2016年11月18日(金)、入場者が10万人に達しました。
1089ブログ 「禅―心 をかたちに―」 展覧会の見どころなどを紹介しています。
投票「教えを乞いたいお坊さんは?」 投票結果 (投票期間:2016年11月1日(火)~11月27日(日))
東京国立博物館資料館 特別展「禅―心をかたちに―」 関連図書コーナー設置
展覧会のみどころ
第一章 禅宗の成立
達磨(だるま)がインドから渡来し、中国で禅宗が成立するまでを歴代の祖師像等でたどります。
国宝 慧可断臂図(えかだんぴず)
室町時代・明応5年(1496)
雪舟等楊筆
愛知・齊年寺蔵
[後期展示:2016年11月8日(火)~11月27日(日)]
坐禅をする達磨に向かい、神光(のちの慧可)という僧が弟子となるべく己の左腕を切り落とす場面を描いたものです。画面全体を覆い尽くす重々しい岩壁と、そこに刻まれたレリーフのように微動だにしない両者の姿。異様なまでの静寂が息苦しいほどの緊張感を生み出しており、どこか近寄りがたい雰囲気すら覚えます。雪舟77歳の大作です。
重要文化財 臨済義玄像(りんざいぎげんぞう)
一休宗純賛 伝曾我蛇足筆
室町時代・15世紀
京都・真珠庵蔵
[前期展示:2016年10月18日(火)~11月6日(日)]
臨済宗の宗祖、臨済義玄(りんざいぎげん、?~867)は、棒や喝を用いる峻烈な家風をもって知られ、「臨済将軍」とも評されました。この臨済像は、通常の禅僧肖像画の穏やかな表情と異なり、怒るように眉間に皴を寄せ、眼を剝いています。また今にも口を開いて一喝し、拳でこちらの胸を突きそうです。このような顔や手の表現により、臨済禅の激しい家風が示されています。
展覧会のみどころトップへ
第二章 臨済禅の導入と展開
臨済・黄檗十五派の開祖や本山を、肖像・墨蹟をはじめとする至宝で紹介します。
国宝 無準師範像(ぶじゅんしぱんぞう)(部分)
自賛
中国 南宋時代・嘉煕2年(1238)
京都・東福寺蔵
[後期展示:2016年11月8日(火)~11月27日(日)]
東福寺の開山である聖一国師円爾(しょういちこくしえんに、1202~80)が中国留学の際に師と仰いだ無準師範(1178~1249)の肖像です。無準は中国五山の第一にあたる径山万寿寺(きんざんまんじゅじ)の住持をつとめた、南宋期を代表する高僧のひとりです。禅宗では師匠の肖像を「頂相(ちんそう)」といい、弟子が師の法を継ぐ証とされています。厳格な教えを彷彿させる無準の写実的な容貌は、弟子の円爾の求めにより描かれたものです。頭上にある「大宋国と日本国、天に垠(はて)なく、地に極(きわまり)なし」で始まる無準の自賛とあわせて、海を隔てた師弟の絆の強さを今に伝えています。
重要文化財 蘭渓道隆坐像(らんけいどうりゅうざぞう)
鎌倉時代・13世紀
神奈川・建長寺蔵
鎌倉五山第一位建長寺の開山蘭渓道隆(1213~1278)の肖像彫刻です。蘭渓道隆は西蜀(せいしょく、現在の中国四川省)の出身で、寛元4年(1246)に来日し、建長5年(1253)鎌倉幕府の執権北条時頼が創建した建長寺の開山に迎えられました。
展覧会のみどころトップへ
第三章 戦国武将と近世の高僧
武将とそのブレーンとして活躍した禅僧たち、禅画の名手=白隠・僊厓をとりあげます。
達磨像(だるまぞう)
白隠慧鶴筆
江戸時代・18世紀
大分・萬壽寺蔵
縦2メートル近い画面いっぱいに描かれた巨大な顔、ことさら大きなぎょろ目。圧倒的な迫力です。白抜き文字は、達磨の宗旨「直指人心 見性成仏(まっすぐに自分の心を見つめよ。仏になろうとするのではなく、本来自分に備わっている仏性に目覚めよ)」。庶民に禅を広めることに努めた白隠は、比類なく力強い造形の書画を数多く遺しました。なかでも著名な最晩年の名作です。
織田信長像(おだのぶながぞう)
狩野永徳筆
安土桃山時代・天正12年(1584)
京都・大徳寺蔵
[前期展示:2016年10月18日(火)~11月6日(日)]
足利義昭から許された桐紋と織田家の木瓜紋を配した肩衣袴姿に脇差をさし、扇子を握って上畳に座る信長の肖像です。細面に切れ長の目、眉間の皺が意志の強さと神経質な性格を感じさせます。信長の葬儀が行われた大徳寺塔頭総見院に伝来し、信長と豊臣秀吉の寵愛を受けた狩野永徳が、信長の三回忌法要のために描いたと考えられています。本図の下に別の信長像が描かれていたことが確認されており、何らかの理由で描き直された姿で完成となっています。
花見図(はなみず)
僊厓義梵筆
江戸時代・19世紀
東京・永青文庫蔵
[後期展示:2016年11月8日(火)~11月27日(日)]
展覧会のみどころトップへ
第四章 禅の仏たち
禅宗特有の像容や作風を示す仏像や仏画などをご覧いただきます。
重要文化財 宝冠釈迦如来坐像(ほうかんしゃかにょらいざぞう)
院吉・院広・院遵作
