本館 特別1室・特別2室
2018年7月10日(火) ~ 2018年9月2日(日)
150年前に成し遂げられた明治維新によって、日本の社会と文化は大きく変わりました。この特集では、明治時代の前半を中心に、東京国立博物館が所蔵する近代の書跡と絵画の作品に表わされた自然、人物、都市、歴史的な事件など、新しい時代の日本の諸相をうかがいます。
それまで制約されていた海外からの文化の摂取は、社会制度の変革と相まって、表現の世界に衝撃を与えました。書の世界では、政治の担い手の交代によって公的な書風が一変するとともに、中国書法の動向がいち早くもたらされて、新国家を飾るのにふさわしい書が登場しました。前時代以来、書は知識人の教養であり、明治の政治家たちの中にも書を得意とする人は少なくありません。また、西洋画は日本人にとって新奇な鑑賞物であったばかりでなく、視覚的な記録の手段という実用性の面からも社会に強い影響を与えました。新しい素材や技法を学んだ書家や画家たちは自らの表現を獲得するために試行錯誤しながら、社会の要請に応えて次々と作品を創ってゆきました。同時にこれらの作品は、旧時代の退潮と新時代の勃興のありさまを捉えており、それぞれが歴史の一場面として多くの事実を語りかけています。
本展示を通じて、書と絵が語る明治時代の日本を少しでも実感していただければ、幸いです。