本館 14室
2021年7月20日(火) ~ 2021年9月26日(日)
岐阜県関市は、かつて多くの刀鍛冶が活躍し、現在も「刃物のまち」として知られています。大和(奈良)からこの地に移り住んだ刀鍛冶たちが、氏神として奈良の春日大社から勧請、創建したのが春日神社です。
室町時代15世紀前半から刀鍛冶が衰退する江戸時代後期まで、正月28日に春日神社で刀鍛冶らが奉納する神事能をはじめ、様々な演能が盛んに行われ、刀鍛冶、領主のほか、庶民に至るまで広く能を楽しんでいたことが記録からうかがえます。
春日神社の境内には今も、古い形式の能舞台があり、60件を超える能装束のほか、能面48面、狂言面5面、行道面・追儺面等8面の合計61の仮面が伝来しています。仮面は室町時代の作を多く含む点が貴重で、平成22年(2010)、重要文化財に指定されました。今回はこの61面全てを3期に分けて展示します。
いずれも名品ですが、もっとも注目すべきは「一トウ作」と銘のある能面 尉(笑尉)です。近世以降の能狂言面は様式が完成し、型を踏襲するようになります。しかしこの笑尉の1本ずつ刻んだ歯、やわらかな唇、生き生きとした表情は、定型化した能面とは一線を画するものです。創造力に満ちた造形をご覧ください。