本館 14室
2017年2月21日(火) ~ 2017年4月16日(日)
3月3日は桃の節句(せっく)。華やかで楽しいおひなさまの季節です。おひなさまの歴史は、罪や穢(けが)れを託して水に流した古代のヒトガタや、幼児のお守りとして平安時代から貴族が用いた天児(あまがつ)・這子(ほうこ)に遡ります。また平安貴族の子どもたちは「ひいな遊び」というオママゴトを行なっていました。
祈りを託し、時に一緒に遊ぶという人形のあり方は江戸時代に引き継がれ、女の子の幸せを願って桃の節句に雛人形を飾る風習が定着します。江戸時代初期の雛人形は紙製の立雛(たちびな)であったと考えられ、いまだ手遊(てあそ)びの要素が強いものでした。
17世紀の前半には宮中の特別な誂(あつら)えとして絹の衣裳を着た座雛(すわりびな)が登場し、武家や町方(まちかた)にも広まります。特に富裕な町方では錦や金襴(きんらん)をふんだんに用いた享保雛(きょうほうびな)や古今雛(こきんびな)など、華麗な人形が生み出されました。
今回はおひなさまの歴史をたどる様々な雛人形とともに、衣裳人形を展示します。衣裳人形とは文字通り衣裳を着付けた人形で、江戸時代の人々の姿を生き生きと表しています。江戸時代の衣裳人形は現存する数が少ないため、これだけの作品が揃うのは極めて貴重な機会です。
日本人形の名品を通じ、繊細で美しく、可愛らしいものを尊ぶ日本の美意識を感じていただければ幸いです。