本館 15室
2016年8月23日(火) ~ 2016年10月16日(日)
東京国立博物館は、明治5年(1872)3月の湯島聖堂博覧会の開催をもって、創立・開館としています。湯島聖堂博覧会が終了した直後より、当館職員だった町田久成(まちだひさなり)や蜷川式胤(にながわのりたね)等が中心となって、宝物調査を行いました。名古屋から伊勢、京都、奈良方面へ出向いて調査を行うほか、全国から宝物の目録を蒐集しました。明治5年の干支から「壬申検査(じんしんけんさ)」と呼ばれるこの調査は、明治4年(1871)の古器旧物保存(こききゅうぶつほぞん)の布告を受けたもので、日本の文化財保護活動のはじまりと位置づけられます。
壬申検査では、多くの写真が撮影されましたが、寺社で調査した宝物を町田や蜷川、内田正雄が、自ら模写や拓本も採っています。天保4年(1833)以来、約40年ぶりに開封された正倉院でも、多くの正倉院宝物の模写を作成し拓本を採取しました。それらは当時の正倉院宝物の状態がわかる資料として現在も活用されています。
今回の特集では、壬申検査の報告書としてまとめられた「壬申検査社寺宝物図集」や古写真を中心に、東京国立博物館草創期の文化財調査の様子と文化財保護活動の一端をご紹介します。