本館 14室
2005年9月27日(火) ~ 2005年12月11日(日)
仏教が興隆した飛鳥時代、寺院では仏画の代わりに刺繍(ししゅう)された仏の像をまつっていたといわれ、中宮寺の天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)に当時がしのばれます。鎌倉時代になると、念仏(ねんぶつ)を唱えれば極楽浄土へいけるという阿弥陀仏の信仰が流行り、阿弥陀来迎図を刺繍した掛幅(かけふく)がたくさん寺院に奉納されました。お釈迦様の螺髪(らほつ)や図中の経文は、糸の替わりに施主自身の髪で繍(ぬ)い表され、仏身へ近づきたいと願う、信仰篤い人々の祈りが切々と伝わってきます。寺院にあふれる幡(ばん)や袈裟(けさ)といった染織の多くも、信者のお布施によるものです。刺繍の細やかな手わざ、草木染による柔らかな色彩、丹念に織り出された模様は、祈りを象(かたど)ることの意味を現代人に優しく語りかけてきます。