東洋館 8室
2020年1月2日(木) ~ 2020年3月1日(日)
明時代(1368~1644)の中期を代表する文人の文徴明(ぶんちょうめい、1470~1559)は、中国の南に位置する文化都市、蘇州(そしゅう)に生まれました。はじめ名を壁(へき)、字(あざな)を徴明といい、42歳以降、徴明を名として、字を徴仲(ちょうちゅう)と改めました。
名家の出身で、父の文林(ぶんりん)は科挙に合格した官僚でした。文徴明は幼少の頃より言葉が遅く、書も拙く、幾度となく受験した科挙にはついに合格することはありませんでした。しかしながら、温厚な人柄と勤勉実直な性格から学問・文芸に励み、父が親しくした呉寛(ごかん)や李応禎(りおうてい)、沈周(しんしゅう)といった一流の文人に文章や書画を学び、次第に才能を開花させます。54歳の時に文章の校閲(こうえつ)を司る役人・翰林院待詔(かんりんいんたいしょう)に推挙されて、北京で3年間の官僚生活を送ります。57歳で退官、帰郷してからは、蘇州の芸苑(げいえん、呉派(ごは))の中心的人物として、在野で活躍しました。古典に根差した気品ある書画は一世を風靡(ふうび)し、子の文彭(ぶんぼう)・文嘉(ぶんか)「や甥の文伯仁(ぶんぱくじん)といった文氏一族のほか、門下に陳淳(ちんじゅん)、周天球(しゅうてんきゅう)、居節(きょせつ)をはじめとする多くの追随者を輩出し、後世に多大な影響を与えました。
令和2年(2020)は、文徴明の生誕550年にあたります。台東区立書道博物館との連携企画第17弾にあたる本特集では、文徴明の書画の魅力を改めてご紹介します。文徴明と周辺の書画作品、そして彼を育んだ蘇州という都市の文化的魅力を伝える作品を併せて展示します。両会場で文徴明とその時代の芸術をご堪能いただければ幸いです。