本館 2室
2022年9月27日(火) ~ 2022年10月23日(日)
東京国立博物館は、令和4年(2022)に創立150年を迎えました。この150年の歴史のなかで収集された文化財のなかには、国指定の国宝や重要文化財となっていなくとも素晴らしい作品が数多く収蔵されています。
「150年後、もしくはその先の未来、この国宝室にはどのような作品が展示されているのだろう」。
こういった問いかけから、今年度は「未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―」というテーマで展示を行なうことにしました。私たち研究員が選び抜いたイチ押しの作品を「未来の国宝」と銘打って、年間を通じてご紹介していくという試みです。
数万件に及ぶ絵画、書跡、歴史資料のなかから選び抜いた、東京国立博物館コレクションの「逸品」をどうぞご堪能下さい。
金胎仏画帖
平安時代・12世紀
小さな冊子の1 ページに1尊ずつ仏の姿が描かれます。描線は柔らかく伸びやか、彩色は鮮やかで美しく、優雅な雰囲気をもつ作品です。仏の周囲には名前や種子(個々の仏を表す古代インドの文字)、三昧耶形(個々の仏の象徴として表される持ち物)が示され、仏の姿を図解した事典といえます。この作品に描かれているのは、密教の世界を構成する仏たち。もともとは100 ページを超える冊子で、金剛界の95尊が描かれたものでした。しかし、昭和の初めに分割され、現在は諸家に分蔵されています。この作品は55 番目の「拘摩羅童子」から72 番目の「歓喜天」にあたり、当初の冊子の状態を留める点は重要です。
平安時代後半から鎌倉時代にかけては、僧侶だけでなく貴族たちの間でも仏の姿や形に関心が高まり、それらを集めて整理した図像集が盛んに制作されました。その多くが墨の輪郭線を主体とした白描という手法で描かれるのですが、この作品のように美しく丹念に彩色が施されたものは他に現存しません。鎌倉時代に活躍する絵仏師の家系である託磨派の祖・為遠が描いたと伝えられます。彼の画風をうかがうことのできる唯一の作品です。