩は、会場内でも独特の存在感を放っています。
ソウルの韓国国立中央博物館が誇るコレクションのひとつが高麗青磁(こうらいせいじ)。
本展覧会でも、高麗青磁を中心に展示作品を選んでいます。
国宝96号 青磁亀形水注
黄海北道開城付近出土 高麗時代・12世紀
韓国国立中央博物館蔵
国宝96号「青磁亀形水注」は、高麗青磁の全盛期を代表する優品です。
その翡色は思わずため息ものの美しさ!
亀の体と龍の頭を持つ想像上の生き物をかたどった水注で、
鱗や足の爪などの造形や、把手に施された黒点の象嵌(ぞうがん)など、細部まで丁寧に作られています。
日本の展示は、縄文時代から江戸時代まで、日本の陶磁器の歴史を
ダイジェストでご覧いただける構成になっています。
火焰型土器
伝新潟県長岡市馬高出土
縄文時代(中期)・前3000~前2000年
東京国立博物館蔵
日本の陶磁史の栄えあるスタートを飾るのが縄文土器。
新潟県を中心に見られる火焰型土器は、縄文時代中期を代表する深鉢形の土器です。
この力強い造形が、今から約5000年も前のものだというのだから驚きです。
本展覧会には、各館から15件ずつ、計45件の陶磁器が集結しました。
1歩会場に足を踏み入れたなら、ズラリと並ぶ作品の数々に、やきもの好きならずとも
ドキドキと気持ちが高まるはず!
この秋、東京国立博物館はやきものの「聖地」となります
皆様のご来館をお待ちしております。
カテゴリ:news、博物館でアジアの旅、2014年度の特別展
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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年09月25日 (木)
素朴で力強く、そして温かみのある東北の仏像。
東北6県を代表する魅力あふれる仏像を、トーハクでご覧いただけることとなりました。
当館では、特別展「みちのくの仏像」(1月14日(水)~4月5日(日) 本館特別5室)を開催します。
9月16日(火)には、平成館大講堂で報道発表会を開催し、
本展覧会の担当研究員・丸山士郎より、見どころと展示作品についてご説明いたしました。
作品解説中の丸山研究員
展覧会には、東北の三大薬師といわれる黒石寺(岩手県)・勝常寺(福島県)・双林寺(宮城県)の
薬師如来坐像がいらっしゃいます!
3体のお像が揃うのは初めて。三大薬師の記念すべき初顔合わせです。
国宝 薬師如来坐像
平安時代・9世紀 福島・勝常寺蔵
仏像ファンが愛してやまない、円空作の仏像もいらっしゃいます。
そのうちの1体、常楽寺(青森県)の釈迦如来立像は、円空初期の作品。
ノミ跡が荒々しい後期とは違って、表面を滑らかに仕上げ、細かなところまで表現しています。
釈迦如来立像
江戸時代・17世紀 円空作
青森・常楽寺像
(画像提供:須藤弘敏)
ちんまりとかわいらしいお像にも注目です。
秋田県・小沼神社の聖観音菩薩立像の頭部をよーくご覧ください。
頭部の大きなこぶに刻まれているのは、小さな愛らしいお顔。
その愛らしさに「まるで雪ん子!」と、丸山研究員もすっかり虜です。
聖観音菩薩立像 (部分)
平安時代・10世紀 秋田・小沼神社蔵
(画像提供:東北歴史博物館)
小さなお像の次には、大きなお像を。
給分浜(きゅうぶんはま)観音堂の十一面観音菩薩立像は、高さ約290cmという大きさ。
こちらのお像が安置される観音堂は、宮城県の給分浜を見下ろす高台に立っています。
東日本大震災では、給分浜は津波の被害に遭いましたが、お像は難を逃れました。
重要文化財 十一面観音菩薩立像
鎌倉時代・14世紀 宮城・給分浜観音堂蔵
(画像提供:東北歴史博物館)
丸山研究員は、「東日本大震災の折、被災地の人びとがみせた
忍耐強さや助け合いの精神に、私たちは心を動かされました。
東北の仏像の力強く、それでいて優しいお顔には、
そのような東北の人たちの気質が表れていように思えてなりません」
と、発表を締めくくりました。
報道発表会では、特別展「みちのくの仏像」と同時期に開催する、
特別展「3.11大津波と文化財の再生」(2015年1月14日(水)~3月15日(日))の概要も発表されました。
東日本大震災で発生した大津波は、文化財にも甚大な被害をもたらしました。
本展覧会は、そういった被災文化財再生への取組みをご紹介するものです。
実際に、再生のための処理を施した資料をご覧いただけます。
奥州市埋蔵文化財センターでの 安定化処理後の石川啄木歌碑拓本
拓本の安定化処理作業
さらに、文化財再生を通じて結ばれた絆の象徴として、
岩手県立高田高校の実習船「カモメ」も展示する予定です。
船が大津波で流され、アメリカの西海岸に漂着した、というニュースを
ご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
漂着時には、びっしりと貝が付着して傷みも見られた船はクリーニングされ、
生まれ変わった「カモメ」は、2013年、高田高校に返還されます。
これは、アメリカの高校生の呼びかけにより、実現しました。
実習船「カモメ」と岩手県立高田高校の生徒たち
(画像提供:東海新報社)
2つの展覧会が、東北復興の一助となることを祈っています。
2015年に開催されるトーハク最初の展覧会、どうぞお楽しみに!
