本館 14室
2019年3月19日(火) ~ 2019年6月23日(日)
密教は、5世紀ごろインドで成立した仏教のひとつです。当時、インドではヒンドゥー教が流行しており、仏教もその影響を受けながら発展しました。そのため、たくさんの顔や手を備えたヒンドゥー教の神々の特徴を受け継ぎ、十一面観音や如意輪観音など、異色の仏たちが生まれました。さらに、怒りの表情を浮かべた恐ろしい姿の不動明王や愛染明王なども密教に独特の仏です。いずれも仏のもつ大きな力を体のかたちや表情で表わすように生まれた仏で、広く信仰を集めました。
その後、7世紀ごろには、この世の森羅万象を生み出したとされる大日如来が信仰の中心となりました。密教では、大日如来と、われわれ人間が本来的には同じであると認識することによって、悟りが開けると考えられたのです。すでに悟りを開いた如来は、布一枚を身にまとう、出家した姿で表されるのが決まりですが、大日如来が例外的に王族をモデルとした姿で表現されるのは、仏の王とも解釈されるからです。
本特集では、これら密教に固有の仏の造形を、館蔵品を中心にご紹介します。平成館で開催する特別展 「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」 (3月26日~6月2日) とあわせて、密教彫刻の世界をご覧ください。