本館 特別1室
2020年9月24日(木) ~ 2020年11月23日(月・祝)
平安時代には、美しく装飾された料紙(りょうし)に能書(のうしょ)(書の巧みな人)が詩歌を詩歌を揮毫(きごう)した調度手本(ちょうどてほん)が、貴族の間で贈り物とされました。国宝「古今和歌集(元永本)(げんえいぼん)」は、その調度手本のひとつです。元永3年(1120)の奥書(おくがき)があるため「元永本」と呼ばれ、本年はそれから900年の節目にあたります。今回は、「元永本」を中心に、平安時代の書と紙の競演をご覧いただきます。
文様を版木で摺(す)り出した唐紙(からかみ)には、舶載(はくさい)(中国製)と和製(日本製)のものがあります。和製の料紙はほかに、漬け染めや引き染めの技法で染めた染紙(そめがみ)、繊維を漉(す)き込み、雲のような形を表わす雲紙(くもがみ)、金泥(きんでい)や銀泥(ぎんでい)、群青(ぐんじょう)や緑青(ろくしょう)などで下絵を施した料紙、金銀箔を散らした料紙などがあります。一方、舶載の料紙には「蠟箋(ろうせん)」と呼ばれる文様が蠟のようににぶく光るものが知られます。
そして、「元永本」は、孔雀や唐花(からはな)など十数種類の文様を版木で摺り出した和製の唐紙を用いています。きらびやかな装飾のある料紙に、書をどのように表現するのかは能書の腕の見せどころです。料紙と書の調和をお楽しみください。