カテゴリ:news
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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年09月19日 (金)
現代の私たちの生活では、家に屏風があるという人はめったにいないと思います。
美術館や博物館、あるいは結婚式場や料亭など、
特別な場所でしか目にすることのないものかもしれません。
屏風とは、今でいうパーテーションや衝立のように使われた移動式の壁とでもいうもので、
風除け、目隠し、間仕切りなどの目的に使われました。
昔の人たちにとっては、特別な美術作品というよりは、
日々の生活の道具だったわけです。
しかし、日常の道具といっても、そこにはいろいろな絵が描かれています。
絵につつまれて暮らすなんて、なんだかとても豊かに聞こえますね。
屏風を使う暮らしとは、どのようなものだったのでしょうか。
9月6日に行われたファミリーワークショップ「屏風体験!」では、
それを小学生とそのご家族の皆さんに体験していただきました。
まず、本館2階の7室で3種類の屏風を鑑賞。
屏風とは一体何に使われたのか、というお話を最初にしました。
そして二曲一双、四曲一隻、六曲一双など、
形状によって呼び名が違うこと、
白い紙だけでなく、金や銀の地に
墨一色で描かれたり、色を使っていたり、
描き方もそれぞれ違うことを確認しました。
次に、展示室を後にして博物館の庭園にあるお茶室、応挙館に向かいます。
ここではなんと、国宝『松林図屏風』(の複製)が皆を迎えてくれました!
(ひとめ見て「まさか、本物じゃないですよね…」
とつぶやいた親御さんがいらっしゃいました。残念ですが、複製です…)
こんなところに、『松林図屏風』が!
キヤノン株式会社の「綴プロジェクト」の一環で
作成された『松林図屏風』の複製を使い、
応挙館での前半は「屏風の置き方」をテーマにした内容です。
まずは参加ファミリーを3チームに分け、
ミニチュア屏風を使いながら、
それぞれの「理想の屏風の置き方」を考えていただきます。
手で動かしているうちに、アイデアがわいてきます
「自分を囲み込むように置いて、絵に包まれたい…」とか、
「一双を向かい合わせに立てて、松林の間を迷路みたいに歩き抜けたい」とか、
皆さんいろいろなアイデアが浮かんできたようです。
それぞれのチームのアイデア通りに、複製の屏風を置いていきます。
配置の仕方によって、描かれた松林の風景がぐっと広がってみえたり、
コンパクトに見えたり、自分がすっかりその中に入り込んでしまったように思えたりと、
見え方が大きく変わります。
展示室ではまず見ることのできない摩訶不思議な屏風の配置を見て、
「うちに屏風があったら、毎日置き方を変えて楽しむのに…」と
本気で思ってしまいました。
こんな屏風の置き方、見たことない!
屏風の前で立ってみたりごろんと寝転んでみたり、
くぼみから顔を出してみたり、皆それぞれに屏風と遊んだひとときでした。
屛風に挟まれてリラックス… それぞれのプライベート空間
休憩時間のあと、後半は「明かりが変わると屏風はどう見えるか」がテーマです。
今までついていた蛍光灯を消して見ると、
障子を閉めた日本家屋の中は、昼間でもかなり暗かったことが分かります。
さらに、夜に向けた明るさの変化を擬似的に体験していただくために、
雨戸を次々に閉めてみました。
とうとう真っ暗になり、もう松林が見えなくなったところで、
ろうそくの灯りをイメージした暖かな色合いの照明器具をつけてみました。
暗い中に、ぼんやりと松林が浮かび上がり、幻想的な光景です。
ろうそくのゆらめきのように調光してみると、
松林の奥行きがすっと変化するようです。
ろうそくをイメージした灯りで幻想的に
周囲が暗くなると、不思議と周りの音がよく聞こえてくるようでした。
参加者の皆さんも、集中して静かに屏風をごらんになっていました。
蒸し暑い日でしたが、障子越しの薄暗い自然光のもとで、
蝉の声をバックにじっと見る『松林図屏風』は、
一瞬別世界に連れて行かれるような、
格別の静けさと涼しさをもたらしてくれました。
自然光で見るのもまた素敵です
昔の人は、暮らしの中でどんな配置で、そしてどんな明かりの下で
屏風と暮らしていたのか。
ファミリーワークショップ「屏風体験!」は、
それをゆっくりと体験できる、とても贅沢な時間でした。
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posted by 藤田千織(教育普及室主任研究員) at 2014年09月12日 (金)