南北朝時代・観応3年(1352)
静岡・方広寺蔵
宝冠をいただく釈迦如来像は、本来は華厳教主の毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)ですが、南北朝時代には宝冠の釈迦と呼ばれるようになりました。像底の銘文により観応3年(1352)、院吉・院広・院遵の作とわかります。院吉は足利家の菩提寺である等持院(とうじいん)の本尊や天龍寺の本尊も造ったことが記録に残されています。中国・南宋時代の江南地方の作風を下敷きにした院派仏師(名前に「院」の字が付く仏師の系統)の独特の作風が禅宗寺院に広く採用されました。
十八羅漢像のうち 羅怙羅尊者(じゅうはちらかんのうち らごらそんじゃ)(部分)
范道生作
江戸時代・寛文4年(1664)
京都・萬福寺蔵
羅漢(阿羅漢)とはサンスクリットのアルハットを音で写したもので、釈尊(しゃくそん)の弟子のなかでも、その教えをよく理解した優れた修行者のことです。そのひとりの羅怙羅尊者は、釈尊の実子でした。顔が醜かったとも伝えられる羅怙羅ですが、心には仏が宿っていることを自分の胸を開いてみせています。本像は、中国人仏師・范道生の作です。黄檗宗を日本に伝えた隠元が求めたのは、このような中国風の像でした。
展覧会のみどころトップへ
第五章 禅文化の広がり
茶の湯、水墨画、障壁画。禅院に発する美の源流、禅院の育んだ美の広がりをご堪能ください。
重要文化財 大仙院障壁画のうち 四季花鳥図(だいせんいんしょうへきがのうち しきかちょうず)(部分)
狩野元信筆
室町時代・永正10年(1513)
京都・大仙院蔵
[後期展示:2016年11月8日(火)~11月27日(日)]
大徳寺の塔頭、大仙院の方丈(檀那の間)を飾っていた元襖絵。動感溢れる巨松と滝が長大な画面をしっかりと支えており、花や鳥に施された濃彩も鮮烈なまでの色彩効果をあげています。豪壮華麗な桃山障壁画の登場さえ予感させる、室町水墨画を代表する名品といえるでしょう。筆者の元信は狩野派を繁栄に導いた立役者で、幼い孫の永徳に絵を教えたことでも有名です。
重要文化財 南禅寺本坊小方丈障壁画のうち 群虎図(なんぜんじほんぼうこほうじょうしょうへきがのうち ぐんこず)(部分)
狩野探幽筆
江戸時代・17世紀
京都・南禅寺蔵
[場面替えあり。この場面は前期展示:2016年10月18日(火)~11月6日(日)]
南禅寺の著名な「水呑みの虎」。竹林と渓流を舞台に群れる虎豹たちの一部です。襖八面ひと続きの画面で、金箔地に鮮やかな色彩が輝くさまは壮観です。江戸幕府最初の御用絵師として時代の幕を開けた狩野探幽、その代表作の一つです。
重要文化財 呂洞賓図(りょどうひんず)(部分)
雪村周継筆
室町時代・16世紀
奈良・大和文華館蔵
[後期展示:2016年11月8日(火)~11月27日(日)]
国宝 油滴天目(ゆてきてんもく)
建窯
中国 南宋時代・12~13世紀
大阪市立東洋陶磁美術館蔵
青磁輪花茶碗 銘「鎹」(せいじりんかちゃわん めい かすがい)
龍泉窯
中国 南宋時代・13世紀
愛知・マスプロ美術館蔵
中国・南宋時代に龍泉窯で焼かれた優品。粉青色の美しい中国の青磁を評価する旧来の価値観は、侘茶が大成した織田有楽の時代へ引き継がれたものと考えられます。口縁から入ったヒビを鎹で留めています。
重要文化財 椿尾長鳥堆朱盆(つばきおながどりついしゅぼん)
中国 元時代・14世紀
京都・興臨院蔵
[前期展示:2016年10月18日(火)~11月6日(日)]
禅寺を介して中国大陸から伝えられた文物の中に、彫漆(ちょうしつ)という技法で飾られた漆器があります。漆を何十層と塗り重ね、鋭い刃物で文様を彫り込むものです。最上層が赤いものを堆朱(ついしゅ)と呼びます。室町時代の座敷飾りの指南書に、名工として元時代の張成と楊茂(ようも)が記され人気となりました。彫りが深く図様もおおらかで力強いこの盆は、元時代の優品と位置づけられています。
国宝 瓢鮎図(ひょうねんず)(部分)
大岳周崇等三十一僧賛 大巧如拙筆
室町時代・15世紀
京都・退蔵院蔵
[後期展示:2016年11月8日(火)~11月27日(日)]
禅に傾倒した室町幕府第四代将軍、足利義持が「丸くすべすべした瓢簞(ひょうたん)で、ぬるぬるした鮎(なまず)をおさえ捕ることができるか」というテーマを出して、絵を如拙に描かせ、詩を五山の禅僧たちに詠ませ、衝立に仕立て座右に置いていたのがこの作品の当初の姿です。現在は掛幅に改装されています。如拙は応永年間(1394~1428)に京都の相国寺(しょうこくじ)を拠点に活躍した禅僧画家です。この作品は室町時代初期の水墨画の名作ですが、禅宗界の絵画様式と主題が、将軍家や武家社会といった禅宗界の外縁に広がる様相を物語ります。
展覧会のみどころトップへ