本館 16室
2010年3月9日(火) ~ 2010年4月25日(日)
博物図譜とは、博物学にもとづいて制作された写生や模写のアルバムです。写生によって物のかたちを詳しく記録することは、博物学が流行する以前にも、心覚えのスケッチとして行われていました。写生の重要性を認識した円山応挙(まるやまおうきょ)などの作品には、自然科学への関心がうかがえるものもあります。日本の博物学は、享保年間(1716~35)に江戸幕府が全国的な物産の調査を行ったのがきっかけで、動植物や鉱物などへの探求心が高まり、学問のすそ野が広がりました。この時期には田村藍水(たむららんすい)、小野蘭山(おのらんざん)、宇田川榕菴(うだがわよあん)らのほか、肥後藩主細川重賢(ほそかわしげかた)や木村蒹葭堂(きむらけんかどう)などが博物学者として活躍しています。以後、ツンベリーやシーボルトなどを介して西洋博物学の影響が及び、岩崎灌園(いわさきかんえん)の「本草図譜」(1828)などが出版され、博物学の高い知見が示されました。
今回の展示では、季節にちなんだ桜を中心として、博物画の先駆けともいえる狩野探幽(かのうたんゆう)の写生図から、明治時代の実用的な掛図にいたるまでの、生き生きとした楽しい博物図譜をご紹介します。