今回展示されている中国絵画の目玉の一つに、元代文人画があります。元時代に活躍した四人の文人画家、黄公望(こうこうぼう)(1269-1354)、倪瓚(げいさん)、呉鎮(ごちん)、王蒙(おうもう)を特に「元末四大家」と呼びますが、今回はそのうち三人もの代表作が一挙に来日しています。
皇帝の至宝といえば、絢爛豪華な作品に目がいきがちですが、皇帝たちがもっとも愛してきたのはこの元末四大家の作品でした。そこには東洋の魂がこめられているからです。
「元末四大家」は中国人なら誰でも知っている、最も重要な画家です。例えるなら、ルネサンスを代表するレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)、ミケランジェロ(1475-1564)、 ラファエッロ(1483 -1520)のルネサンス三大巨匠の代表作が、全て東博に来日しているようなものです(もっとも、ルネサンスの画家たちは元末四大家よりも150年も後に活躍した人々なのですが…)。
張雨題倪瓚像図巻(ちょううだいげいさんぞうずかん) 元時代・14世紀 台北 國立故宮博物院蔵
倪瓚は、日本で例えれば西行や松尾芭蕉のような人。元末の戦乱を避けて、家や妻子を捨てて流浪の生活を送りました。その芸術作品は、どこまでも静かで寒々とした孤高を感じさせ、見る人の心に迫ります。
紫芝山房図軸(ししさんぼうずじく) 倪瓚筆 元時代・14世紀 台北 國立故宮博物院蔵
倪瓚の山水画は、一人も描かれないのが特徴です。画家の孤独な心象風景を象徴するようです。
世界の絵画史上もとても早い14世紀に、中国では故郷や友人との交流といった、とてもプライベートな事柄が描かれるようになります。画家たちは皇帝のために豪華な肖像や神話画を描きあげる職人ではなく、個人の内面世界を表現する“文人”となり、その理念が東アジア全体に広がっていったのです。
漁父図軸 呉鎮筆 元時代・至正2年(1342) 台北 國立故宮博物院蔵
呉鎮もまた清貧の生活を送った文人です。月光のもとで、ゆったりと船に乗る高士の姿は、呉鎮の自画像かもしれません。
具区林屋図軸(ぐくりんおくずじく) 王蒙筆 元時代・14世紀 台北 國立故宮博物院蔵
見るもの誰もが「ぎょっ」となる王蒙の作品。彼もまた戦乱の世にあって悩み苦しんだ文人でした。ここでは右上に洞窟の入り口が描いてあることに注目ください。その道をぬけると、中には花咲く理想世界が広がっていた、という構図です。
想像してみてください。混乱した戦乱の世。自分の居場所はどこにもありません。しかし王蒙はこの、岩に囲まれ、隔離された小さな空間に、家族とともに暮らす理想郷を見出したのです。
湖から続く小さな洞窟を抜けると…。
戦乱を避けて、静かに読書する文人と、花を生ける女性の姿が描かれています。
ルネサンスがその後の西洋美術発展の礎となったように、元末四大家はその後の東アジア絵画の発展の基礎となりました。なぜ昔の人の絵は山や川ばっかりなのか、なぜ墨ばっかりで描いているのか、誰にもかけそうな絵がどうして国宝なの? そんな疑問の全ての答えは、この元四大家の誕生にあります。
人間の精神に関心を持つ全ての方々にごらんいただきたい、東アジア文化の結晶なのです。その後、中国は度重なる戦乱に見舞われますが、それでも現代に至るまで人々がそのよりどころとし、必ず尊重してきたのは、この元末四大家の権力に屈せず精神の自由を守ろうとする生き方だったのです。
元末四大家が活躍したのは、江蘇省と浙江省にまたがる太湖の周辺でした。東アジア文人画のふるさとと言えます。
最後に一つ、私の大好きな絵を。これは王允同(おういんどう)という人が、地元である「荊渓(けいけい)」の風景を描いてもらい、12人の友人たちにその風光をほめてもらう詩を寄せ書きしてもらった作品です。
荊渓図軸 陳汝言筆 元時代・14世紀 台北 國立故宮博物院蔵
真ん中の橋は、この地を訪れた人々ならば必ず渡ったであろう「蛟橋(こうきょう)」でしょう。街のシンボルです。上にあるのが友人たちの寄せ書き。
人は誰でも故郷があります。そしてそこで友人や家族と幸せに暮らしたいと願っています。しかしそのことは、様々な原因で適うことはないのが普通です。その時、このような、理想化された風景が描かれていきます。この絵の前にたてば誰もが(それこそ皇帝から文人、現代の私たちに至るまで)、元代文人画が描こうとした、故郷への愛や友人との交わり、内面の充足といった、普遍的な感情を共有できるでしょう。
故宮文物はただ単に中国だけの宝ではありません。私たち東アジア共通の宝であるというのは、このような理由によるのです。じっくりとお楽しみくだされば幸いです。
カテゴリ:研究員のイチオシ、2014年度の特別展
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posted by 塚本麿充(東洋室研究員) at 2014年09月11日 (木)